海外オヤジの読書ノート (original) (raw)
皆さん、こんにちは。
突然ですが、皆さん眠れていますか?
私は若い時から夜型・睡眠不足気味という生活で、ベッドに入ると瞬殺、週末ともあろうものなら翌日午前10時、正午、ひどい時には16時頃に目覚めるということもありました。
ところが、ところが。
40代も終盤に差し掛かった今、眠れない・寝付けない、という日がしばしば起きるようになりました。
疲れていない?あるかもしれません。窓際だし。運動していない?これもあり得る。でも週に二回くらいはジョギングをするようにはしています。食事や刺激物とか?こちらに来てから酒はほとんど飲まず、食事の夜の8時までには終わる感じ。
一言でいうと、小学生のような生活なのです(今どきの小学生は私なんかより余程忙しいでしょう)。
男性にも更年期があると聞きます。
ひょっとしたそういうやつやもしれません。なんだかカリカリしたり、急に落ち込んだり(というかまあ大体これまでもそんな感じか)。今後老いを迎えるにあたり、体の変化についても学んでいきたいと思います。
で、そんな眠れぬ夜に読んだのが本作でありました。
はじめに
エッセイストの森下典子氏による茶道に関するエッセイ。2002年の作品。
2018年に映画化。ちなみに本人役を黒木華さんが演じたそう。
タイトルに引っかかる!?
というか。
内容より何より、タイトルをどう読むか。
これ気になりませんか?
ひびこれこうじつ? まあここら辺が現実路線か。
表紙を見ると、「にちにちこれこうじつ」ということです。
一応漢詩の一部っぽいし、無駄に中国語の発音をしてみる。
「リュー、リュー、シュィー、ハオ、リュー」
四声だと4, 4, 4, 3, 4 ? 知らんけど(中国語勉強したのも20年前につき忘れた)。
因みに意味は、毎日が平和・無事でよい日である、という事らしい。
というかマンマですね。
寧ろ、困難や苦難にあっても、それをポジディプに受け取ろう、というものかと思います。
確かに内容はそういう感じの話です。
肌で理解する茶道、そこから見えてくるもの
で、本作は筆者の若年時代の振り返りのような作品です。
大学時代、ふとした思い付き程度でお茶を習い始め、先生には都度都度注意され、なかなか上達せず、そして人生はうまくいかず、それでもお茶を続ける、というお話。
5年、10年、15年と続けるうちに、次第に、彼女の見える世界・感じる空気が、茶道と共に変わってきます。
季節の移ろい、温度の変化、それらに応じた食べ物やふるまい、さらにはお湯の沸騰の音やそれを感じる自身の変化。
そうした微細な変化に感心・驚く、そういう繊細さに徐々に目覚めてゆく、というものです。
弱い自分を受け入れるってこと?
で、結局何がメッセージか。
感じること、体で慣れること、常に学ぶこと、受け入れること。
こういうことと感じました。
私としてははむぅ?、って感じです。良く分かりませんでした。論理ではなく、感じなさい、と言われているような気分でした(そしてまさにその論理・仕組み・要は?を私は知りたいのです)。
まあでも、言葉で伝わらない世界、肌や空気で感じる世界があるのも分かります。茶道では、そうしたものを経験を通じて教えてくれる、と解しました。
おわりに
ということで森下氏の茶道エッセイでした。
時間をかけてお茶を頂き、季節を感じる。茶道の世界は魅力的ですが、今生は私にはあまり関連がないかもです。
お茶に興味がある方、ちょっと落ち込み気味の方、自分を受け入れたいけど受け入れられない人、などにはおすすめ出来るかもしれません。
評価 ☆☆☆
2024/11/10
皆さん、こんにちは。
そういえば、トランプ氏が大統領になりましたね。
突然ですが皆さん、投資はどうされますか?
