番外編・ダブとファンクを観る①(ダブ) (original) (raw)

強烈なライブへ二週間続けて行ってきてしまったので、これまでの流れとは全く違うのですが、本日は番外編としてレポートをします。

タイトルにあるダブとファンク、何?という方も多いかもしれませんが、いずれも音楽のジャンルです。生まれた国は違いますが、世界中に広がっていったのはやはり1970年代でした。

まずダブというのは、レゲエの楽曲に対し、エコーやリバーブなどのエフェクトを施して、ベースやドラムなどのリズムを強調したもの。

いまでこそリミックスとかサンプリングとか良くある話ですが、それらの元祖のようなものだと言われることもよくあります。

ダブは1960年代後半にジャマイカで生まれ、当時はシングルレコードのB面に使われる脇役的な存在だったのですが、1970年代後半からダブ処理をした曲自体が前面に出てくるようになりました。

また、ジャマイカからの移民が多く、レゲエのミュージシャンも豊富だったUKでも、ダブは広がっていきました。

UKダブの第一人者と言われるデニス・ボヴェールの1980年のアルバム。私が初めて買ったダブのレコードです。高2の時でした。

その影響もあって、1980年前後になると、UKのパンクやニューウェーブのミュージシャンがダブを積極的に取り入れるようになりました。

クラッシュ、ポリス、XTC、PIL、ポップ・グループ、スリッツ、メジャーなところではカルチャークラブ、日本でも坂本龍一などが、ダブや、ダブ的な音処理をした曲を多く生み出していたりします。

左は1980年にリリースされたクラッシュの「Sandinista!」。このアルバムでクラッシュは、ダブのみならず様々な音楽にチャレンジしました。右側はご存じポリスのセカンドアルバム「白いレガッタ」。B面1曲目の「Walking On The Moon」がしっかりダブしています。

左側はXTCが1980年にリリースした「Black Sea」。エンジニアのスティーブ・リリィ・ホワイトのダブ的な音の処理が光っています。そして出ましたカルチャークラブ。最初のヒット曲「君は完璧さ」のシングルのB面はダブ・バージョンでした。

そしてその当時、UKダブミュージックシーンをけん引していたのが、エンジニアでプロデューサーでもあり、自らダブのレーベルも立ち上げていたエイドリアン・シャーウッド(現在66歳)。

そのエイドリアン・シャーウッドがプロデュースをし、1977年に結成された人気UKダブバンド、クリエイション・レベル

ジャマイカ出身で1990年代にUKに渡り、UKのバンドと組んで全英ヒットチャートに何曲もの作品を送り込んだ、レゲエシンガーのホレス・アンディ(現在73歳)。

左はエイドリアン・シャーウッドがプロデュースをした、UKダブの金字塔的な作品ともいえる「The New Age Steppers」。右は同じくエイドリアン・シャーウッドプロデュースによる、クリエイション・レベルの代表作の一つ「Psychotic Jonkanoo」

前置きが長くなりましたが、この3組が、先々週、東京と大阪と名古屋で集結してしまったのです!

特に80年代前半、私は無類のダブ好きだったので、いまでも読み続けている「ミュージック・マガジン」のイベント情報のコーナーで彼らのライブのことを知った時には(あー、なんとアナログな情報収集なんだろう)、このメンバーと、そしてまだ彼らが元気にツアーをしているんだということに、衝撃と感銘を受けました。

そしてすぐにチケットを取り(こちらはもちろんオンラインで。プレイガイドにチケットを買いに走ったということはさすがにないです)、まぁこれに付き合ってくれる人は誰もいないだろうということで、一人で盛り上がってきました。

オープニングアクトを含めて4時間強、出演者の交代時に10分程度の休憩がそれぞれあったものの、スタンディングで踊りっぱなし。でもアドレナリンが出まくっていたせいか、時間の長さは全く感じませんでした。

エイドリアン・シャーウッドがDJを務め、その場でダブミックスをしまくりながら曲をかけていく第一部、オリジナルメンバー3人を含むクリエイション・レベルが、生のダブサウンドを炸裂させた第二部、そしてクリエイション・レベルをバックに、ホレス・アンディが73歳とは思えぬ高い、透明な声で1時間半歌い続けた第三部。

いや、この年になって、こんなものすごいものが観れるなんて、夢にも思いませんでしたよ。

ミキシングマシンを駆使しながらダブミュージックをクリエイトしてくエイドリアン・シャーウッド。なんと植木等の「スーダラ節」のダブバージョンをやってくれました!

クリエイション・レベルのギタリスト、クルーシャル・トニーとドラマーのエスキモー・フォックスは、結成当時からのオリジナルメンバー。

ホレス・アンディ、73歳。かつてのようなファルセットボイスはあまり聞けませんでしたが、地声でも十分声は高く、とてもいい味を出していました。

ホレス・アンディーとクルーシャル・トニーとエスキモー・フォックス。レジェンド感満載の三人。

で、終わったころには太ももとふくらはぎがパンパン。ライブ会場から最寄り駅までの道はちょっとふらつき気味。60歳の体は正直でした。

ちなみにどんな人たちが観に来ていたかというと、実は年齢層は意外に低く、平均35歳くらい。自分のようなオールドファンももちろんいましたが、若い人たちのほうが目立ってました。

またこの手のライブにつきものの、暴れるやんちゃな奴らも、ごく少数ですがいました。1990年代前半に、スカの某バンドを観に行った時も同じようなことがあったことを思い出し、一瞬、デジャブかと思っちゃいました(笑)

こういった若い人たちが多いのには理由があるようです。

今から十数年前にDJをやっている知人から聞いたんですけど、ある時期からダブは、クラブミュージックとしてテクノ、ハウスなどとともに、エレクトロニカの一つとして再評価?されていったそうで、そういったものを聞いてきた20代、30代の人たちの間でも、なじみのある音楽になっているようなのです。

まぁそんなこともあって集客がある程度見込まれ、ツアーも実現したのかもしれませんが、こういうのを観ると、ほかのレゲエのミュージシャンの来日も、あらためて期待したくなってしまいます。

シュガー・マイノットやグレゴリー・アイザックスやデニス・ブラウンなど。

って調べてみたら3人とももう亡くなっていますね。でもフレディ・マクレガーやイエローマンはまだ生きているみたい。そしてスライ・ダンバーも。

左がシュガー・マイノット、右がグレゴリー・アイザックス。もう観れないんですよね。たとえジャマイカに行ったとしても。

ここ最近「生きているうちに観ておかないと、後悔する!」と自分に言い聞かせ、ぴあや興行会社のSMASHから送られてくるメルマガをマメにチェックし、見逃しがないように努めています。

70年代、80年代に活躍したミュージシャンたちがいつまで生きているか?その前にいつまで日本にツアーで来てくれるか?そしてもっとその前に自分がいつまでライブに行ける体力と健康を保つことができるのか?課題は山積です(笑)

ということで、今回はダブのことだけでたくさん書いちゃいました。思い入れありすぎ?ということで、ファンク編はまた別の機会に!