メイの雑記帳 (original) (raw)

昭和17年生まれの母、終戦間際には府中だか立川だかに疎開していた。
気づいたら周りに知らないおじさんがいた、というのが最も古い記憶だそうだ。

祖母からは、幼い子供の手を引いて、東京の下町から必死に逃げたと聞いたような気がする。
東京の下町というのが、浅草だと聞いたような気もするが記憶違いかもしれない。

祖母が亡くなったのが西暦2000年12月。
20世紀の終わりだった。

東京大空襲の頃は、一軒おきに爆弾が堕ちてきたが我が家には当たらなかったとか、上から黒い物体が落ちてきて、よく見たら人だったとか。
そんな話を祖母が軽々と語っていたものだ。

祖父は公務員だったが、終戦が近づいた頃に徴兵されて南洋に赴き、何事もなく帰ってきたら。
敵がまったく攻めて来なかったのよと、祖母はよく言っていた。
そんなことはない、闘ったんだからと、祖父も言っていた。
どちらが本当なのかは分からぬが、引き揚げ船は3隻が沈められ、戻ったのは一隻だけだったとも聞いた。

祖母は戦後のどさくさに紛れて、土地を安く手に入れ、結果的に3人の子に一軒ずつ家を残した。
要領はよい人だった。

祖母の姉はお君ちゃんという人で、下丸子に住んでいた。
なんとか小町と呼ばれるほど器量がよかったそうだ。
しかし、チンチクリンの妹のほうが子や孫に恵まれて悠々自適に暮らしていることに嫉妬して、仲がよいとはいえなかったらしい。
そうはいっても、祖母はたびたび下丸子にお君ちゃんを訪ねて行っていたし、亡くなったときには残念がっていたように思う。

私が小学3年生の頃、戦争体験者に話を聞いて作文を書く課題があった。
もう40年以上前のこと。その頃はまだ、戦争を知っている人も多かった。

祖母は、戦火に焼かれた街を見て、呆然としたと表現した。
呆然という言葉を作文に使ったら、難しい言葉を使うねと、先生に言われたことは何故かよく覚えている。

7月初めの頃、長男が一人暮らしするから連絡先に親である私の名前を書いたという。
そんな突然なにを言うか。
住まいを探しているらしいのは知っていたが、その言い方はないだろう。

しかも、一人暮らしではあるまい。
誰かと住むのかと聞いたら案の定、そうだと言う。
いわゆる同棲か。

籍を入れる話もしているが具体的には決まっていないという。
不動産屋に乗せられて、いい部屋は早く埋まってしまうと言われて急いで契約したそうな。

場所はどこだ。
埼玉の知らないところだ。
なんというか、がっがりとしか言いようがない。

そして、これは空の巣症候群になるしかない。
聞いた瞬間に胸が痛くなってしまった。
これは鬱病の一種だ。

高校野球を見るのは楽しい。
子供の学校、自分の母校はもちろん気になる。

子供の学校はベスト8まで勝ち進んだが、強豪に阻まれた。
ピッチャーを何人も投入して6回コールド負け。
よく戦った。

自分の母校は単独チームは組めず、連合チームである。
今年も初戦で消えた。

他の地方を見てもいろいろなドラマがある。
弱小高にもそれぞれの戦いがある。出身校やクラブチームなどのデータを見るのも面白い。

野球自体も見るのが好きだ。
子供の頃、体育でやらされなかったから。

美容院で髪を少し切って白髪を染めた。
パニック気味になってから美容院は怖いのだ。

心が安定しているときはまだ良いが、今は胸がざわめいて落ち着かない。
そんなときの美容院は怖い。

首にタオルやらケープやらを幾重にも巻かれて苦しい。
苦しいと思うと怖くなってくる。
首元が苦しいのはたまらないが、姿勢を変えるといくぶん和らぐ気がした。
なんとか乗り切れそうだと落ち着いてきた。

大丈夫、美容院はすぐに終わるから。
幸い、今の担当者は手際がよくて早い。

気が騒いでしまうのは、子供が独立しようとしているから。
それ自体はめでたいことだが、予定が不透明なのがたまらなく嫌だ。
段取りを決めてはっきりさせてほしいものだ。

眠れなくなったので日記を書く。

前々からよく見る夢に、高校で体育の単位が足りなくなるのではないかと焦る、といものがある。
夢の中の時期設定はだいたい6月頃らしい。
夢の中では、4月以降、体操着に着替えて授業に出た記憶がなく、おそらくまったく出席していないのである。
なんとなく単位取得に必要な出席日数を考えてみても、さすがにまずいのではないかと、焦りが生じている。

高校生だったのはもう35年ほど前のこと。
間違いなく高校は卒業しているわけで、体育の単位が足りなかったことも、出席日数がギリギリだったこともない。
夢に違いないのだが、夢の中では妙に現実味があるのである。

体育は苦手だが、高校の体育はそれほど嫌いだったわけでもない。
何かの暗示や深層心理のあらわれだとしたら、夢の中の体育は何なのだろう。

先週末にエアコンを買い替えた。
これまでのエアコンは最大出力にしても気温35度には対抗できず、家の中は灼熱であった。

設定温度を17度にして風力最大にしても室温はせいぜい28度、人が多ければ30度を超えていた。
新しいエアコンは設定温度どおりの温度にしてくれる。

これで真夏の昼夜を乗り切れそうだ。

疲れているのに眠れなくなった。
眠れないときは気にせず起きていればよいだけだ。

今日は頭の中に架空のストーリーが流れてきて眠れない。
横になっていると流れてくる。
記憶と架空の狭間を流れる実体のない映像が。

記憶を呼び戻されるのが嫌だ。
放っておいてくれないか。

疲れているのに眠りたくない。
夢に記憶が押し寄せるのが恐ろしい。

大丈夫だ。
眠らなくてもいいし、夢を見てもいい。
大したことではないから。