刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖 (original) (raw)

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試憲法第3問イです。

公務員の政治的表現の自由に関する(中略)

イ.堀越事件判決(最高裁判所平成24年12月7日第二小法廷判決、刑集66巻12号1337頁)は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行動類型に属する政治的行為を行った者には罰則規定が設けられているところ、管理職的地位になくその職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員が、政党機関紙等の配布を行った場合、それが職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないときには、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえないため、当該配布行為に当該罰則規定を適用することは、憲法第21条1項、第31条に違反するとした。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:Spilling out and over the gate

So I can walk until I get some blood in my system

出典:https://youtu.be/r3vGuy2SBWo?feature=shared

感想:アルクによると、spill outは、あふれ出る、などの意味です。

乙:最判平成24年12月7日は

「(4) 所論は,原判決は,憲法21条1項,31条の解釈を誤ったものであると主張する。

ア そこで検討するに,本法102条1項は,「職員は,政党又は政治的目的のために,寄附金その他の利益を求め,若しくは受領し,又は何らの方法を以てするを問わず,これらの行為に関与し,あるいは選挙権の行使を除く外,人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定しているところ,同項は,行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することをその趣旨とするものと解される。すなわち,憲法15条2項は,「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない。」と定めており,国民の信託に基づく国政の運営のために行われる公務は,国民の一部でなく,その全体の利益のために行われるべきものであることが要請されている。その中で,国の行政機関における公務は,憲法の定める我が国の統治機構の仕組みの下で,議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策を忠実に遂行するため,国民全体に対する奉仕を旨として,政治的に中立に運営されるべきものといえる。そして,このような行政の中立的運営が確保されるためには,公務員が,政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要となるものである。このように,本法102条1項は,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することを目的とするものと解される。
他方,国民は,憲法上,表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており,この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって,民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると,上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は,国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。
このような本法102条1項の文言,趣旨,目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え,同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると,同項にいう「政治的行為」とは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し,同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。そして,その委任に基づいて定められた本規則も,このような同項の委任の範囲内において,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為の類型を規定したものと解すべきである。上記のような本法の委任の趣旨及び本規則の性格に照らすと,本件罰則規定に係る本規則6項7号,13号(5項3号)については,それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したものと解するのが相当である。このような行為は,それが一公務員のものであっても,行政の組織的な運営の性質等に鑑みると,当該公務員の職務権限の行使ないし指揮命令や指導監督等を通じてその属する行政組織の職務の遂行や組織の運営に影響が及び,行政の中立的運営に影響を及ぼすものというべきであり,また,こうした影響は,勤務外の行為であっても,事情によってはその政治的傾向が職務内容に現れる蓋然性が高まることなどによって生じ得るものというべきである。

そして,上記のような規制の目的やその対象となる政治的行為の内容等に鑑みると,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは,当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。具体的には,当該公務員につき,指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼし得る地位(管理職的地位)の有無,職務の内容や権限における裁量の有無,当該行為につき,勤務時間の内外,国ないし職場の施設の利用の有無,公務員の地位の利用の有無,公務員により組織される団体の活動としての性格の有無,公務員による行為と直接認識され得る態様の有無,行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等が考慮の対象となるものと解される。

イ そこで,進んで本件罰則規定が憲法21条1項,31条に違反するかを検討する。この点については,本件罰則規定による政治的行為に対する規制が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかによることになるが,これは,本件罰則規定の目的のために規制が必要とされる程度と,規制される自由の内容及び性質,具体的な規制の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである(最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁等)。そこで,まず,本件罰則規定の目的は,前記のとおり,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することにあるところ,これは,議会制民主主義に基づく統治機構の仕組みを定める憲法の要請にかなう国民全体の重要な利益というべきであり,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為を禁止することは,国民全体の上記利益の保護のためであって,その規制の目的は合理的であり正当なものといえる。他方,本件罰則規定により禁止されるのは,民主主義社会において重要な意義を有する表現の自由としての政治活動の自由ではあるものの,前記アのとおり,禁止の対象とされるものは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ,このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから,その制限は必要やむを得ない限度にとどまり,前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲のものというべきである。そして,上記の解釈の下における本件罰則規定は,不明確なものとも,過度に広汎な規制であるともいえないと解される。なお,このような禁止行為に対しては,服務規律違反を理由とする懲戒処分のみではなく,刑罰を科すことをも制度として予定されているが,これは,国民全体の上記利益を損なう影響の重大性等に鑑みて禁止行為の内容,態様等が懲戒処分等では対応しきれない場合も想定されるためであり,あり得べき対応というべきであって,刑罰を含む規制であることをもって直ちに必要かつ合理的なものであることが否定されるものではない。

