【イラスト添削#11】ポップなキャラクターイラストの秘訣! 目的に応じた絵柄選びの方法 (original) (raw)

こんにちは、 GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいているgreen322先生の添削シリーズ、第11回をお送りします!

今回も『green322先生に イラストの添削をしてほしい人募集!』でご応募いただいた作品を、実際に先生に添削していただきました。

この記事で学べること

添削担当


green322(X:@green322green
Xで14万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。

添削イラスト応募者

mogu(X:@mogu_u119GENSEKI
アメリカ在住の日本人イラストレーター。楽しいPOPなイラストを目指して練習中。

moguさんのお悩み

今回の添削対象は、moguさんのこちらのイラストです。

ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点や、特に気になっていてフィードバックが欲しい点を教えてください。

猫らしいポーズにしつつ「男の子」であることが伝わるように骨格を考えて描いてみましたが、ポーズが固い印象になってしまいました。また、人物のデフォルメ具合に動物もあわせたかったのですが、毛の描き込みが変に目立ってしまったかなと思います。

アニメ塗りと厚塗りを混ぜた塗り方をしているのですが、絵柄的にはグラデーションをかけずに塗った方がいいのかも悩みます。

ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?

顔を描くのが苦手で、目の描き方が安定しません。

キャラグッズが販売されるようなイラストレーターになりたくて今の絵柄にしているのですが、これでいいのか自信が持てません。

テーマ・構図決めなど「どんなイラストを描くか」に時間がたくさんかかってしまいます。そのためSNSの更新頻度を上げたくても思うように運営できていません。

ー目指している絵柄や作家さんはいますか?

キャライラストが雑貨店などでグッズ販売されたり、アニメキャラなどのグッズイラストを担当できるイラストレーターになりたいと思い、明るくかわいいポップなイラストを目指しています。

目指している先生はよく変わってしまうのですが、今はくるみつ先生(X:@krkrkr32)、ネヲ先生(X:@esasi8794)です。

【添削ポイント】「ポップ」とはどういうことかを掘り下げよう

moguさん、このたびは作品を添削させていただきありがとうございます!

今回のイラストですが、第一印象で「個性豊かな画風でいいな……!」と思いました。動物の描き方も特徴的でとても好きです!

一方で、お悩みの画風と塗りについてや、人体バランスなど、気になる点もございます。明るくかわいいポップな絵柄を目指されているということですが、「ポップ」というのは見やすさ簡略化のバランスです。

それを踏まえて、改善しながらより見栄えがするよう調整したいと思います。詳しく見ていきましょう。

目的にあわせて画風と塗り方を考える

<画風と塗りのマッチング>

まず、画風についてです。お悩みにあるとおり、ポップな絵柄にはボカシを使った塗りは最適ではないかもしれません。「ポップにする」という目的から考えると、アニメ塗りで色を簡略化してパキッとした印象にした方が見栄えが良くなりそうです。今回はグラデーションやぼかしをなくして、より印象に残るイラストにしていきましょう。

アニメ塗りだけで描く方が作画時間も短縮できます。もう一つのお悩みの「SNS運用」、特にイラストの更新もやりやすくなるかと思います。

<人体のバランス>

絵に違和感があると、鑑賞者のノイズになってしまいます。パッと見て気になる人体のバランスはなるべく整えましょう。完璧に正確である必要はないのですが、見た瞬間に「おや?」と感じる部分は可能な限り減らしたいところです。

このイラストでは左右の腕や脚の長さの違い、手のデッサン、胴体の正中線などを揃えました。「男の子」だと伝えるために、手をもう少し大きくして筋張った印象を加えます。太ももを太くして靴の角度や靴裏を整えることで、身体の立体感を強調できます。

耳の位置や服のシルエットを整えつつ、フリルを大きめに描き込んで胸まわりを華やかにします。キャラの目は彩度を上げて、より印象的に仕上げました。

メインが整ったら、全体のバランスで他の部分も調整します。

キャラと尻尾の大きさが似ているので、尻尾を少し小さくしてメリハリを出します。それに伴い、右側の猫を人物の方へ寄せました。

色トレスで印象を柔らかく

背景モチーフの線画は色トレス(輪郭線に色を塗る)されていますが、クッションがキャラと同じ強さの黒い輪郭になっているため、薄いブラウンにして少し印象をぼかします。

キャラがメインのイラストですので、メインモチーフが見切れない程度まで拡大して、よりキャラに寄った画面にしました。

▼上記を添削したものがこちら!▼

ビフォーアフター

【さらにひと手間】修正したメインにあわせて背景と演出も引き上げよう!

キャラまわりを整えたら、さらに演出や背景もブラッシュアップしていきましょう。

<ポップに見せる線画> 「わかりやすさ」はポップさの重要な要素です。キャラや猫の輪郭線を太くして、形がよりはっきりと伝わるようにします。猫の左足の太さも気になりましたので、細く整えています。尻尾やクッションの影の描き方もポップな絵柄にあわせました。

<背景の調整>

背景の花やキラキラのエフェクトやスマホなどにも、強くなりすぎない程度で輪郭を加えます。

キャラの前後関係をよりはっきりさせ、見栄えを上げるために、膝裏の向こうに見えていた尻尾を消して空間の抜けを作りました。

画面上部のお花の大きさが全部似ていたので少し差をつけてメリハリを出し、モバイルバッテリーや魚などのモチーフも形や大きさを変えるなど、配置を整えます。

それでも寂しいと感じる空間には、黄色のキラキラのエフェクトを足しました。

ビフォーアフター

添削完了!

添削を加えたイラスト

元のイラスト → 添削経過 → 添削完了の変化

【総評】基礎を大切にして、長所の土台にしていこう

イラスト内の気になる部分を解決しつつ、全体を大きくしたり背景小物や動物の位置を調整したりと、キャラに目が行くように添削させていただきました。ご参考になれば幸いです。

今回の改善点は、どちらかというと基礎的な部分です。今一度基礎を大事にしながらmoguさんの強みを伸ばしていけば、すぐにでも希望は叶うと思います!

人体デッサンの修正箇所に気づくためには、デッサン人形を近くに置く、クロッキーをたくさん描いて人体のバランスを覚える……といったことを試してみてください。CLIP STUDIO PAINTなどの描画ソフトで3Dモデルを組み、資料として活用するのも短期的には効果があると思います。根本的な人体デッサンを習得するまでは、あわせて使うといいでしょう。

ベースとなるデザインや配色、構成などにセンスを感じますし、繰り返しになりますが動物の描写は味があってとても良いと思います。応援しております、お互いがんばりましょう!

添削イラスト募集中!

この連載では、green322先生にイラストの添削をしてほしい人をまだまだ募集しています!

元のイラストの良さはそのまま活かして、さらにクオリティを上げるポイントが満載の、学びの多い添削です!

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炎の描き方PSD【解説記事あり】

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執筆

kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI