人は実験しながら自由になっていく | 『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』著/國分功一郎 (original) (raw)

読みはじめた瞬間に「こういう本を探してた」と感じる。

言葉にならないモヤモヤがすっと消えていく。

『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』は、ひびくものがたくさん詰まった本でした。

スピノザとは

スピノザは17世紀の哲学者。
デカルトライプニッツと並ぶ、近世合理主義哲学者です。

「汎神論」の思想で有名、ということですけれど、どちらかといえばマイナーな哲学者だと思います (この本を読むまで、わたしは名前もしりませんでした)。

マイナーな哲学者のいうことって、どうなの? と感じるかもしれません。

でも哲学は自分の枠組みを変容させるもの。人と同じで、相性が大事なのかなと思います。

だれかとくらべて落ち込んだり、自分は不完全な存在と思い込んでしまう人には、スピノザめちゃくちゃおすすめです。

哲学というと入門書でさえ難解なイメージがありますが、『はじめてのスピノザ』は哲学の知識がなくてもするする読める、やさしい入門書。

はじめて哲学に触れる方にもおすすめです。

「組み合わせ」という考え方

もっとも感銘を受けたのは、「組み合わせ」という考え方です。

すべては組み合わせであり、善い組み合わせと悪い組み合わせがあるだけです。

自然界にはそれ自体として善いものや悪いものはない。うまく組み合わさるものと、そうでないものがあるだけ、というものです。

たとえば、わたしはK-POPのイケメンに癒やされます。その意味で、わたしとK-POPのイケメンの組み合わせは善いものといえます。

いっぽうで、K-POPのイケメンを見たってなんとも感じない、むしろ嫌悪を感じる人もいる。この場合はもちろん、組み合わせが悪いですね。

つまり、K-POPのイケメンそれ自体に、善いも悪いもない。
組み合わせによって、善くも悪くもなるのです。

実験しながら自由になっていく

では善/悪という言葉は、使わないほうがいいのか。そうではなく、スピノザは言葉の再定義を提案しています。

わたしたちそれぞれが、自分にとっての善/悪を模索するべきなのです。

いまスピノザが考えようとしているのは、いかに生きるべきかという問いです。
この倫理学的問に答えるためには、望ましい生き方と望ましくない生き方を区別することが必要です。

望ましい生き方とは、自分にとっての善い組み合わせを見つけ出すことです。

ここで重要なのは、「実験」という考え。

何が自分にとって善い組み合わせになるのかは、試してみなければわかりません。

どんな習慣やトレーニングが自分に合っているか、それはやってみないとわからない。

世の中に善いとされる習慣は山のようにあります。
早起き、ヨガ、瞑想、ガーデニング、読書、アート……どれが自分と善い組み合わせとなるかを知るには、実験するほかありません。

たとえ3日坊主になっても、合わないと感じても、その人自身に問題があるわけではない。組み合わせが悪かっただけなのです。

「人は実験しながら自由になっていく」とスピノザはいいます。

実験をくり返して、自分を知る。自分を認識する能力が高まることで、少しずつ、より自由になっていくのです。

人は生まれながらにして自由であるわけではありません。
人は自由になる、あるいは自らを自由にするのです。

哲学とは、命がけで真理を追求すること

「組み合わせ」と「実験」。

これがあれば悩みの半分は消えちゃうんじゃないかってくらい、わたしにはとても大事な考えになりました。

スピノザ哲学は実践を求めます。知識として頭に蓄積させるだけでは、なんの意味もない。使ってこその哲学です。

あらゆるトライが実験だとするなら、失敗はありえません。

これからも自分をはげましつつ、スピノザの哲学を使っていきたいと思います。

(長文になるので紹介できませんでしたが、「汎神論」もすごいです。論の展開は感動的ですらあります。人生観が少し変わるかもしれません)

哲学者は「小難しいコトを語る天才」なんかじゃなくて、人びとを苦しみから救うために、まさに命がけで真理を追求した人であると、この本ではじめて知りました。

すばらしい本を紹介してくれたクーリエ・ジャポンと、山口周 (@shu_yamaguchi)さんに心から感謝します。

courrier.jp

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