「ニューノーマル」(2023)見聞した、経験したことのある話、それがスリラーになる、怖わ! (original) (raw)
「冬のソナタ」「天国の階段」のチェ・ジウが、2016年の「ハッピーログイン」以来に映画出演を果たした作品で、絡み合う奇妙な運命が登場人物たちの日常を一転させ、予測不可能な事態を巻き起こすさまを描いたスリラー。監督は韓国で大ヒットを記録したホラー「コンジアム」のチョン・ボムシク。
**チェ・ジウ、7年ぶりの映画出演ということで観ることにしました。(笑)**ところが、ちいさな劇場でしたが、ご婦人方のかなりの入りでした。いかに日本にチェ・ジウのフアンが多いか!
ところが、異質なスリラーに面食らったのではないでしょうか。そしてイメージのチェ・ジゥさんではない、皆さんがどのような感想を持ったのかなと気になりました。(笑)
現代社会の世相。「ソーシアルメディアに左右され、誰もが死と隣り合わせであり、日常生活そのものがホラーになっている」というメッセージに大いにハマリました。面白い作品だと思います。
監督・脚本:チョン・ボムシク、撮影:キム・ヨンミン、編集:チョン・ボクシム チェ・キョンヒ、**音楽監督:ゴン・テヴォン、音楽:**コンサン
出演者:チェ・ジウ、「イカゲーム」のイ・ユミ、「SHINee」のチェ・ミンホ、「Block B」のピョ・ジフン、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン、イ・ムンシク、イ・ジュシル、イェリン、ファン・スンオン。
物語は 、
ソウルでは女性を狙った殺人事件が連続して発生し、世間を騒然とさせていた。ある日、マンションでひとり暮らしをしているヒョンジョンのもとに、火災報知器の点検をしにきたという中年の男が訪れてくる。図々しく家の中に入ってくる怪しげな男に不安を覚えるヒョンジョン。一方、デートアプリでマッチングした相手と待ち合わせをしているヒョンスのもとには、思いも寄らない人物が現れる。この一見すると無関係な2つの出来事はやがて交差し、予想外の結末へと向かっていく。(映画COMより)
あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
当初何も知らずに観たのですが、物語は6つの物語とエピローグからなり、それぞれに有名映画作品の名が冠されています。物語は2022年6月9日に始まる4日間の殺人事件で、各物語が何時起き、どう繋がるのか。それぞれの物語は少しずつ関係し合い、ラストで作品としてのメッセージが見えてくる作りです。
何故殺されたのかとその背景を考えひとつの結論を得る作品になっています 。
冒頭、淡々と陰鬱な事件のニュースが流れる 。これを「M」の主人公ヒョンジョン(チェ・ジウ)が歯磨きしながら聞いていた。
第1話「M」
ヒョンジョンは高級マンションにひとりで住んでいる。そこに「火災報知器の点検しにきた」と中年男(イ・ムシシク)が訪ねてきた。この男がドアを開け「美人だな5分で終る」と図々しく部屋に上がる。「一人暮らしか?男はいないか」と喋りながら、テーブルの椅子に乗って火災報知器を点検する。ズボンのチャックが開き、下着が見える。「近所で最近事故があったな」と怖い話をしだす。「小便をして帰る」とトイレに入る。
この男を見ていると恐怖を感じる 。ヒョンジョンが電気を消し、TVの怨霊を上げ、スタングンを持って男に挑む。男がぐったりしたところで、鏡を見て口笛を吹き、微笑み、包丁を持って男の喉を刺した。これはただものの女性ではない、殺人鬼だ。
これを美しいチェ・ジウが演じるから怖い!フアンの人はびっくりしたでしょう。このときTVは「女性が行方不明」というニュースが流れていた。
ヒョンジョンにはさらに隠された姿があった。
第2輪「正しいことをしろ 」
中学生のスンジン(チョン・ドンウォン)。年寄りを助けることなど考えたことがない。そんな彼に担任の先生から「成績不良で合格無理、ボランティアで稼げ!」と気合を掛けられた。韓国では受験できないとなると大変です。
