ありの意味 - 古文辞書 - Weblio古語辞典 (original) (raw)

あ・り 【有り・在り】

[一]自動詞ラ行変格活用

(人・動物などが)いる。(無生物・物事が)ある。

[訳] 今となってはもう昔のことであるが、竹取の翁という人がいたということだ。

「名にし負はばいざ言問(ことと)はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」

[訳] このような(寂しい)ありさまでも住んでいられたのだなあと、しみじみと心打たれて見ているうちに。

「おのづから人の上などうち言ひそしりたるに、幼き子どもの聞きとりて、その人のあるに言ひいでたる」

[訳] (きまりの悪いものは)たまたま他人の話などをしてけなしていたのを、幼い子供が聞いて心にとめて、その人がちょうどそこにいる前で言いだした場合。

〔「世にあり」の形で〕繁栄して暮らす。時めいて過ごす。

「我、世にありし時は、娘どもをば女御(にようご)・后(きさき)とこそ思ひしか」

[訳] 私が世に時めいていた時は、娘たちを女御・后に立てようと思っていたけれど。

「春宮(とうぐう)の御元服、南殿(なでん)にてありし儀式」

[訳] 先年の東宮のご元服、南殿で執り行われたその儀式が。

[訳] 年月のまだたたないうちに死なれるなど夢にも思わない間。

[二]補助動詞ラ行変格活用

(一)

…(で)ある。▽断定の助動詞「なり」「たり」の連用形「に」「と」、およびそれに接続助詞「て」、または係助詞や副助詞を介した形に付いて、指定の意を表す。

「頼義(よりよし)見るに、まことによき馬にてありければ」

[訳] 頼義はその馬を見ると、実にすばらしい馬であったので。

…の状態にある。▽形容詞・形容動詞の連用形、助動詞「ず」「べし」の連用形、副詞「さ」「かく」(および、それらに係助詞・副助詞が付いたもの)などに付いて、その状態であることや、その状態が継続していることを表す。

…(て)いる。…(て)ある。▽動詞の連用形や、助詞「て」「つつ」の付いた語に付いて、存続の状態を表す。

「盗人、死人の着たる衣と嫗(おうな)の着たる衣と抜き取りてある髪とを奪ひ取りて」

[訳] 盗人は、死人の着ている衣と老婆の着ている衣と抜き取ってある髪の毛とを奪い取って。

(二)

…なさる。お…なる。▽敬意を含む名詞や「御元服」など尊敬の接頭語をもつ名詞の下に付く。

[訳] 法皇はこの景色をご覧なさって。◇中世以降の用法。

参考

古語の「あり」は生物・無生物いずれにも用いるが、現代語の「ある」は無生物や植物に限り、人や動物の場合は「いる」を使う。逆に古語の「ゐる」は、生物・無生物いずれにも用いる。