黄昏アウトフォーカス:第10話『永遠だって誓ってよ』感想ツイートまとめ (original) (raw)

黄昏アウトフォーカス 第10話を見る。

夢見るビッチと冷血機械、噛み合わない二人のスーパーロマンス遂に決着ッ! な、第三章第三回である。
礼くんにモノローグの主体が移り、ずっとキャップと眼鏡の向こう側解りにくかった彼の思いとか迷いが、素直に解き放たれる回だった。
優しい王様の助けも借りて愛に向かって駆け出した礼くんは、詩音ちゃんがずっと求めていたスーパー素敵な王子様そのものであり、形だけ追い求めてきたロマンティックに抱きしめられるためには、まず目の前の大事なものに全力で飛び込む誠実が必要だった…という決着も、おとぎ話めいてて良い。

第二章で市川監督が真の愛に向かって進み出す助け舟を、クールな態度で差し出してくれた礼くんが、自分の気持ちを見つめて大好きな人の元へ駆け出す手助けを、菊地原くんがしてくれたのも良かった。
見た目ほどオレサマ野郎でもないことも、ナイーブな内面に低めの自己評価を燻らせているのも、彼の恋路を見届けた僕らはもう知っている。
そういう柔らかな内側を礼くんも持っていて、悩んでいて、でも一人じゃない。
自分よりもっと自分の良いところを知ってくれている親友もいるし、嘘っぱちの形だけから始まって気づけば心が繋がっていた、最愛の恋人だっている。
そういう、眩しい幸福に向かって若者みんなが駆け出していく話。

三組目のカップルも幸せに結ばれた今回、やはり連作を靭やかに結びつけているポジティブな青春像が、3つの物語を通したからこそより鮮明に立体視出来ている感じがあって、ずっとこのアニメ見てきて良かったなぁ…という気持ちになっている。
友達から恋人へ、一歩ずつ丁寧に進んでいった第一章。
ギャグ混じりでいがみ合うライバルが、お互いの思いに素直になるまでの第二章。
そして恋も青春も、素直に受け取れない変拍子が見事にロマンスの王道へとたどり着いた、この第三章。
色んな語り口、色んな人たちがしかし、映画に青春を燃やし、恋に自分の形を見つけるという、共通のフレームにしっかり収まっている。

あんだけ映画バカに見えた礼くんが、そんな映画にすら取られたくない恋を見つけたっていう決着も良いし、そうやって求められる詩音ちゃんが、最初はナメてた映画に超本腰で燃えてる様子も最高だ。
一丸となって何かを作り、繋がって自分の形を探し求める。
少年たちの恋と同じくらい、映画に挑む子どもたちの思春期が丁寧に、色合い豊かに描かれていたのは、テーマに選んだものに真摯に向き合う姿勢を感じ取れて、やはり良い。
映画があったからこそこのお話の少年たちは、自分と自分の周りにあるものをしっかり見つめて、手を伸ばし掴むことが出来た。
恋と性にだけ溺れるのではなく、もう少し広い視野で世界と他人を見れた。

特別な人との閉じた関係の甘やかさ、心も体も求め合う深い繋がりをキラキラに描きつつ、片手を強く繋げばこそもう一方の手を開けた可能性へと、どんどんと伸ばしていける様子も色濃く描かれていて、大変良かった。
第一章ラストで感じた、ロマンスの決着地にキャラクターを縛り付けず、恋あればこそどんどんと育っていける若者の可能性を信じた話作りが、今回も心地よくお話をまとめてくれたと思う。
詩音ちゃんが詩集を携えて、礼くんに全力全開の自己開示ぶっこんでいたのも良かったな…。
相手を知ろうとすることが、自分を知る一番の近道なのだと、夢見るクソビッチはこの物語を通じて学んだんだ。
良いよね、そういうの。

画像は”黄昏アウトフォーカス”第10話より引用

これまで眼鏡の奥に隠されて見えなかった、礼くんの瞳と心は、思っていることを全て言葉で語るモノローグの権限がようやく移ってきて、このエピソードで開示されていく。
底が見えない謎めいた先輩にも、見えないことが沢山あって、だからこそガラスの向こう側追いかけ、求める気持ちがある。
気づけば心に深く突き刺さっていた、嘘っぱちの恋人を追い求める視線がぼやけた窓ガラスとともに描かれるのは、礼くん自身がその解決役となった、菊地原くんの物語のリフレインとして大変良かった。

