和尚さんの水飴 (original) (raw)

先月、仕事用のスーツの多くを処分したのですが、手元に残すスーツと礼服をクリーニングに出しました。礼服は、四年前に従姉が他界した時に袖を通したきりで、その後は一度も出番がありませんでした。

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以前は、社員の家族に不幸があれば、通夜や告別式に参列するのが普通でした。葬儀の手伝いに駆り出されたこともありました。年に数回でも弔事に関わると、たとえ生前に自分が一度もお会いしたことのない方でも死を悼む気持ちが湧いてきてます。

他人様の死を、自分の心持ちを正すのに“利用”するのが良いのか悪いのかは別として、若い頃の私にとって ― 少なくとも父親が亡くなる前までは ― そのような場に自分を置くことで、自身の生き方や家族との接し方を考えさせられ、神妙な気持ちになったものでした。

今は、香典・弔電辞退、会社関係者などの会葬もなしの家族葬がほとんどです。それでも、社内で訃報を回す慣例(?)は残っています。身内に不幸のあった社員がしばし休暇を取ることを、会社として気遣う意味があるのか、私にはよく分かりません。いずれにせよ、同僚の身内の不幸は、足を運んで弔意を示すものではなく、遠くから思いやるものへと変わりました。

同じく、慶事への出席もなくなりました。最後に「会社関係者」として披露宴に呼ばれたのがいつのことだったかすら覚えていません。

私の礼服も、身内の不幸がない限りクローゼットの奥に吊るされたままなのでしょう。

私の勤め先では、本社機能の一部を地方の事業所に移転するという構想が、数年前から浮かんでは消えてを繰り返してきました。操業体制を集約化し事業部門を現場に近い場所に移動させて一層の効率化・合理化を図るというのが理由です。

その構想は来春から段階的に実現化されます。その頃には私は会社の“中の人”ではなくなっているので、今となっては自分には関係のない話ですが、残された同僚や後輩社員にとっては、これから大変な時期を迎えることは想像に難くありません。

ここ数年、家庭の事情で転勤を避けたがる社員が増えました。“家庭の事情”の多くは、子どもの進学や家族の介護、配偶者の仕事の継続といったところでしょうか。今は、多くの社員の家庭が共働きです。夫婦で家事や育児を分担している中での単身赴任は、残された家族への負担が増えることになります。

雇用の際の、総合職の条件には“転勤あり”を受け入れることが含まれていますが、家庭の事情を優先させたい社員が増える中で、会社は以前のように露骨な強要はできなくなりました。持ち家を買ったら即転勤、結婚したら即駐在 ― 若い頃の私が上司や先輩社員から教え込まれてきた会社員の宿命は、宿命でも何でもなく、単に会社が都合よく社員を動かすための刷り込みに過ぎませんでした。

かつて希望者が多かった海外駐在も、今は候補者選びが難航していて、一旦駐在すると、任期延長を覚悟しなければならなくなり、それがさらに候補者選びを難しくしているようです。かく言う私も、当初は「三年から四年」と言われていた任期が倍に延ばされたので、すでに十年近く前からその傾向はあったと言えます。

私は幸いにして、一度も単身赴任を経験したことがありませんが、もし、家族と何年も離れ離れの生活を強いられたなら、真面目に転職を考えていたかもしれません。

働き方や家族の在り方は変化していきます。若い社員が、上司から転勤にまつわる苦労話を聞かされたからといって、自分も同じ苦労を味わわなければ、と考えることなどないでしょう。

本社機能の地方移転の話が出た時、会社は地元採用を“休止”して数年が経っていました。もし、それぞれの事業所の地元で有能な人材を採用して育てていたなら、人員のやり繰りでこれほど苦労することはなかったと思いますが、今それをぼやいても詮無いことですね。

今月(九月)の中旬までお米は品薄状態でしたが、我が家は、非常食として用意していた乾燥米が賞味期限を過ぎたため、それを消化しているうちに幸いにして“米騒動”は収束しました。

乾燥米はお湯で戻しただけでは、口当たりや味がイマイチなので、雑炊やリゾットにし、日によってはパスタなどの麺類やお好み焼きも夕飯に取り入れました。

今までは、「夕飯の主食は米」と決めつけていたのですが、工夫次第で違和感のない、それなりの満足度を得られる食卓にできることを知りました。

もし、非常食の乾燥米がなく、お米も入手できなかったとしたら、“米なし生活”となったのでしょうが、私も家族もそれをあまり苦にしないのでしょう。

今年は、夏前にオリーブオイルが大幅に値上がりしました。オリーブの産地での干ばつと猛暑による大不作が原因のようです。

我が家では、もう十数年も前から健康のためにサラダオイルからオリーブオイルに転換していたのですが、これだけ値上がりすると商品棚に手が伸びません。結局、代替として米油を使うことにしました。これまで、米油を使ったことはなかったのですが、癖がなくどのような料理にも使えるので重宝しています。私にとっては新たな発見でした。

魚類も、ここ数年割高な秋刀魚は食卓に並ぶことがなくなりました。その代わりにブリの“登場回数”が増えました。以前、ブリを使っての料理は、冬場のブリ大根一択だったのですが、今はスーパーでもほぼ一年を通じて脂の乗ったブリが手に入るようになりました。冬場のブリ大根以外でも、シンプルに塩焼きにしてたっぷりの大根おろしと一緒に食べるのも良し。照り焼きにするのも良し、です。

我が家の場合、食材に拘りがないことが幸いしています。代替品を探すのも楽しみのひとつ。値上げは気になりますが、工夫で乗り切ろうと思います。