スンジンは老婆(イ・ジュシル)の車椅子が溝に嵌って困っているのを発見。「ボランティアをやる」と老婆を救い出し、「自宅まで送らせてください」と申し出た。ここまでやらないとボランティアの証明が得られない。老婆は「あなたは動物好きだから獣医になるの」と聞いた。ところが辿りついたのは廃墟寸前の物騒な集合住宅だった。
老婆が「貧乏は汚い?」と聞く 。スンジンは「いいえ」と答えると、「幽霊がでるかもしれない、孫が事故で死んで5年よ」と言う。エレベーター室の壁に描かれた猫と娘の裸の絵を見てスンジンが「帰る」と言い出すと、老婆が男たちを呼び寄せスンジンを捕獲した。この後は描かれない。
老女は何かを企んでいる。それは分からない。何があるかわからない社会が生み出した犯罪だと思った。
第3話「殺しのドレス」
マッチングアプリで知り合った男を待つ女性ヒョンス(イ・ユミ) 。
「近くにいるから目印になるものを教えて」と電話が入る。「黄色いバック」と教えた。「恋愛には求めていない」と化粧室で丁寧に化粧していると「仕事で少し遅れる」と電話がきた。「始めて会うのにどういうことなの、発情して焦ったの。ウンコさんってこと!」と返事した。そのとき女性の悲鳴が聞こえた。
黄色いバッグを持った女性が倒れていた。男が女性を介抱していた。「会う男はこの人かも」とヒョンスはバッグを隠してその場を立ち去った。するとアプリから「そいつは予告した相手ではない。家に帰るまで鞄を隠しておけ」と連絡がきた。ヒョンスはエレベーターに乗ると、男が乗ってきた。男が包丁で襲い掛かってきた。出会い系アプリには危険性が潜んでいる。
アプリは誰が運用しているのか、そこに犯罪性はないのか?
第4話「今、会いにいきます」
土井裕泰監督の「いま、会いに行きます」の冠が付いている。ファンタジーな恋物語のようだ。
大学生のフン(チェ・ミンホ)はカフェで友人に「縁は偶然と条件が会った時瞬間に作られるものだ」と熱っぽく語られ、店を出ての帰り道。
フンが自販機で飲み物を買い、それを取り出そうとすると、そこにハートのシーリングがある手紙が入っていた 。手紙には次の行き場所が書いてあった。一度は止めようと思ったが友人の言葉「これが縁だ」を思い出し、手紙の指示通りに行くと自販機があって手紙があり、次の行き先が書いてある。
ビルの地下道を通り抜け、裏道に出て、トンネルを抜け、ゴミ箱を漁り女性の写真を見て、その先120歩のところにハート型のマーキングがしてあった。スマホで連絡すると「私の探していた人、私が気に入りました。イ・チェボンです」と聞いてきた。「ハイ」と返事するとそこにビルから女性が降ってきて即死。
フンがイ・チェボン(イエリン)の罠に嵌ったということ。彼女が仕組んだ自殺シナリオだ。彼女に何があったか、ネット社会ではありうる事件だと思った。
第5話 「のぞき魔」
職がなく、毎日ゲームで過ごし、隣の部屋に住む女性を覗き見する中年男のギジン(ピョ・ジフン)。
朝、ギジンは壁に耳をあて隣に住む女性(ファン・スシオン)を監視し、女性が部屋を出ると追い隠し撮りし、一緒にエレベーターに乗り、彼女の匂いを嗅ぐ。スタイル抜群のファン・スシオンはセクシーで脳殺されます。(笑)
撮った映像を見て匂いを思い出す。この情ない実情をゲームの師匠に話すと「アタックあるのみ」とけしかけられた。
2022 年6月9日午前3時、雨だった。彼女が居ないことを確認して、ビルの外壁を伝って彼女の部屋に忍び込み、彼女の歯ぶらしで歯を磨き、ベッドに潜り込み匂いを嗅ぎ恍惚の気分に浸っていた。
そこに彼女が戻ってきた。ギジンはベッドの下に隠れた。彼女がベットで脚を掻くとそっと指を添える。(笑)彼女がバスに入り下着を投げればそれを嗅ぐ。ギジンはどうしようもない変態魔だ。そこに分銅鎖を持つヤクザな男が入ってきた。彼女の対策はヤクザを入れてカツアゲすることだった。部屋にはビニールに包まれた遺体があった。
ギジンの行動にはあきれて物が言えないが、こういう性犯罪が多いのも事実だ。いったいゲームの師匠は何者だ? 残置されている遺体は誰か?何故ここにある?