私は金融機関で勤務していることもあり個別株への投資は許可制なので面倒でやりません(アジア株なんて分かりませんが)。ただ、日本を出るまでたまった確定拠出年金が150万円分くらいありました。全て外国株投信に突っ込んでいたら米国株高と円安と相まってあれよあれよと400万越え(10年かかりました)。
その間追加拠出なくこのパフォーマンスですので、毎月拠出されている方は資産効果で財布のひもが緩んでいるのではないでしょうか。
ただこれからはちょっと分かりませんね。
私は一旦ポートフォリオ整理をして、ローリスク体制に改めました。
もちろん、この判断が間違っている・世の中何もない、逆説的ですがこれが望む結末でもあります。
ひとこと
東野氏の作品を読むのはめっちゃ久しぶり。
本作は貰いものなのですが、数年前にどこぞのエアラインで映画は見ました。映画を見たときは「何だかよくわからん」という印象でした。
一作通して読むと、当然ながら物語のからくりが分かります。
本作は書籍を読んでから映画、の流れがおすすめ。
あらすじ
うらぶれた雑貨店のナミヤ雑貨店。
商品よりも相談ごとで有名になった店主。その死期に際し、それまでの回答が実は相談者を不幸にしてしまったのではと思い悩む浪矢雄治。息子に自分の命日に相談者から回答の感想を得るように遺言を残し逝く雄治。
そんなナミヤ雑貨店で起きる不思議な出来事と因果のつながりとは。
不思議ほっこり系。「縁」を感じる作品
いやー、東野作品というとガリレオシリーズですが、こういう単発モノもいいですね。
本作はほっこり系、といってよいでしょう。
とりわけそのカギを握るのがナミヤ雑貨店を営む老浪矢雄治。映画では西田敏行さんが演じていらっしゃいました。
この店主の雄治が金にもならない相談に一生懸命回答し、挙句死ぬ間際に自分は人の人生を狂わせるとんでもないことをしてしまったのではと悩む様子は、確かに西田氏が適役であったと私も感じます。
物語を読み進めるにつれて児童養護施設「丸光園」との関連が徐々に明らかになります。でも、一番最後にツイストが来まして、ああ、そういう事かと皆さん驚かれると思います。ここの驚きの仕掛けは、ガリレオ・シリーズを手掛ける東野氏ならではだなあと感じた次第です。
おわりに
ということで、私としては実に2年以上ぶりの東野作品でした。
スリラー系でなくてもきちんとツイストがあり、短時間で楽しめるエンタメ小説であったと思います。
本作が気に入られた方は映画もご一緒にいかがでしょうか。
本作、東野ファン、ファンタジー系ドラマが好きな方にはおすすめ出来る作品かと思います。
評価 ☆☆☆
2024/11/12
一応映画のトレイラーを。
東野作品というとやはり以下のガリレオシリーズがおすすめ
皆さん、こんにちは。
近頃感想を書くのが遅れています。
本は読むには読むのですが、形に残すのが面倒で。。。
ほぼ他人を意識せず、時に自分で見返しても、良く分からないこともあるレビューなのに。それでも面倒くさい。
以前、三行だけの書評ブログ、みたいなのを見ましたが、私も字数制限をもうけるかどうか悩みます。15分で考えて10分で書き上げる。5分で誤字チェック。そういう書き方ができないものかなあ。
はじめに
作品群のタイトルを拝見していると系統としては「世界ふしぎ発見」「ウルルン滞在記」的な体当たり潜入系の取材記録が多いという印象。
体当たりフィールドワークは、ユーモラスも興味深い
いやあ、面白かった。
これは凄い。お金と時間を使って、地域に入って、友を作り、そして習慣に浸かる。
高野氏の作品を読んだのは初めてですが、もう、旅行記と呼ぶには失礼過ぎる出来栄え、誤解を恐れずに言えば文化人類学的フィールドワークといっても過言ではないと思います。
せっかちでギャアギャア煩く、そして地元の人がいなくなると早速カモ外国人から金を巻き上げようとするソマリ系の人々。
イスラム教徒で酒が飲めないソマリの人々とカート(覚醒作用のある葉っぱ)宴会で盛り上がり、分け入り、仲を深める。
半分カモにされていると分かりつつもお金を費やし取材をすすめるその肝の座り方、地域の人のはなしをユーモラスに描写する筆力、そして弩級で並外れた出逢い(大統領報道官、元海賊、族長たち、若手テレビ支局長など)、どれをとっても面白かった。
私は行く気はないけど、ソマリランドやソマリ系の人々の性格は実に興味深いと感じました。
人質ビジネスと海賊
それから。
本作で取り上げらていた海賊ビジネス。
日本でもソマリア沖で海賊が出るという話は一昔前によく報道されていたと思います。
本作を読むと「このことだったのか」と良く分かります。
