みわたせばの意味 - 古文辞書 - Weblio古語辞典 (original) (raw)

みわたせば…

分類和歌

「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ」

出典新古今集 秋上・藤原定家(ふぢはらのさだいへ)

[訳] 見渡すと、春の桜の花も、秋の紅葉もないのであった。海辺の苫ぶきの粗末な小屋のあたりの秋の夕暮れは。

鑑賞

「三夕(さんせき)の歌」の一つ。何の色彩もない殺風景な秋の夕暮れの海辺の情景を詠んだものであるが、「花・紅葉」という春と秋を代表するもののいずれもない状態の、枯れた美を認めるような時代になったことを示す歌といえよう。また、「花も紅葉もなかりけり」とは、それらの美を十分知り尽くした人にして初めて言える言葉であろう。


みわたせば…

分類和歌

「見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦(にしき)なりける」

[訳] はるかに見渡すと、新緑の柳と薄紅色の桜とをまぜ合わせて、この都こそがまさしく春の錦であったよ。

鑑賞

秋山の紅葉を錦に見立てる漢詩の詩句を転じて、柳桜の織りなす春景色を「春の錦」と断じたところに新鮮味がある。


みわたせば…

分類和歌

「見渡せば山もと霞(かす)む水無瀬川(みなせがは)夕べは秋となに思ひけむ」

[訳] 見渡すと、山のふもとはかすみ、その辺りを水無瀬川が流れている。夕方の情趣は秋に限ると、なぜ思っていたのだろう。こんなにすばらしい春の夕べがあるのも知らないで。

鑑賞

『枕草子(まくらのそうし)』の「春はあけぼの」の段の「秋は夕暮れ」に代表される伝統的な美意識に対して、春の夕暮れのもつ情趣をたたえた歌である。