以上の諸点に鑑みれば,本件罰則規定は憲法21条1項,31条に違反するものではないというべきであり,このように解することができることは,当裁判所の判例(最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集2 8巻9号393頁,最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁,最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁,最高裁平成10年(分ク)第1号同年12月1日大法廷決定・民集52巻9号1761頁)の趣旨に徴して明らかである。

ウ 次に,本件配布行為が本件罰則規定の構成要件に該当するかを検討するに,本件配布行為が本規則6項7号,13号(5項3号)が定める行為類型に文言上該当する行為であることは明らかであるが,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものかどうかについて,前記諸般の事情を総合して判断する。

前記のとおり,被告人は,社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官であり,管理職的地位にはなく,その職務の内容や権限も,来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すという,裁量の余地のないものであった。そして,本件配布行為は,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,公務員としての地位を利用することなく行われたものである上,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。これらの事情によれば,本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。」

と、規定しています。

したがって、上記記述は、誤りです。

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試憲法第3問アです。

公務員の政治的表現の自由に関する(中略)

ア.猿払事件判決(最高裁判所昭和49年11月6日大法廷判決、刑集28巻9号393頁)は、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を、その行動をもたらす弊害の防止をねらいとして禁止することにより、意見表明の自由が制約されるが、それは単に行動の禁止に伴う限度での間接的・付随的制約にすぎず、禁止により得られる利益は、公務員の政治的中立性を維持し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するという国民全体の共同利益であり、失われる利益に比して更に重要であるから、利益の均衡を失するものではないとした。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:Stop that from listening

Let's go and do our thing

出典:https://genius.com/Lulu-james-closer-lyrics

感想:アルクによると、stop ~ from doingは、~が…するのを妨げる、という意味です。

乙:最大判昭和49年11月6日は

「 (二) 国公法一〇二条一項及び規則による公務員に対する政治的行為の禁止が右の合理的で必要やむをえない限度にとどまるものか否かを判断するにあたつては、禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討することが必要である。

そこで、まず、禁止の目的及びこの目的と禁止される行為との関連性について考えると、もし公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されるときは、おのずから公務員の政治的中立性が損われ、ためにその職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立的運営に対する国民の信頼が損われることを免れない。また、公務員の右のような党派的偏向は、逆に政治的党派の行政への不当な介入を容易にし、行政の中立的運営が歪められる可能性が一層増大するばかりでなく、そのような傾向が拡大すれば、本来政治的中立を保ちつつ一体となつて国民全体に奉仕すべき責務を負う行政組織の内部に深刻な政治的対立を醸成し、そのため行政の能率的で安定した運営は阻害され、ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策の忠実な遂行にも重大な支障をきたすおそれがあり、このようなおそれは行政組織の規模の大きさに比例して拡大すべく、かくては、もはや組織の内部規律のみによつてはその弊害を防止することができない事態に立ち至るのである。したがつて、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであつて、その目的は正当なものというべきである。また、右のような弊害の発生を防止するため、公務員の政治的中立性を損うおそれがあると認められる政治的行為を禁止することは、禁止目的との間に合理的な関連性があるものと認められるのであつて、たとえその禁止が、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、あるいは行政の中立的運営を直接、具体的に損う行為のみに限定されていないとしても、右の合理的な関連性が失われるものではない。

次に、利益の均衡の点について考えてみると、民主主義国家においては、できる限り多数の国民の参加によつて政治が行われることが国民全体にとつて重要な利益であることはいうまでもないのであるから、公務員が全体の奉仕者であることの一面のみを強調するあまり、ひとしく国民の一員である公務員の政治的行為を禁止することによつて右の利益が失われることとなる消極面を軽視することがあつてはならない。しかしながら、公務員の政治的中立性を損うおそれのある行動類型に属する政治的行為を、これに内包される意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、同時にそれにより意見表明の自由が制約されることにはなるが、それは、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎず、かつ、国公法一〇二条一項及び規則の定める行動類型以外の行為により意見を表明する自由までをも制約するものではなく、他面、禁止により得られる利益は、公務員の政治的中立性を維持し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するという国民全体の共同利益なのであるから、得られる利益は、失われる利益に比してさらに重要なものというべきであり、その禁止は利益の均衡を失するものではない。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、正しいです。