ソマリ民族というのはなんでも契約社会だそう。罰を犯したら金で解決。イザコザも金で解決。部族と部族のイザコザはこうして解決する慣習が残っているそう。
そういう下地にあって、外国船籍の「積み荷」(人ではなく)を、他国のマフィア等とつるみ、襲う。そして積み荷をカタに身代金を取って儲ける。
他国のマフィアからは運航予定や積み荷の情報を得る。ソマリ民族は実行部隊。船を襲い、積み荷を確保し、最終的にお金で解決してもらう。
最近では護衛船がついてそうそう簡単に襲えなくなったらしいが、悪い人たちというのは実にグローバルに働くのだなと、変な感心をしてしまった。ローカルな慣習とグローバルなマフィア情報。これぞグローカルか、と。
平和国家ソマリランド
もうひとつ。
というか本作の主題であるソマリランドという超平和国家。
国連の所謂形式的手順を大きく踏み越して、超速で国家を作成してしまったソマリランド。ある意味で利権となる資源がなく、後進地域であり、部族社会が残ったゆえにうまく「部族民主制」が機能している実態に驚き。
他方南部ソマリアは、旧宗主国イタリアにより、長老が取り締まる部族的紐帯が破壊されたことから、今もって「リアル北斗の拳」という状況に陥る現実。
国連とそこから出る補助金で食べていくという南部ソマリア、あるいは貧しくも民主制で平和を実現しディアスポラ(在外人)からの仕送りで国を運営するソマリランド。地域的・手法的にもその中間をいくプントランド。
21世紀の今になっても、未だに19世紀の帝国主義の影響で地域の平和が得られないという現実。生態系と同様、文化や慣習も不可逆的であるのかとひしひしと実感。意図的に破壊した文化や慣習と、その後のカオス。文化や伝統の力、それがない時の影響、これらは小さくないと感じました。
おわりに
ということで初めて高野氏の著作を読みました。
とても好きなテイストです。今後も価格が安かったら是非買い求め読んでみたいと思います。
旅行好き、外国好き、異文化好き、知らないものを知りたい人、アフリカ好き等々にはお勧めできる作品かと思います。
評価 ☆☆☆☆
2024/11/10
皆さん、こんにちは。
そういえば、来月12月に引っ越しをします。今の居所ですが、四年間のテナーで契約しましたが、それが切れようとしています。大家が金にうるさいひとで、もろもろ揉めたこともあり別のところへ移ります。
因みに、この部屋、当初6.3万/月で契約しましたが、こちら版Suumoみたいなやつで大家が掲示しているのをみると9.8万/月でありました。
物価上昇か、大家の腹黒さか。いずれにせよ、反りが合わない彼ときれいにお別れしたいので、多少の出費は我慢して、粛々と引っ越しをしたく思います。
ちなみに引っ越しがあるので最近本の購入を控えています。早く引っ越しして本が買いたい!
はじめに
米国ジャーナリストのJake Bernsteinによる2017の作品。一昔、世間を賑わせていたパナマ・ペーパーという汚職系の秘密文書についての著作。
本作により、Explanatory Reporting部門で2017年ピュリッツァー賞。
なお氏は”The Wall Street Money Machine”により、2011のピュリッツァー賞(National Reporting部門)受賞。
概要
こちらの本は、近所の新古屋さんで数年前に買ったものです。
当時はトランプ政権であり(第一次)、Deep Stateなどがまことしやかに語られ始めていたと思います。ということで私ももっと陰謀論的な内容なものを期待して購入していたものです。
結果としては、常識的というか、まっとうなものだったと思います。各国のセレブや要人が自国に税金を落とさずにオフショアのタックスヘイブンにお金を貯めこむ・租税回避をする、というものです。
あ、ちなみに世界的な租税回避的なアクションにトランプも大いに噛んでいるという記述もありました。
租税回避、マネーロンダリングの仕組み
本作読んで面白かったのは、やはりどうやって租税回避が行われていたか、が色々と出ていた事です。
いや、タックスヘイブンっていうのは要は税金0%ないし、低税率の国。単純に考えるのはこういうオフショアの会社を設立してこれがビジネスをする、ということ。儲かっても税金ゼロですから。でもそれにとどまりません。
例えばこんなのがありました。
とある国の要人・セレブが頑張って脱税する場合。
【下準備】
- オフショアに会社登記を行う(バハマ、バージン諸島、パナマなど)。例えば法人A。
- 法人Aの取締役は現地の法律事務所の社員などに据える(当然手間賃を払う)。
- 更に法人Bを登記し、株主を法人Aとする。