水面の反射に内心を照らす演出は、前回描かれた詩音ちゃんの内心の鏡像だし、ベーシックな繰り返しの演出をしっかり活かし、話数を越えた響きを出していくスタンダードな演出力が、しっかりしている作品だと思う。
話数を越えて演出を共鳴させることで、主役を取り替えつつ描かれる少年同士の青春模様が、たとえ現れ方は違っても根っこの部分では同じで、皆震える純粋さを誰かに抱きしめて欲しいと願って、話が進んでいることも良く伝わる。

解ってもらいたいけど、解ってもらえない。
その孤独を一番に埋めてくれる特別な相手だからこそ、彼らは恋人になっていくわけだが、しかし少年たちの世界はそれ一個で閉じれてしまうほど小さくない。
桐斗くんしかり菊地原くんしかり、必ず解ってくれる誰かがいる。

この仕事が恋人同士双方向だったのが、真央と寿の特別さだなぁ…と思ったりもするが、しかし彼らもまた自分たちだけがいればいいと世界を拒絶するのではなく、仲間がいればこそ生まれる映画の輝きへ、自分たちの愛を反射する道を進んでいった。
やっぱこの風通しの良さが、自分自身を見つけるための大事な猶予期間である思春期の物語に、必要な結末を連れてきているような気がする。

ずっと謎めいた鬼札として、作品の雰囲気を醸し出し、あるいは大事なポイントで大きな仕事を果たしてくれてきた礼くんにだって、他の少年たちと同じ悩みがあり、それを解決に導いてくれるつながりがある。
内側が見えないからこそ機能する、便利で優秀な作劇の装置から、思春期の当事者として内心を吐露する”人間”にキャラクターを切り替える上で、時に過剰なモノローグは、大きな役割を果たしているのだろう。
このアニメはとにかくキャラクターが喋り続ける作品で、そうしてクローズアップされる繊細な内面こそが、とびきりのロマンティックを必要としている欠乏(あるいはある種の過剰)を強く語ってもいる。
心ひとつには留めておけないほど、溢れる思いが確かにあるからこそ、それを受け止め繋がってくれる誰かを、切実に求めるのだと、納得もするのだ。
このモノローグ主義が作品固有のものか、ジャンル/文脈依存なのかは、不勉強で解んねぇところだけども。

ともあれ礼くんは、自分にも見えない内心の輪郭を、悩みや弱さを誰かに預けていくことで捕まえていく。
彼のトレードマークだったキャップが落ちることで、人を愛する見知らぬ自分こそが本当なのだと、自分を見つけた瞬間が演出されていたのが良かった。
率直で怜悧なロボっぷりが、恋人に素直にグイグイ踏み込めるスーパーダーリンの迫力に変じてもいて、それこそが詩音ちゃんが夢見ていた最高のロマンスそのものだってのも、真剣に率直に生きてたら結果が追いついてきた感じがあって良かった。
やっぱ形だけに振り回されて、真実とガップリ組み合えないのはダメだなッ!

ガラスの向こう側で霞むアウトフォーカスを、しっかり真実に食い込んだ実像に変えていくには、特別な熱がいる。
不確かな自分の形、本当に求めているものを鮮明にするための火種として、恋心に特別な地位を認めている所が、このお話がロマンスであることの証明でもあろう。
お互い形だけ追い求めていた最悪の恋愛が、いつしか素直な自分を相手の前にさらけ出し、弱さや震えもひっくるめて受け入れる中で、本物に変わっていく。
そしてその否定できない感情が、改めて本当の自分を教えていく。
そういう両輪でもって、映画と恋を主題にしたこの青春物語は、力強く自分自身を前に進めてきた。
やっぱ好きだよ、そういうの。

