はじめての哲学書に考えたこと | クーリエ・ジャポン推薦図書 (2021年10月・11月) (original) (raw)
クーリエ・ジャポン10月の推薦図書のうち、『はじめてのプラトン 批判と変革の哲学』『じぶん・この不思議な存在』を読みました。
スーパーべらぼうにむつかしかった。
とくに『はじめてのプラトン』にはめまいを覚えました。これで「はじめての」なの? マジで? の難解さ。
序盤はさくさく読めたけど、イデア論あたりから日本語がゲシュタルト崩壊。哲学のはてしなさは、想像を絶するものでございました。
はじめてのプラトン 批判と変革の哲学
『はじめてのプラトン 批判と変革の哲学』はそのタイトル通り、プラトンの入門書です。
プラトンは現代の哲学者のあいだでも不動の人気を誇る、古代ギリシアの哲学者。
著作のほとんどは対話篇で、解釈の自由度が高い。そのためだれもが「わたしのプラトン」をもっているのだそう。
率直に、紀元前の哲学がこれほど新鮮に響くとは思いませんでした。洞窟の比喩のくだりなんて、まるでスマホ中毒を予言しているかのよう。
人間の根源が、何千年前とほとんど変わらないことにおどろかされます。
イデア論は難解だけど、哲学への一歩として純粋におもしろい。再読したいです。
じぶん・この不思議な存在
『じぶん・この不思議な存在』もおもしろかった。哲学的なテーマですが、プラトンより読みやすかったです。
自己のアイデンティティとは、自分が何者であるかを、自己に語って聞かせる説話 (ストーリー) である。
ひとがそれぞれに痛いと感じる箇所、自尊心が傷つく箇所はみなまちまちであり、そしてそのまちまちなところに、それぞれの<わたし>がじぶんの生存の譲渡しがたい根拠をかけている。
「じぶんとはなにか」について、ここまで深く掘り下げられるのかと考えさせられました。知や思考の限界はどこにあるんだろう。
「じぶん」とか「じぶんらしさ」について悩んでいる方におすすめです。
哲学は急がないし、急ぐべきではない
情けないかぎりですが、残り何パーセントかを、1ページめくるごとに確認してました。だってまじで意味わかんないんだもん。
でも、意味わかんないってほうりださずに、わかったつもりにもならずに、ひいひい言いながら読む時間は人生に必要かもしれない、とも思いました。
というのも、夫に本の一節を読んで聞かせたところ、「つまりこういうことでしょ」って、なんかわかったふうなことぶちかましてくれたんです。
それ聞いたとき、ああ、わたしこういう態度とりたくないなって。使い古しの理解の枠みたいなものをつかって、「わかった」とか言いたくないって思ったのです。
枠を持ち替えないと、なにも学べない。いま持ってる常識、価値観を手放していちから考えないと、都合のいいように解釈するばかりで、同じ場所にとどまってしまいます。
わかんないことをわかんないままに考えるのは苦痛だし、時間がかかります。
でも『哲学は急がないし、急ぐべきではない』。
時間をかけるべき、自分自身の問題なのです。
11月の課題図書:エスの系譜
今は11月の課題図書、『エスの系譜 沈黙の西洋思想史』を読んでいます。これめちゃくちゃおもしろい。
「私」という虚構は主語と言う虚構の副産物であり、あらゆる虚構の根源にある主語に対する信仰を打破しなければならない。
主語「私」は述語「考える」の前提である、と述べるのは事態の捏造である。
言葉の畳返し合戦を読んでるみたい。引き込まれます。
哲学はある意味で詩ですね。思考と言葉の限界に挑戦する試み。
難しい本を読むとわけがわかんなくなるんだけど、この「わけわかんなさ」はちょっとクセになってきます。わからない気持ちよさと、道が開けた瞬間の爽快感。
それに、無意識に求めている言葉はふしぎと目に飛び込んできます。
そういう一文が見つかるから、最後までなんとか読み通せるのかもしれません。
クーリエ・ジャポンの課題図書、超おすすめです。はずれがない。読書の参考にぜひ。
ちなみに有料会員になると、課題図書5冊が無料で読めます。