- 場合によっては銀行Cも登記。
【いくつかのプラン】
- 法人Bが先進国の一等地の不動産を購入(法人Bに資金還流済が前提)。
- 要人・セレブから、法人Bへ不動産を売却(権利移転。売却益は抑える。ないしは逆に利益を大幅に出す。状況次第で金額コントロール)。
- 要人・セレブは、法人B所有の不動産のテナントとして入居し、法人Bに資金を流す。
- 法人Bは、要人・セレブの居住国の銀行(息がかかっている)から資金調達を受け、何らかのプロジェクトに参加。法人Bはやりたい放題購買/送金を行い、最後借金を踏み倒す。
- 法人Bは法人クレカを持ち、そのカードを実の保有者の要人・セレブが使う。場合によってはオフショア銀行Cから法人Bに対してカード発行。
因みに、オフショア法人はbear share無記名式らしく、随分前に日本でも裏金・献金づくりで有名になった割引債と類似のものとなります。
このような保有者が分からない外国法人に一度お金を還流できたら、その法人名義で資産を持ち、その資産を使うという形が王道のようです。
もちろん、上記のような実質保有者が分からなかった過去の事情を鑑み、銀行業界は今はどこでも送金にうるさくなりました。法人の取締役や株主についても詳しく調べます。
ということで現在はもう無理な運営方法です。
当行でも、先ず送金先の国がヤバいとアラートがでます(中東とか、ミャンマーとか)。さらには本書でも登場していましたが世界的ブラックリストのデータベースである”world check”, “e-kyc”というものでヤバメな送金は一旦サスペンドする仕組みが出来ています。
多くのタックスヘイブンが、KYC(Know-Your-Customer:顧客登録情報の詳細化)を強化したこともあります。
タックス・ヘイブンやローファームの背景
もう一つ、本書の良き部分は、マネーロンダリング・オフショア送金の背景を掘り下げていること。
例えば環太平洋や中米のタックスヘイブン。なぜ緩い登記ルールにしているのか。答えは簡単。観光以外に、成り立つ産業も、規模の経済も働かないから。ということ。
本書の中心はパナマのローファーム(通称Mossfonモサック・フォンセカ)です。
法人の登記で数十ドル、移転登記で数十ドル、取締役議決も一案件数十ドル、年間マネジメントフィー数百ドル。物価が安い貧しい辺境ですから、外貨収益は価値が高い。
こうやってローファームも雇用を生むという方針です。
更にこのローファーム、Mossfonはバヌアツやバージン諸島の諸政府にも法規制の緩和を求め営業に出ているので、これはもう一つのマネーロンダリングビジネスですね。
英語
ここ数カ月、洋書はフィクション中心でありました。久々のノンフィクション英語は若干難しく感じ、勉強になりました。ページターナー(page-turner)にはなれませんでした。
「らしい、いかにも」な言葉としては、concoct(v)混ぜて作る・でっちあげる、high-net-worth(adj) 富裕層の、covert(adj)秘密の、quash(v)もみ消す・無効化する、falsify(v)偽造する・改竄する、indemnity(n)免責・賠償、stash(v)隠す・蓄える、shakedown(n)ゆすり、implode(v)内部崩壊する、等々。
こういう言葉を効果的に使えると格好良いですよね。
おわりに
ということでピュリッツァー賞受賞作品でした。
個人的には普通・まあまあな感じでしたが、情報公開、わけてもよく知られていないものを縷々説明しているという点では価値があるかもしれません。
金融関連産業に従事する方、興味がある方は読まれても損はないかと思います。
評価 ☆☆☆
2024/11/07
タックスヘイブンを使用した租税回避の数々は、橘氏の著作に詳しいと思います。やや古いですがおすすめ。
皆さん、こんにちは。
そういえば、この11月でこちらの会社でお世話になって10年経ちました。
思えば色々ありました。会計課には嫌われ「あいつはアホで英語も喋れないからもう話したくない」と上司にチクられたり、午前2時まで必死こいてエクセルの関数のミスを探したり、初めは大変でした。
そうこうするうちに、息子は日本へ帰り、娘も日本に戻り、いつの間にか妻との二人暮らしに。まあ年を取ったという事でもあります。
そうそう、会社から15000円程度の慰労金が出るそうです。ちょっとケチだよねえ。いや、あるだけましか?
はじめに
1992年にデビューした恩田陸氏による作品。文芸誌に分割掲載されたのち、2004年に単行本化。
強いてラベリングするならば、ミステリー系青春小説!?
