スタバでダベる女子大生に対し畏敬の念を禁じ得ない (original) (raw)
スターバックス代々木上原店でジャズ調の音楽の元、深く椅子に腰掛けて優雅に足を組み、金曜日の夕暮れ前とは思えない程のスピードで携帯の画面上に人差し指を滑らせている、水瓶座風の男性を見かけただろうか
その男性は十中八九、ワタクシである
そしてその男性は十中八九、ツムツムをしている
しかし突然ツムツムを止めてブログを開き、もの凄い勢いでバコバコと文章を打ち始めたのは、横に、先日見かけたのと(恐らく)全く同じ女子大生の2人組が座っているからだ
奴らは先日、数時間に渡り互いの元カレの情報を発表し合っていた。両親との関係に始まり、車の運転から性感帯に至るまで、怒濤の発表会である。世の男性諸君は、あらゆる個人情報は元カノを経由し北半球全体に散布されると肝に銘じた方が良い
そして今日、俺の横、前と同じ位置に陣取ったその2人組はなんと、満を持して「元カレの話」をし始めた
どういうことだ
一体全体、何をそんなに発表することがあるんだ。いったい何百人の男と付き合ってきたんだ。300以降は覚えていないと、そういうことか
若しくは、特筆に値する特徴が数百個近くもある、とんでもないキワモノと付き合ってきたのか。モンゴル人の父とネパール人の母を持つラッパー気質でゲートボール部キャプテンを務める女子プロレスラー風の爺さんと付き合ったとでも言うのか
しかしよくよく聞けば、君たちの元カレはごくごく普通の男の子じゃないか。しかし女子2人のマシンガントークは一切留まるところを知らない
デートがどうだ休日の朝がどうだ大学がどうだ将来はどうだ食べ物は髪型が血液型がペットが夜の相性が友達と一緒に飲むと家具がどうだ靴がどうだ昔のプリクラがどうだ旅行がどうだ兄弟がどうだどうどうどうどうどうっだだおうだおうんsじぇんゔぇせ;え;j;
何と言うネタの数なんだ尋常じゃない、どこにでもいそうなごく普通の男性について、ありとあらゆる表現を使い、見事に、それは見事に形容していく。凄まじい 引き出しの鬼、ボキャブラリーの化け物、キングオブリビングディクショナリーだ。もの凄い生命体だ
間違いない、この衝撃は、かつてマウンテンゴリラという最強の生命体を発見して以来のそれだ
一方が、もの凄い勢いでまくしたてると、もう一方はもの凄いスピードで相づちを打つ。うんうん分かる、うん分かる、分かる分かる、分かるぅぅう〜!分かるうううー!分かるうぅうう〜♪♪分かる分かる分かる分か分か分か分分分分ふんふんふんわわわわわわわっっっwわかかじょいえじゃおあjfじあっじj
さすがに分かり方が尋常ではない なんだ、一体彼女に、何が「分かって」しまっているんだ
まだ文頭の「車でデートするとほんと性格でるんだよね」くらいのところで「えええっぇええ〜、分かるううう〜☆分かる分かる分かるjふぁうぇじえじゃおjv」と言ってふんふんフンフンFnFnと頷いている。何と言う察し方だ、洞察力・推理能力が凡人のそれではない
私は、誤っていたのか
この女性達の実力を見誤っていたのか
奴らは、マウンテンゴリラにも匹敵する無敵のモンスターなのか
「ニンニクの匂いとかあんま気になんないんだよねぇぇええ私」
「ええー!私絶対嫌だあああー!」
「えーなんで全然良いじゃん(アゲアゲ)」
「嫌だよ、おかしいよおおおお(アゲアゲ)」
なんということだ
一体、どういう盛り上がり方なんだこれは
分かるううう〜っ♪ 以外のパターンも
共感以外のパターンもあるのか
つまり彼女達には、多様な価値観を自然に認め合う素地がある
互いの考えに優劣をつけず、違いを認識し、そこから喜びを得る能力がある これは、世界中の宗教に端を発する戦争に対する明確なアンサーなのだろうか