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試憲法第2問イです。

信教の自由に関する(中略)

イ.宗教法人に対する解散命令は、宗教法人の法人格をはく奪するなどの法人としての活動に対する規制を行うにすぎず、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあることからすると、解散命令は、その宗教団体や信者の精神的・宗教的側面をも対象としているといえるので、信教の自由の重要性に鑑み、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:No explanation when I called you out of nowhere
I almost said that I couldn’t stop thinking of you
But I just rambled on

出典:https://genius.com/Madeleine-roger-am-i-ever-gonna-lova-lyrics

感想:アルクによると、out of nowhereは、出し抜けに、などの意味です。

乙:最決平成8年1月30日は

「 本件解散命令は、宗教法人法(以下「法」という。)の定めるところにより法人格を付与された宗教団体である抗告人について、法八一条一項一号及び二号前段に規定する事由があるとしてされたものである。
法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有してこれを維持運用するなどのために、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とし(法一条一項)、宗教団体に法人格を付与し得ることとしている(法四条)。すなわち、法による宗教団体の規制は、専ら宗教団体の世俗的側面だけを対象とし、その精神的・宗教的側面を対象外としているのであって、信者が宗教上の行為を行うことなどの信教の自由に介入しようとするものではない(法一条二項参照)。法八一条に規定する宗教法人の解散命令の制度も、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同条一項一号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項二号前段)があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合(同項二号後段、三号から五号まで)には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであり、会社の解散命令(商法五八条)と同趣旨のものであると解される。

したがって、解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われ(法四九条二項、五一条)、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから(法五〇条参照)、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。

このような観点から本件解散命令について見ると、法八一条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、前記のように、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的であるということができる。そして、原審が確定したところによれば、抗告人の代表役員であったD及びその指示を受けた抗告人の多数の幹部は、大量殺人を目的として毒ガスであるサリンを大量に生成することを計画した上、多数の信者を動員し、抗告人の物的施設を利用し、抗告人の資金を投入して、計画的、組織的にサリンを生成したというのであるから、抗告人が、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らかである。抗告人の右のような行為に対処するには、抗告人を解散し、その法人格を失わせることが必要かつ適切であり、他方、解散命令によって宗教団体であるオウム真理教やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。したがって、本件解散命令は、宗教団体であるオウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても、抗告人の行為に対処するのに必要でやむを得ない法的規制であるということができる。また、本件解散命令は、法八一条の規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられたものであるから、その手続の適正も担保されている。

宗教上の行為の自由は、もとより最大限に尊重すべきものであるが、絶対無制限のものではなく、以上の諸点にかんがみれば、本件解散命令及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は、憲法二〇条一項に違背するものではないというべきであり、このように解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和三六年(あ)第四八五号同三八年五月一五日大法廷判決・刑集一七巻四号三〇二頁)の趣旨に徴して明らかである。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、誤りです。

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試憲法第1問アです。

憲法の明文で規定されていない権利・自由に関する(中略)

ア.最高裁判所は、夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法第750条の規定が、憲法第13条の規定に違反するか否かが争われた事例において、婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとした。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:I love clowning around, clowning around

I have my whole life long, I'll keep it going on

出典:https://genius.com/Joanna-sternberg-a-country-dance-lyrics

感想:アルクによると、whole life longは、一生ずっと、という意味です。

乙:最大判平成27年12月16日は

「2(1) 氏名は,社会的にみれば,個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが,同時に,その個人からみれば,人が個人として尊重される基礎であり,その個人の人格の象徴であって,人格権の一内容を構成するものというべきである(最高裁昭和58年(オ)第1311号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁参照)。

(2) しかし,氏は,婚姻及び家族に関する法制度の一部として法律がその具体的な内容を規律しているものであるから,氏に関する上記人格権の内容も,憲法上一義的に捉えられるべきものではなく,憲法の趣旨を踏まえつつ定められる法制度をまって初めて具体的に捉えられるものである。

したがって,具体的な法制度を離れて,氏が変更されること自体を捉えて直ちに人格権を侵害し,違憲であるか否かを論ずることは相当ではない。

(3) そこで,民法における氏に関する規定を通覧すると,人は,出生の際に,嫡出である子については父母の氏を,嫡出でない子については母の氏を称することによって氏を取得し(民法790条),婚姻の際に,夫婦の一方は,他方の氏を称することによって氏が改められ(本件規定),離婚や婚姻の取消しの際に,婚姻によって氏を改めた者は婚姻前の氏に復する(同法767条1項,771条,749条)等と規定されている。また,養子は,縁組の際に,養親の氏を称することによって氏が改められ(同法810条),離縁や縁組の取消しによって縁組前の氏に復する(同法816条1項,808条2項)等と規定されている。