群像劇、一人称視点で物語は展開する
恩田氏お得意の群像劇系の作品。
構成としても4章からなる各章をそれぞれの学生の一人称で語らせるもの。この手法も馴染んできました。
第一章は毬子の視点。
高校二年生の美術部。まだ純真。高校三年の憧れの先輩二人(女)と演劇祭の舞台背景作成のため、先輩の家(女ですよ)にお泊りにいくということでウキウキ。また、親友がダブルデートを仕組んで他校の男子と知り合いになったり、身辺に動きがあります。ただし、先輩の家にお泊り合宿すると、物事は予想しない展開になってゆきます。
第二章は芳野の視点。
彼女は高校三年の美大志望の女の子。香澄という相棒とともに、学校でも超然とした様子に映る彼女からの視点。非常に冷静に世界を観察し、毬子のあどけなさ、相棒の香澄の分からないところ、香澄の家での女子合宿への闖入者たる月彦(香澄の従弟)やその友暁臣の心情を読み取り、時に牽制し、時に操ろうとします。
第三章は真魚子の視点。
ってか名前が妙に少女マンガっぽい雰囲気。
彼女は毬子の親友。素直過ぎる毬子と比べれば彼女はかなり冷静。仲間として毬子も好きだし、ボーイフレンドも好き。一学年上の芳野と香澄の超然コンビに憧れもあるものの、違和感もある。そうした中で毬子が二人に抱きこまれるように合宿に参加するのが若干悔しくもあるという感情も。
物語りの後半以降を締めくくる重要なポジション。言わば物語の見届け人のような立ち位置。
終章は香澄の視点。
あたかも彼女の辞世の句のような短章。
三章までではいまいち確証が持てない空白部分を彼女の独白が埋めてくれます。
おわりに
ということで、恩田作品でした。
夏休みの私的合宿(お泊り会)から一つの事件が発生し、それには過去から因果があったことがつまびらかになる、というものでした。
性格のはっきりと異なるキャラを配置して一人称で語らせる、というのがいかにも恩田さんらしい作品でした。
評価 ☆☆☆
2024/11/02
皆さんこんにちは。
最近ビデオをとっています。誰を?というか、自分のです。
どんだけ自分が好きなんだよ?ってお思いかもしれませんが、単純に英語のスピーチの練習です。
日本を出て10年、スピーチクラブに入って8年くらい、その間何十とスピーチをこなし、多少は日本語英語のアクセントも取れたかな、speech crutch(アーとかエーとか)も大分減ったかなと。
でもこうしてビデオをとると全然だめですね。クセのある喋り方をしています。恥ずかしい。
曲がりなりにも英語を使って仕事をしています。せめてシンプルで明瞭な(発音も言葉遣いも)喋りを日英両方でしたいと思います。
はじめに
詩編はその名の通り、全てが賛歌・讃美歌で構成されています。
全部で150の讃美歌が収録されています。
感想
まあ、言ってしまえば違和感、でしょうか。
神を賛美する一方で、神への嘆きみたいな詩もあります(「神よ、なぜ救ってくださらないのですか!」みたいな)。そういう嘆きは、宗教心の薄い私からすると「んなら信じるなよ」みたいな突込みを想起させます。余計なお世話ですが。
まあでも、ほとんどが、神は凄い、ヤバイ、ステキという熱烈な詩です。
多くの詩がダビデの捧げた詩のようですが、コラの子の詩、アサフの詩とか、他の方が作られたものもあるようです。
またその演奏?唱和の方法なのか、指揮者によって、とか、ムトラベンにあわせて、とか、「ゆり」にあわせて、とか、マスキール、とか、実は色々なリズム?歌い方?があるようであります。
加えて、結構な数の賛歌で途中にト書きのように「セラ」とありました。
これも不思議なんですが、なんか「せいや!」みたいな掛け声、ではないのでしょうね。。。良く分かりません。
そういう演奏法?にはちょっと興味があります。いったいどのように唱和されるのか生で見たいなあ、と思いました。
おわりに
ということで詩篇でありました。
個人的に面白みはありませんでした。ただ旧約聖書全体は、所謂神話的なビビッドな話よりも、祭祀的な要素・宗教運営上の要素へ重きが置かれるようになってくるのかな、と感じた次第です。
今月は以降、「箴言」「コヘレトの言葉」などに入っていきます。
評価 ☆☆☆
2024/10/31
皆さんこんにちは。
あっという間に一年も残すところあと二月となりました。会社では、ついこの前上期(1H)の自己評価を終えたばかりですが、個人的に勝手にやっているYear Resolution(1月初めの12月終わり)はまだまだ積み残しがあります。
