圧縮ファイル、熱波で自然解凍 焦げる被害も (original) (raw)

高熱で溶けた圧縮ファイル。近くのフォルダーも焦げて破損した

東京都八王子市内の不動産会社に勤務する小杉さんは12日、外回り営業で顧客との商談中、使用していた自身のパソコン内の圧縮フォルダーが勝手に解凍されていることに気が付いた。

フォルダーの中身は数千枚の画像と動画ファイル。「お客様にファイルを見られてしまったせいで契約は打ち切られてしまいましたが、通報されなくて良かったです」と、胸をなでおろす。この日、八王子市では最高気温39.1度を記録していた。

情報セキュリティに詳しいITジャーナリストの二下羊さんによると、zip形式などで圧縮したファイルが勝手に解凍される現象が報告されるようになったのは6月下旬ごろ。「zip圧縮の耐熱温度は約50度。パソコンやスマートフォンでは圧縮ファイルが熱で解凍しないよう、高熱を発するCPUから離れたパーティション(区画)に各種ファイルを格納しているが、メーカーの想定を超えた暑さにさらされると、格納場所に関係なく自然解凍してしまうようだ」と分析する。

小杉さんのパソコンのファイルやフォルダーには、熱で溶けて変形したものや黒く焦げたものもあった。破損ファイルを修復することは専門家でも難しく、小杉さんは「貴重なデータも多くあったのでショックです」と落胆する。

圧縮ファイルの自然解凍が相次いでいる事態を受け、圧縮・解凍ソフトを開発する国内のソフトウェア企業では、圧縮形式を冷却式から国際標準の真空式に置き換える動きが進んでいる。海外では「展開」によって圧縮ファイルを元に戻す真空式が主流で、「解凍」による冷却式を採用している国は日本しかない。産業分野におけるガラパゴス化の弊害がここでも露呈した格好だ。

「解凍と対になるべき『凍結』という言葉が普及しなかった時点でいろいろと察しておくべきだった」と、二下さんは指摘する。

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