クールに思えた礼くんが、彼なりの悩みに震えている様子を教えてくれたのは凄く心に染みたし、そうして視聴者に自分を告げる言葉を追いかけて、詩音ちゃんが求める最高ダーリンになっていく様子にはめっちゃトキメイた。
自分のあるべき姿がわからなかった青年が羽化していく、確かな手応えが今回のAパートにあるわけだが、その産婆役を礼くんに人生助けてもらってきた、菊地原くんが果たすのもアツい。
礼くんが第二章で、菊地原くんの一番いいところ本人より解っていたように、礼くん自身に見えない良さを教えてもらって、本当はやりたかったのに出来ない夢へ進む強さを借りていくの、最高のお互い様だよ…。

画像は”黄昏アウトフォーカス”第10話より引用

あんだけ形に拘り、自分をさらけ出すのにビビっていた詩音ちゃんが、内心を綴った詩集を携えて礼くんの部屋に赴き、素顔の自分を伝え、相手を受け止める強さを示してくれたのも素晴らしかった。
ここで何かを作る行為に魅入られた同士として、礼くんが詩作をバカにしないのが良いんだよなぁ…。
桐斗くんが本気でぶつかってくれたからこそ見えた、なにかに本気になることの意味。
本気になっても傷つかない強さや、それをバカにせず助けてくれる周りが見えたからこそ、詩音ちゃんは形だけの恋を夢見るのではなくて、生身の自分と彼氏を繋げようと思った。

あんだけ頭どピンクに最高のファックを夢見て、色んな人の真心を土足で蹴っ飛ばしてたビッチが、ことここに至って「恋より映画! ファックより心!」ってなってるの、めちゃくちゃ面白いし染みる。
そういう本気に火が付いたからこそ、冷たい興味本位で始まった恋人関係は本物になったし、情熱に突き動かされて礼くんは詩音ちゃんを強く求めて、体と心で深く繋がり合う。
不確かに揺れる心を抱きしめて、永遠を誓ってと願う重たさが、同じく不安定な礼くんには自分をつなぎとめる楔になって、恋人の寝顔見ながら欲張りな未来に踏み出していくの、めっちゃ良かったな…。

寿が最悪な初恋を断ち切れたのも、真央っていうルームメイトが自分の居場所になって、それ以上の関係へと変わっていきたいと願えたからだ。
自分一人では動かせないものが、誰かを本当に愛したら転がっていって、よりよい未来にたどり着くことが、必ずある。
そういう極めてポジティブな未来像でもって、青春という季節を見つめ続けている所が、やっぱ良いなと思います。
そのためには自分の見たいものを押し付けるのではなく、相手の見ているものを引き受ける愛が大事で、礼くんの眼鏡を通じて恋人の視界を共有して、ロマンティックな情交する演出素晴らしかった。
すれ違ったところから始まった二人だからこそ、この結末はいい。

詩音ちゃんがビッチな態度と詩集に、弱く震える自分を覆い守っていたように、礼くんもキャップと眼鏡と冷たい態度の奥を、何かを求める熱い自分を遠ざけていた。
これらの鎧を全部脱ぎ捨てて、素裸の自分を抱きしめあえる場所にたどり着いたのだと示す、ある種象徴的な色合いがセックスに宿っているの、俺は好きだ。
それは生々しい肉の営みであると同時に、極めてピュアな心のつながりを証明する行為であり、子ども達が成長を果たした一つの証でもある。
何かが終わって、だからこそより豊かな何かが始まる、凄く活き活きしたうねりが、このお話のセックスにはある。
そういう生きた行為として、性を描いているのが好きなんだ。

詩集に綴った本心に見える、不確かで弱い自分だからこそ永遠を求め、抱きしめてほしいと願う精神性。
ビッチが隠していた純粋さを至近距離で見届け、口づけすらすることで、礼くんは自分に欠けていると思った熱を引き受けて、未来へと力強く踏み出す。
”進路”という要素を盛り込むことで、高校時代一瞬の夢を越えて人生を支えるものとして、ボーイズ・ラブを描けている所も良かったです。
いやまぁ色恋の先なんてわかりゃしないもんだが、希望なくして永遠なしだからなッ!!

かくして最高のハッピーエンドにたどり着いた、最悪の凸凹カップル。
残り二話、一体何を描くのかサッパリ分かりませんが、良いもん見れるんだろなという信頼と確信だけは、ガッチリ抱えて次回を待ちます。
やっぱいいアニメ…好きだ!