これらの規定は,氏の性質に関し,氏に,名と同様に個人の呼称としての意義があるものの,名とは切り離された存在として,夫婦及びその間の未婚の子や養親子が同一の氏を称するとすることにより,社会の構成要素である家族の呼称としての意義があるとの理解を示しているものといえる。そして,家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位であるから,このように個人の呼称の一部である氏をその個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性があるといえる。

(4) 本件で問題となっているのは,婚姻という身分関係の変動を自らの意思で選択することに伴って夫婦の一方が氏を改めるという場面であって,自らの意思に関わりなく氏を改めることが強制されるというものではない。

氏は,個人の呼称としての意義があり,名とあいまって社会的に個人を他人から識別し特定する機能を有するものであることからすれば,自らの意思のみによって自由に定めたり,又は改めたりすることを認めることは本来の性質に沿わないものであり,一定の統一された基準に従って定められ,又は改められるとすることが不自然な取扱いとはいえないところ,上記のように,氏に,名とは切り離された存在として社会の構成要素である家族の呼称としての意義があることからすれば,氏が,親子関係など一定の身分関係を反映し,婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは,その性質上予定されているといえる。

(5) 以上のような現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると,婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。本件規定は,憲法13条に違反するものではない。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、誤りです。

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試刑事訴訟法第25問ウです。

次の【事例】中の実況見分調書の証拠調べ請求について述べた後記アからオまでの【記述】のうち(中略)

【事例】

司法警察員Kは、Vに対する殺人事件の捜査として、事件現場の道路につき、被疑者甲を立会人とする見分を行い、実況見分調書を作成した(実況見分調書には、甲の署名・押印のいずれもない。)。甲が、実況見分の際に、道路上の血痕が存在する箇所を指し示しながら、Kに対し「ここでVを刺しました。」と説明したので、Kは、その箇所を写真撮影した後、同写真を実況見分調書に添付するとともに、甲の前記説明内容を実況見分調書に記載した。また、Kは、計測の結果当該箇所が基点から10メートルの地点であることを確定し、その旨をも実況見分調書に記載した。その後、甲は、同事件の犯人として起訴された。検察官は、当該被告事件の公判前整理手続において、「犯行再現状況」を立証趣旨として実況見分調書の証拠調べを請求した。弁護人は、「甲は犯人ではない。」旨主張した上、実況見分調書について不同意の意見を述べた。

【記述】

ウ.実況見分調書の甲の前記説明内容が記載された部分から直ちに、甲が基点から10メートルの地点でVを刺したという事実を認定しようとする場合、当該部分について、証拠能力が認められることはない。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:without lighting up in the restroom

got caught, cloud of smoke, thumb still on the light

出典:https://youtu.be/ktvJ2PiBgtQ?feature=shared

感想:アルクによると、cloud of smokeは、もうもうと立ち込める煙、という意味です。

乙:最決平成17年9月27日は

「 2 前記認定事実によれば,本件両書証は,捜査官が,被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして,これらの者に被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ,立証趣旨が「被害再現状況」,「犯行再現状況」とされていても,実質においては,再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるものと解される。【要旨】このような内容の実況見分調書や写真撮影報告書等の証拠能力については,刑訴法326条の同意が得られない場合には,同法321条3項所定の要件を満たす必要があることはもとより,再現者の供述の録取部分及び写真については,再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の,被告人である場合には同法322条1項所定の要件を満たす必要があるというべきである。もっとも,写真については,撮影,現像等の記録の過程が機械的操作によってなされることから前記各要件のうち再現者の署名押印は不要と解される。

本件両書証は,いずれも刑訴法321条3項所定の要件は満たしているものの,各再現者の供述録取部分については,いずれも再現者の署名押印を欠くため,その余の要件を検討するまでもなく証拠能力を有しない。また,本件写真撮影報告書中の写真は,記録上被告人が任意に犯行再現を行ったと認められるから,証拠能力を有するが,本件実況見分調書中の写真は,署名押印を除く刑訴法321条1項3号所定の要件を満たしていないから,証拠能力を有しない。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、正しいです。

