NHK「ぼやき川柳大賞」を獲る方法 (original) (raw)

​​​​​ぼやき川柳のオープニングテーマはアコースティックギタリスト、押尾コータローの「again…」という曲です。押尾は1968年大阪府吹田市生まれで現在56歳。本名は押尾光太郎。中学2年生のときからギターを弾き始め、大阪府立北淀高校を卒業しています。「again…」は2003年6月18日発売のセカンドアルバム「Dramatic」収録曲で、このアルバムの最後に収録されています。ボサノバタッチで、パーカッシブなメリハリのある曲です。作曲・演奏は押尾コータロー、アレンジャーは平倉信行です。原曲は4分23秒ありますが、番組ではその一部分を使っています。ジャンルでいえばインストゥルメンタルになります。ギターはナイロン弦ではなくスティール弦を使っています。メーカーでいえばマーチン、ギブソン、師匠・中川イサトに薦められて買ったグレーベンなどを使っているそうです。Wikipediaには「演奏スタイルはオープン・チューニングやスラップ奏法、タッピング奏法を駆使し、マイケル・ヘッジス、タック・アンドレスなど強烈な個性をもつアメリカのギタリストたちの影響を強く受けている。フィンガー・ピッキングというピックを使わず爪で演奏しているため、小指以外の爪をスカルプチュアで保護している」「2002年(平成14年) 東芝EMIからアルバム『STARTING POINT』によりメジャー・デビュー。モントルー・ジャズ・フェスティバル(Montreux Jazz Festival)に初出演。以後、マイルス・デイヴィス以来となる2年以上の連続出演を果たす。アメリカ・ナラダレーベルからアルバム『STARTING POINT』により全米デビュー。音楽雑誌『ADLIB』でのニューエイジ部門賞受賞を翌2003年を含めて連続受賞」とあります。

筆者はテレビで井上陽水押尾コータローにギターの演奏を教わるシーンを見たことがあり、テクニックでは陽水をしのぐことに驚きました。また大阪城ホールで押尾の生演奏を聴いたこともあります。180センチの長身で体形はスリム。ギター一本で壮大な宇宙を表現していくような演奏でした。大阪出身者らしく聴衆に対するサービス精神も旺盛という好印象を持ちました。

NHKラジオ深夜便のぼやき川柳のホームページでは、大賞を受賞した句を以下のように随時紹介してくれています。なるほど甲乙つけがたい名作ばかりです。およそ自分の頭からは永久に出てこないような作品群と言えます。「これは秀逸!」と思う句をまったくの独断で選んでみました。競馬の予想紙ふうに優先度の高い順に◎〇▲△としています。

ぼやき川柳大賞受賞句

お題『ビール』(2024年8月16日)
「昼は水夜はビールを補給する」 山形県 日和
「無口でもビールはいつも聞き上手」岩手県 本田和
△「本物のビールを見ると身構える」 熊本県 つくるちゃん

お題『溶ける』(2024年8月9日)
〇「わだかまり溶けて食欲もりもりと」 東京都 西村捷敏
「初恋はかき氷より早く溶け」 神奈川県 さとっち
「君からの甘い誘いにでろんでろん」 千葉県 丑三深夜

お題『朝顔』(2024年8月2日)
朝顔におはよう今日が動き出す」 埼玉県 五十嵐静子
「ラジオ体操聞いて朝顔深呼吸」 埼玉県 橋本湧水
◎「朝顔に似てすぐ萎む(しぼむ)恋心」 東京都 本橋芳男

お題『キャンプ』(2024年7月19日)
「皆無口肉を忘れてきたキャンプ」 大阪府 末吉利次
「家庭でもキャンプみたいに動いてよ」 宮城県 たこにゃん
▲「ソロキャンプ友達いないわけじゃない」東京都 石井秀一

お題『冷やす』(2024年7月12日)
△「新札のブームを冷やすキャッシュレス」千葉県 山田明
「図書館へ枕を持って行きたいが」 埼玉県 曽田英夫
「お出かけに冷蔵庫からシャツを出す」京都府 小田部祐子

お題『うちわ』(2024年7月5日)
「電気代にうちわ使用を勧められ」 香川県 うどん人
「ゴキブリを叩いた(たたいた)うちわよこす妻」青森県 十和田仁
◎「かあさんの団扇(うちわ)の風に色があり」 東京都 小柳清治

お題『折る』(2024年6月21日)
◎「怒りには折れぬ心も涙には」 熊本県 ひつじが1匹
○「折り畳み式の胃袋持った妻」 熊本県 甲斐良一
◎「できるひとのみが味わう挫折感」岐阜県 高山浩