第6話 「ろくでもない人生」
人生に投げやりで、深夜のコンビニ・アルバイトで働く女性ヨンジン(ハ・ダイン) 。
このエピソードは「別次元の面白さだった」とまず言っておきます。
レジを打つたびに「ファック!」と喚く。(笑)これにハ・ダインの風貌がよく合っている。彼女に虜にさせられます。(笑)
店内をよく廻って賞味切れの製品をバックにかき集める(持ち帰るために)。
そこに酔っ払いの中年男性がやって「タバコをくれ」と言うが、銘柄が言えない。これで揉める。すさましい言い合いになる。男が帰って行った。クソみたいな客だった。
マッチングアプリのヒョンスが支払いをして帰った 。
ヨンジンが店を掃除しているとこの男が戻ってきた。「ムカツク、殺せ!」と店の前の道路に連れ出し「殺せおっさん!」と頭を地面に叩きつける。(笑)
仕事が終るとキックボードで美しい河川敷を通て、路地裏のきたない部屋に帰る。冷蔵庫から賞味期限切れのパイナップル缶を食べる。母親から来て欲しいという電話が入るが「公演の準備で行けない」と断る。
「Fuck to the World」なる殺人をやり取りするチャットルームを見る。
「警察が来るんだ、今殺した。どうする」と叫ぶ男のチャットを見た。
「ゴミと一緒に捨てたら」と書き込んだ。
次の夜、おばちゃんが店に「ここで買った」とゴミ袋の返品にやってきた。「領収証を見せて!」というヨンジンとおばちゃんの壮烈な言い争い。(笑)店長との話し合いでわずかな返金でおばちゃんは帰った。
不条理な客との争いにヨンジンは生きる意欲を失っていく 。
深夜、アパートに戻って興味期限きれのパイナップ缶を食べ、チャットを見る。「ノコギリで切った。いろいろな生ゴミと一緒にする」と書き込まれていた。
次の夜、店で働いていると「肉は生ゴミか?」と聞いてきた。「一般ゴミと区分できない」と返事した。
そこにフンが来て「先輩!」と携帯の映像を見せ、「有名ユーチューバーの死です」と言う。
男から「見にきてくれ!」とメールがきた 。
キックボードで急いだ。男から「遺体の硬直が凄い、川に吊るす」と言って来た。
橋の上で男が火を焚き待っていた。火の側にバッグが置かれていた。ヨンジンが「バカにするな!」と橋の下を見た、そしてバックを見て、悲鳴を上げた。男が分銅鎖を振り回し迫ってきた。ヨンジンは「ファック!」と叫び階段落ち。ヤクザが迫って来る。
翌日、ヒョンジョンはTVニュースでこの事件を見た。
ヨンジンは何で歌手を辞めたか?喰うに困り、不条理なコンビニ客に苦しめられ、死にたいと殺人をやり取りするチャットルームに出入りし、とんでもない殺人鬼に出合い最後を遂げた 。この世の怖さ、甘くない社会、不条理をリアリアルに描いたものだった。
「一人めし」
エンデイングで流れるエピローグです。各エピソードの主人公が一人で食事している場面が映し出される。スマホを見ながらの孤独な食事。すべての事件は孤独とネット、どう飯を食うかに関わっている。
まとめ :
ミステリーで、身近な現代社会の闇を見せて「孤独と絶望と死が常に隣にある」と感じさせてくれる創作的な作品だった。
第1話から6話まで、時系列でどうつながるのか、掴めていません。これが最大のミステリーどころなのに。(笑)みんなネットで繋がっている。ちょっと観では掴めない、凄いスリラーになっていた。
孤独で会話がない、そこにちょっとした相手の心ない言葉に過剰反応する。怒りっぽくなったと感じる自分は「犯罪を犯す一歩の前の状態なんだ」と思わせてくれました。
韓流作品ならではのテンポの良く、美しくてキレがある映像に、役者さんの個性ある演技を楽しみました。特に、第6話に出てくるハ・ダイン。顔、身体つき、そしてセリフの言い回しに破滅した生き方がもろに出ていて圧倒されました。
ニューノーマルの世界とは孤独と絶望が絡み合い、死は身近にある世界 。
****