そしてついに、これだけの無数の話題を相手に対してブチまけながら、ついに、「相手が共感しても共感できなくてもどちらでも良い」ということが、今、明確になった
もう、何の話題でも良いし相手がどう思っても良いのだ。分からなくても、良い。思いついただけ出した方が、手数の多い方が勝つ ノーガードの殴り合い、ドン・フライvs高山だ。 互いに流血必死の真実の強者によるタイマン
なんというタフネスなんだ
「私、AB型の人って付き合ったことないんだけどぉぉおお♪」
「え〜〜♪わっかるー♪ 私もなんだけどぉぉぉお!偶然じゃなああい!?」
なんということだ
この会話を聞き、「いやAB型は基本的に少ないから、元カレにAB型がいないことは決して不思議なことじゃないんだよバカ」と、 そう思った俺がバカだった
この2人の話を聞くとそれぞれ6人ずつくらいとは付き合っている様子だが、
「その全てがAB型ではない」確率は、(1 - 9/100)^12 = 32%
「全てAB型でない」確率というのは、こんなにも低いのだ
奴らはなんとそれを、このわずかコンマ数秒の間に計算し、瞬時に確率を導きだし、「比較的確率が低い、すなわち偶然である」 と結論づけた
これは常人の為せる業ではない
脅威のボキャブラリーや恐るべし洞察力を持ち、多様な価値観を認め合う素地を形成しながらドンフライ級のタフネスを誇り、そして計算はスーパーコンピューター並みに早い
もはやマウンテンゴリラの比ではない
女子会は尋常ではない 才能溢れる一部の天才のコロシアムなのだ
恐ろしい
超人達が、
神の領域の人間が、凌ぎを削っている
「ってかあいつ、ちょーうける。何の為に生きてんの?って感じだよね」
何の為に生きているのか
なんということだ
ここにきて
何と言う問いかけだ
古くはソクラテスから始まり、
哲学者たちが追い求め続けたその問いに
この年齢にして明確な答えを与えようとしている
いくらなんでも、その問いを語るには、
その発表の場としては、
喫茶店は、あまりにカジュアル過ぎやしないだろうか
「え〜、ぶっちゃけぇ、友達がいればあとは何もいらないんだけど〜」
友達がいれば、あとは何もいらない
なんという
なんということだ
境地
金
権力
地位
愛
時間
そう、人はみな、何かを望み苦しんで生きている
煩悩を
すでにその年齢で
あらゆる煩悩を全て捨てたというのか
仏陀
仏陀だ
奴は、仏陀なのだ
「え〜、ぶっちゃけぇ、友達がいればあとは何もいらないんだけど〜」
「それ、分かるぅぅぅうう〜☆」
それ、分かる
なんということだ
単独の仏陀ではない
複数の仏陀が
2体の仏陀が並んでいる
何気なく入ったスターバックスに、2体の仏陀が鎮座していた
こんなことが起こっていいのか
世界中の仏教徒が白目を引ん剝いてぶったまげることは間違いない
ここは一体、どこなんだ
私はいまどこにいるんだ
脅威のボキャブラリーや恐るべし洞察力を持ち、多様な価値観を認め合う素地を形成しながらドンフライ並みのタフネスを誇り、そして計算はスーパーコンピューター並みに早く、人間への根本的な問いかけを行う2体の仏陀が、何気なく入った喫茶店に鎮座し、元カレについてディベートしていた
アーメン
ああああアーーーメン!!!!
アナザアアああああああースカイ!!!!!!!!
もう直視できない
もう、彼女達の何気無い行動全てに意味があるに違いない
あらゆる装いや言動の1つ1つに、含蓄を感じる
まさか、、、この足の組み方、、膝下と膝上のなす角度θ、、、
まさか、、この髪型、、何気なく巻かれているこの髪の幾何学的な構造、、、
まさか、、このカバン、、
お
おお
おおおoon
あ、1時間も無駄にしてしまった 俺は一体何をやってるんださすがに疲れた。 さて、皆さん、今夜飲みましょう