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試刑事訴訟法第24問イです。

次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち(中略)

【事例】

甲及び乙は、共謀の上、令和5年12月8日午後11時頃、I市内のJ公園内において、Vに向け、拳銃で銃弾5発を発射したものの、いずれも命中しなかったために、同人を殺害するに至らなかったとしてI地方裁判所に起訴され、併合審理されることとなった。この審理において、V、甲の妻A、乙の知人であるB及びCに対する証人尋問が行われたところ、Vは、「甲は自分を銃撃する際、『①V、お前を殺してやる。』と叫んだ。銃撃の後、もう1人の犯人が甲に対し、『誰か来た。②甲、早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。(後略)

【記述】

イ.下線部②の発言は、要証事実を「犯行後、犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれていたこと」とした場合、伝聞証拠に当たらない。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:Southbound 90, past the locked up luxury store

出典:https://youtu.be/X9RXQcbzniA?feature=shared

感想:アルクによると、luxury storeは、高級店、という意味です。

乙:「下線部②の発言について、要証事実を『犯行後、犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれていたこと』とした場合、『甲、早く逃げるぞ。』との発言の存在自体が要証事実となり、当該発言の内容の真実性は問題とならない。」

伊藤塾『2024年予備試験全国公開短答模試解説刑事訴訟法』72頁

したがって、上記記述は、正しいです。

乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試刑事訴訟法第22問オです。

証人尋問に関する(中略)

オ.刑事訴訟規則に基づいて証人尋問に際し示された図面・書面は、公判調書に添付することができるが、それによって当該図面・書面が直ちに証拠となるわけではなく、これを証言内容と独立の証拠にするには、別途証拠として取り調べる必要がある。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:Text me when you land

Cuz I am all at sea without you

And falling off the map

出典:https://youtu.be/KAUiTXq9M-s?feature=shared

感想:アルクによると、fall off the mapは、姿を消す、などの意味です。

乙:刑事訴訟規則49条は

「調書には、書面、写真その他裁判所又は裁判官が適当と認めるものを引用し、訴訟記録に添附して、これを調書の一部とすることができる。」

と、規定しています。

最決平成25年2月26日は

「 第1審判決は,本件電子メールの存在及び記載内容を被告人乙の詐欺の故意や共犯者との間の共謀の認定の用に供した。

2 原判決は,上記第1審判決が本件電子メールを事実認定の用に供したことについて,①本件電子メールは証拠物と同視できる客観的証拠であること,②それを示された被告人乙がその同一性や真正な成立を確認していること,③本件電子メールを被告人乙に示すに当たり刑訴規則199条の10第2項の要請が満たされていたことを根拠として,本件電子メールは被告人乙の供述と一体になったとみることができるとし,訴訟手続の法令違反はないとした。

3 しかしながら,上記原判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 本件電子メールは,刑訴規則199条の10第1項及び199条の11第1項に基づいて被告人乙に示され,その後,同規則49条に基づいて公判調書中の被告人供述調書に添付されたものと解されるが,このような公判調書への書面の添付は,証拠の取調べとして行われるものではなく,これと同視することはできない。

したがって,公判調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない書面は,それが証拠能力を有するか否か,それを証人又は被告人に対して示して尋問又は質問をした手続が適法か否か,示された書面につき証人又は被告人がその同一性や真正な成立を確認したか否か,添付につき当事者から異議があったか否かにかかわらず,添付されたことをもって独立の証拠となり,あるいは当然に証言又は供述の一部となるものではないと解するのが相当である。

(2) 本件電子メールについては,原判決が指摘するとおり,その存在及び記載が記載内容の真実性と離れて証拠価値を有するものであること,被告人乙に対してこれを示して質問をした手続に違法はないこと,被告人乙が本件電子メールの同一性や真正な成立を確認したことは認められるが,これらのことから証拠として取り調べられていない本件電子メールが独立の証拠となり,あるいは被告人乙の供述の一部となるものではないというべきである。本件電子メールは,被告人乙の供述に引用された限度においてその内容が供述の一部となるにとどまる(最高裁平成21年(あ)第1125号同23年9月14日第一小法廷決定・刑集65巻6号949頁参照)。

したがって,上記の理由により本件電子メールが被告人乙の供述と一体となったとして,これを証拠として取り調べることなく事実認定の用に供することができるとした原判決には違法があるといわざるを得ない。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、正しいです。