こちらもきちんと取り組みたいなあと思う今日この頃です。
はじめに
村上春樹氏による1994-1995に発表された長編小説。
私が読んだのは文庫版三分冊で、夫々、第一部 泥棒カササギ編、第二部 予言する鳥編、 第三部 鳥刺し男編と名付けられています。
村上作品の典型
村上春樹氏の再読シリーズをここのところ毎月続けています。
これまで村上作品のイメージというと、軽妙、音楽、性、不安、象徴的、みたいな単語が頭に浮かびます。
もう少し具体的に肉付けしていくと、音楽や軽いエクササイズ、読書が趣味のちょっと変わった男が主人公。仕事に命を懸けるわけではないけど、そこそこ成功している。女性にモテるわけでもないけど、どういうわけか女性に困らない。こんな男性の冒険譚。そして男性は何かを失い、そして恢復する。
『羊をめぐる冒険』に終わるいわゆる鼠三部作?、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、そして『ノルウェイの森』も概ねこの流れであったように記憶します。
そういう意味では本作『ねじまき鳥クロニクル』もラストの完結以外はほぼこの流れだったかなあという印象であります。
ノモンハン事件やシベリア収容所。世界史との交差。
さて、本作で特に印象的であったのは、ノモンハン事件の戦争描写やシベリア抑留や強制労働といった歴史的シーンを、幻想的・象徴的・予言的な村上氏のストーリーテリングにブレンドしたことではないでしょうか。
当初本作を読んだとき、私はオツムの弱めな文系大学生でしたが、その25年前後たった今、子どもの教材で世界史を勉強した後、読後の理解度が上がったような気がします。
ノモンハン事件というと『失敗の本質』で語られた通り、本土の指令本部と実力行使の関東軍との指揮系統の欠損・掌握不足等から、外交問題に繋がりかねない失敗・大損害を被ったということです。そうした場面に原田氏や間宮中尉が居たということで、私は『失敗のー』に一時立ち寄ったあと、本作『ねじまき鳥―』に戻りました。
また、シベリア収容所送りになった間宮中尉がかつてハルハ河近辺で対峙したロシア将兵のボリスと再会したことも以前と少し印象が異なります。
辛く厳しい収容所というのは分かりますが、幾つか関連書やシーンが出てくる作品を読んでいたため、よりビビッドにシーンを想像できました。
結果よりもプロセスが大事!?
さて、もう一つ最後の結論について。
なんだか結構、??な終わり方だった気もします。とはいっても、精神の安寧を回復できたように見える「僕」の感じはバッドエンドではないといえるかもしれません。
というか、ここに及び、終わり方よりもその過程の起伏を楽しむので十分かもな、と思い始めました。
第一部の泥棒カササギ編では、妻の機嫌の悪さや不穏さと本田老人はじめ歴史の断片がビビッド描かれたことに感心。
第二部の予言する鳥編では、女に縁のある「僕」の周囲を彩る女性たち、加納マルタ、加納クレタ(なんだよこのネーミングって突っ込みますよね)、笠原メイ、これらに囲まれつつ、クミコ出奔の原因を探ります。
第三部の鳥刺し男編では、ナツメグやシナモンの助けを借りつつ、クミコを奪還するために綿谷ノボルと対決する(しかも物理的ではなく)という奇想天外さ。
丸ごと映画化でもしようものなら何時間で終わるのか分からん位の長尺になりそうですが、実に起伏に富む展開でありました。
おわりに
ということで一か月ぶりの村上作品でした。
結構バッサリ処分するのに躊躇しないタチですが、数十年そのままであったということは、当時の自分にとって何か思うことが有ったのであったと思います。
それを思うと、死とか、運命とか、そういう観点から読んでいたことをうっすらと思い出しました。今回は歴史という観点から読んだ部分が大きかったです。
ということで本作、死、運命、予言、歴史、戦争、こういったワードに興味がある方には面白く読んでもらえるかもしれません。
評価 ☆☆☆☆
2024/10/31
ノモンハン事件関連本は他にも読みたいと思案中。当件も取り上げ、組織運営の失敗例として日本軍の失敗を分析した本書は秀逸。
シベリア抑留というとソルジェニーツィンが頭に浮かびます。この名も村上作品でしばしば出てきますね。
シベリア抑留から辛くも逃げ切ったという以下の作品面白かった(フィクション)。