お題『箱』(2024年6月14日)
「薬箱恋煩い(わずらい)の薬まで」新潟県 佐渡おけさ
「化粧品ビックリ箱の中にある」 兵庫県 まねきねこ
〇「彼女来ずボックス席におれひとり」京都府 メタボの牛若丸

お題『しずく』(2024年6月7日)
◎「雨の日は水琴窟になるわが家」 京都府 不安心タイガース
「野菜高点滴みたいな豆ごはん」 京都府 吉岡正和
◎「監視されしずくのような醤油(しょうゆ)かけ」福井県 甘党

お題『勝つ』(2024年5月17日)
◎「負け組になったらできた真の友」 三重県 ウルトラの父
▲「愛は勝つ信じていても今ひとり」 山口県 夢香
「楽勝が風呂から出たらボロボロに」京都府 ぬいぐるみ班まきば

お題『体操』(2024年5月10日)
「新体操見れば爺(じい)ちゃん若返る」 神奈川県 扇畑の管理人
◎「恋ごころ準備体操せず動く」 東京都 汐海岬
「首体操してもお金は回らない」 大阪府 田原勝弘

お題『意見』(2024年5月3日)
「今はもう神のお告げになった妻」大阪府 太田省三
「全員の意見が違う孫4人」 大阪府 植田清夫
◎「俺の意見通った後の胸騒ぎ」 宮城県 大場敬

お題『散る』(2024年4月19日)
「サブちゃんが現れそうな花ふぶき」 兵庫県 壮年隊
〇「咲いて散り散っては咲いてまだ一人」高知県 高知モグラタロー
「海ガメの赤ちゃん海にいちもくさん」愛知県 にったみさ

お題『スミレ』(2024年4月12日)
「老いひとり道のスミレと立ち話」 埼玉県 五十代夏子
「一輪のスミレに気づく人でいて」 埼玉県 むかしおかし
「つまづいた先にスミレのあどけなさ」埼玉県 秋山和市

お題『やさしい』(2024年4月5日)
「さくら咲きやさしい散歩道になり」 大阪府 樋川眞一
〇「春の陽(ひ)が添い寝するので起きられず」静岡県 伊豆の三太郎
「優しいね減量中にモンブラン」 千葉県 ひよどりなおこ

お題『戻る』(2024年3月15日)
「会社からお昼を食べに来る夫」 岐阜県 川辺町子
「意気地なし三日で戻る元のさや」大阪府 安井秀美
△「成田離婚なのに戻らぬ祝い金」 岐阜県 恵那京子

お題『春』(2024年3月8日)
「大物の釣果は隣春の海」 奈良県 辰巳清治
〇「春だから逢(あ)いたい人に逢いにゆく」兵庫県 赤とんぼ
「春眠が片棒担ぎ遅刻する」 茨城県 藤郷正信

お題『出る』(2024年3月1日)
◎「出涸らし(でがらし)を俺に注いで茶葉換える」埼玉県 尾上文
「美人の湯美人になって出て来ます」 千葉県 舟橋八千代
▲「電話して彼女の父が出た昭和」 福島県 安達太郎

お題『近い』(2024年2月16日)
「炬燵(こたつ)から手が届かんのトイレだけ」大阪府 豊中のタカシ
「近づいて見たら全然別のもの」 新潟県 高橋敦子
「遠近法上手に使ういい夫婦」 福岡県 田島晋

お題『枝』(2024年2月9日)
◎「盆栽の枝をそぉっと糊(のり)で付け」大阪府 藤本欣久
「長電話枝から小枝話飛ぶ」 新潟県 あったらもん
「桃の枝飾れば雛(ひな)も頬染める」 愛知県 家田満理

お題『残す』(2024年2月2日)
〇「残すのは海老(えび)の尻尾と葬儀代」 広島県 おとといの干柿
▲「樟脳(しょうのう)も門出を祝う披露宴」埼玉県 ソフィア・ロージン
「結論は明日に残して酒にする」 大分県 大分市みやび

お題『大きい』(2024年1月19日)
△「観覧車だんだん空をでかくする」茨城県 民生
ほたるいか大王いかに育つかも」岐阜県 日比野勉
◎「世話焼きは世話焼きの人大嫌い」富山県 高岡一郎

