人生の法則は逆だった。幸せを感じることで生産性もクリエイティビティも導かれるという話 (original) (raw)
がんばって生産性をあげたり、才能を開拓したりするのはやがて仕事や活動で成功し、そのうえで幸せを感じるためだと言ったら、いささか単純な論理だとはいえ、多くの人は同意するでしょう。
しかし逆だとしたら? 「頑張って」しかるのちに「成功」があって、その先に「幸せ」があるのではなくて、「幸せ」を感じられるようになることが生産性も、成功も生み出すとしたら?
TED における面白おかしい講演で、Good Think Inc. の Shawn Achor はまさにこのことを説いています。
Shawn Achor は Positive Psychology と彼が呼ぶ考え方のエヴァンジェリストです。講演の始めに、彼は自分が7歳のときに5歳の妹に怪我をさせてしまい、痛みで叫ぼうとした彼女に「いまユニコーンみたいだったよ!」とすぐに問題をポジティブ(見かけ上は)にすり替えることで叫び声を上げさせずにすんだというエピソードを紹介します。「考え方」といえばそれまでですが、問題のフレーミングが結果を大きく左右するという考え方ですね。
そしてここから、講演は面白い方向へと加速していきます。とても面白いのですが、英語でリスニングするのは難しいという人のためにかいつまんでまとめておこうと思います。### 「平均値」ではなく、一人ひとりの個性の達成
「あのグラフの変につきだした点がみえますか? もし私が統計をものにした学者なら、あの点は消さなくてはいけない異常値です。でも私たち一人ひとりの成功や幸せが個性のある異常値なのです。私はむしろ、なぜこんな値が生まれたのか、そちらに興味を持ちます」
グラフの例を持ち出しつつ、Shawn Achor 氏は現在の教育や仕事の現場での考え方は、どうしてもこの「異常値」を消して、「平均値」に向けて人を管理することに終始してしまうと指摘します。
教育では「ある子供の成績」ではなく「クラス全体の成績」が問題となり、精神科の現場では「健康な状態」という平均値を目指そうとするために医者が患者に常に病気を診断するという状態が生まれるわけです。
こうした「いまはまだ才能を開花させていない」「今はまだ健康ではない」「いまはまだ幸せではない」という考え方と、そこから必然的に導かれる「だから努力して幸せになろう」という考え方は、一つの落とし穴をもっています。
80点を目標に勉強して達成したら当然次は90点が目標になり、それを達成したら100点、さらにはもっと難しい課題を、という具合に達成すべきゴールラインはインフレーションを起こします。「達成したら幸せになれる」というモデルは逃げ水のように幸せがすりぬけることにつながるのです。
幸せを感じるための2分のメソッド
「幸せ」を「達成」や「努力」の向こう側に置く限り、私たちはそれを達成できないと氏は論じます。
しかし実際は逆で、先に「世界は楽しい場所だ」「ここで仕事や勉強ができてなんと運がいいんだろう」「これは難しい問題だ…なんとチャレンジしがいがあるのだろう」と考えることができる余裕を先に醸成すれば、それにともなって Happiness Advantage と言われるものがやってきます。
この精神的状態は生産性を上げ、燃え尽きを防ぎ、悪い習慣から私たちを救い、仕事の成功率を上げてくれるというわけです。これは自己啓発的なやる気トークではなくて、実際に計測するとビジネスマンの契約率が良くなり、医者は診断が正確になりといった形で正確に測定できる違いがあるといいます。
この「幸せを先取りする」考え方を習慣付けるために、次の5つの活動をそれぞれ2分ずつ行うだけでも効果があるということです。
- その日にあった「良いこと」を3つ上げてみる「感謝」の訓練
- その日にあったことを記録するジャーナリングの訓練
- 身体を意識するための軽い運動
- 精神を意識するための瞑想
- 周囲の人へときどき無条件に親切にしてみる
こうした、ちょっとした「幸せの素振り」を3週間続けるだけでも、考え方を再配線してマインドセットを変えることができるというわけです。
いかがでしょう? 私には「ライフハック」のすべてがここにあるように思えます。
いいえ、あの「◯◯するための◯個の方法」的なライフハックでも、「Macを便利するための◯個のツール」的なライフハックでもありません。
むしろ、たった2分でもいいので「小さな習慣」を愚直に当てはめてみたら、やがて大きな幸せな変化が人生に生まれる、本当の意味での「ライフ」のハックです。
まだ「努力」しようと頑張りますか? それとも、「頑張る」ことをそもそも可能にしてくれる「幸せ」を先取りしてみたいとは思いませんか?