追悼アヌーク・エーメ:ローラはシェルブールの雨傘の前編だった (original) (raw)
映画「ローラ」でのアヌーク・エーメ(Anouk Aimée)
アヌーク・エーメが亡くなった
フランスの大女優、アヌーク・エーメが6月18日、92歳で亡くなった。
奇しくもその数日前、私は本ブログで彼女の代表作「男と女」について書いたばかりだったのに。
kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com
思えば彼女の作品については、「モンパルナスの灯」についても言及していた。
kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com
今読み返してみるとどちらの記事についても、彼女のことを美人だ、美人だと騒いでいるみたいでちょっと恥ずかしい(でもやっぱり美人だよね。ユダヤ系には美人が多いのか?)。
彼女の魅力はそれだけではないんだけどね。
きょうは彼女の作品のなかから、名匠**ジャック・ドゥミ監督の1961年製作「ローラ**」をご紹介。
歌い踊るアヌーク・エーメ
「ローラ」のあらすじをかんたんにご説明すると
舞台はフランス西部の港町、ナント。
青年ローランが10年ぶりに初恋の人、ローラに再会する。
ローラは7年前に去った恋人、ミッシェルとの忘れ形見を育てながら、キャバレーのダンサーとして働いているシングルマザーだった。
ミッシェルが姿を消してから7年も経つのにいまだに彼の帰りを待っているローラにローランは変わらぬ自分の気持ちを告白するが・・・
ここでキャバレーのダンサーとして歌い踊るローラ(アヌーク・エーメ)をご紹介。
青年ローランは宝石商ローラン・カサールだった!
ところでこの青年ローランは、のちに「**シェルブールの雨傘」でジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーブ)に結婚を申し込む宝石商、ローラン・カサール**なのだ!
つまり見方によっては、映画「ローラ」は「シェルブールの雨傘」の前編とも言える。
「シェルブールの雨傘」ではローラン・カサールがジュヌヴィエーヴの母、エムリー夫人に自分の過去を打ち明ける場面がある。
Autrefois, j'ai aimé une femme.
Elle ne m'aimait pas. On l'appelait Lola.
昔、私はある女性を好きになりました。
その人は私のことを愛してくれませんでした。
ローラという女性です。
そしてこの回想場面で、ナントで有名なパッサージュ(アーケード商店街)、パッサージュ・ポムレがちらっと登場する。
尚、この場所は「ローラ」でローラとローランが再開する場面でも使われている。
「シェルブールの雨傘」やジャック・ドゥミ、ミシェル・ルグランの大ファンである私は大昔のフランス留学時代、このパッサージュをみたいがために、ナントを訪れた。
そのときの写真をみるとまさに、満面の笑みである。
それほど感無量だったのだ。
ローラン・カサールのその後が気になってしょうがない
美しい初恋の人、ローラに振られ、傷心のローラン・カサールは世界中を旅する。
そうするうちに宝石商として財力を得た彼は傘屋の娘、ジュヌヴィエーヴに一目ぼれをする。
しかしジュヌヴィエーヴには、戦地にいる将来を誓った恋人ギィとの子をお腹に宿していたのだ。
しかしそんなことで諦めるローランではない。
お腹の子を二人の子として育てよう、というのだ。
私はこの男気のあるローランが大好きである。
しかし同時に、アヌーク・エーメとカトリーヌ・ドヌーブという甲乙つけがたい世紀の美女しか愛せないとんでもない面食い男に思われ、結婚後はどうなったのだろう?と空想してしまうのだ。
監督のジャック・ドゥミがとうに亡くなってしまった今となっては、せんない空想ではあるけれど。