お題『始める』(2024年1月12日)
〇「声高に始めひっそり終わる趣味」 神奈川県 山吹みどり
△「始まりのゴングはいつも妻鳴らす」東京都 茂田野マイ子
「女子会も静かにカニを食べ始め」 香川県 あかくまさん

お題『竜』(2024年1月5日)
「三日までやる気は龍(りゅう)のごとくなり」東京都 甘味処
「龍(りゅう)の背で世界平和のビラをまく」 静岡県 戸田ナオエ
「福袋竜の鱗(うろこ)も入れてあり」 大阪府 大阪のコーセー爺い

「かんさい土曜ほっとタイム」終了を嘆く声をインターネット上に見つけました。精神科医をされている方だそうです。拝読してまったく同感。2019年3月ごろを強烈に思い出しました。ぜひ引用させてください。

新潟市医師会会報より

果たしてNHKに民意は届くか? 勝井丈美

3月初めからNHKに全国のシニア世代から、大ブーイングが寄せられている。そのわけは、23年間も続いた人気ラジオ番組『関西 土曜ホットタイム』(13時~16時)の3月16日終了が告げられたからだ。リスナーから1週間で500件もの抗議がNHKに寄せられており、「番組を復活しなければ、もう金輪際NHKラジオは聞きません」とか、「これしか生きがいのない病気の老人に、死ねというのですか」という過激なものも番組の中で紹介されている。特に大人気のコーナー『ぼやき川柳アワー』(15時~16時)だけは4月から深夜の時間に引越しになるが、それでも大ブーイングだ。先週の川柳のお題、『町』と『立つ』にからめて入選作の約半数近くが、番組終了への怒りや無念、悲嘆を表していたくらいだ。

実は、私も12年間、毎週土曜日、柏崎での仕事帰りにカーラジオで『ぼやせん』を聞くのを楽しみにしていた。『ぼやせん』の魅力は、思わず声をあげて笑ってしまう川柳の面白さもさることながら、佐藤 誠アナ、レギュラー川柳作家、中年女性タレントの3人が入選句を肴にくりひろげるユーモアあふれるしゃべくりにある。関西弁の抜け感が良く、楽しくてアッという間に1時間が過ぎてしまう。ままならない人生だが、このひと時だけは笑顔になれるというようなリスナーからのお便りも多かった。

佐藤アナは23年前から番組司会を務め、NHKを定年退職後も契約アナとしてやっていたのだが、前々から70歳での引退を決めていたのだそうだ。ただ、ご自身は後輩アナが番組を引き継いでくれるだろうと思っていたと番組の中で告白されていた。彼はまだ、現役バリバリ感があって、引退は早いと思うのだが、人には人それぞれの引退時期の決め方があるのだろう。

この番組をこよなく愛する全国のシニアからの悲痛な声を、NHK幹部はどのように受けとめるのであろうか。

さんざんボツを重ねてきました。自分なりに分析すると、落選する句にはある種のパターンがあります。選句でなぜ落とされたのか、後で冷静になってみると分かります。

①事実報告、標語のような句になっていた

②皮肉、嫌み、穿ちすぎ、冷笑になっていて笑えない句だった

③語呂が悪かった

④誰でもまず思いつくような句だった

⑤音だけで瞬時に情景が思い浮かべられる句ではなかった

⑥すでに誰かが詠んだ句のパロディーになっていた

⑦競合する類似句より言葉遣いで劣る駄句だった

⓼視点・着想(見付け)に斬新さがなかった

⑨中七が守られず、字余りで冗長だった

⑩難しい漢語を織り込んで理屈っぽく、軽さがなかった

⑪削ぎ落してもいいようなダブり表現があって言いたいことが伝わらない句だった

⑫五感に訴える句になっていなかった

⑬数字を織り込む句になっていなかった

⑭人間をじっくり観察して描写をしていなかった

⑮募集する側のテーマ、趣旨に沿った句になっていなかった

⑯下五にどんでん返しがなかった

⑰「それがどうした」と言われるような句だった

⑱人情の機微を衝いていなかった

⑲笑ったあとでつい泣けてくるような句ではなかった

⑳よくぞ言ってくれたと膝を打ったり快哉を叫びたくなったりする句ではなかった

㉑推敲しすぎて最初の直感を消してしまっていた

㉒想像で作った句で、体験に根ざした実感句になっていなかった

㉓細部の「てにをは」にこだわっていなかった

㉔自分だけに分かる映像で、他人には分からない独りよがりの句になっていた

㉕人生だの幸福だの自然だの抽象的な内容で、大上段に構えた句になっていた。神は細部に宿るということが分かっていなかった