人生は旅 (original) (raw)

外食をしなかった訳は

今回のウィーンとポーランドを巡る旅では、ほとんど外食をしなかった。誤解されるといけないので、言っておくが、私は決して、節約一辺倒の旅行者ではない。節約を優先して、楽しみを諦めるような考えは一切ない。なので、街角に行列があったら、好奇心を抑えきれず、「いったい何だろう?」と確かめずにはいられない性分である。それなのに、残念なことに、そんな光景には一度たりとも遭遇できなかった。外食は高いと頭ではわかってはいるが、折角外国に来たのだから、現地の美味しいものに舌鼓をうって、旅情を満喫したいという願望は常にあった。それなのに、その機会には出会わずじまいだ。

ウィーンに行くのはかれこれ15年ぶりだったが、今回は町の変貌ぶりに愕然とした。私が知っている当時のウィーンはカフェ文化が隆盛で、街のいたるところに飲食店が立ち並んでいた。テラス席が至る所にあり、どこに入ろうかと悩むくらい賑やかだった。今回そんなイメージが頭に焼き付いている私は、実際の街の殺風景さに衝撃を受けた。信じられないほど、店がなかった。要するに、飲食店は駅の構内や、大型のショッピングセンターに行かないと見つけられないのだ。このような光景は、私が生まれた町のそれに似ている。個人商店は淘汰され、大規模な店舗だけが生き残る弱肉強食の構図だ。

当時の私のポリシーは、目的の場所に行きつく途中に、何か面白い場所や物があったら、迷わず寄り道をすると言うものだった。今でも覚えているが、あのとき、私はウィーンの自然史博物館に行こうと急いでいた。なぜかというと、その日はウィーン最後の日で、しかも午後の3時だったからだ。急がないと、博物館を見学する時間が無くなってしまうと焦っていた。博物館の閉館時間は午後5時だった。ところが、途中で、あれは何だったのだろう、セルフのレストランか、あるいは土産物屋か、とにかく、なんだか良さそうな興味をそそられる何かが存在していた。そうなると、いてもたってもいられなくなり、寄り道をしたくなった。その瞬間、博物館に行こうという気は消え失せていた。一緒にいた友だちが、「ねえ、博物館はもういいの?」と驚いたような顔をした。私は即座に「いいの、だってこっちの方が面白そうだから」と答えた。私の気まぐれな好奇心は、博物館から、なんだか面白そうな対象に一気に飛び移った。それでいいのだ、と昔も今もそう思う。

それなのに、今回当時歩いたであろう道を改めて歩いてみても、目を奪われるよう何か、どころか店一件も見当たらない。これでは街歩きが全然楽しくない、いや、歩こうとさえ思わないないだろう。ウィーン中央駅についても、駅の周辺は暗い雰囲気で栄えているような気配は一切ない。これが本当にウィーン中央駅前なのだろうかと訝しく思えてきた。愕然とするが、自分の目の前にあるのは厳然たる現実で、受け入れがたいが受け入れるしかない。私が知っている昔のウィーンは何処かに消えてしまってもう無い。

当時はセルフのレストランの店先に人が並んでいるのを見かけて、入ったりもしたが、もちろん私の口には合わなかった。唯一気に入って通ったのは、ベジタリアンレストランでオーガニックの材料を使っていて、野菜が甘くて美味しかった。当時1ユーロ170円の時代に料金は25ユーロだった。野菜が中心の惣菜が何種類もあり、ビュッフェ形式で好きなものを好きなだけ食べられた。ピラフもあったし、パンも美味しかったので、お腹が苦しくなるまで食べに食べた。

それなのに今回はヘンリーという惣菜店しか行く店がなかった。いや、正確に言えば、パンが嫌なら、ここでは食べる物がない。お米を持って行かなかったら、どうなっていたかと想像するだけで、ゾッとする。街中で皆がしている食事はパンとコーヒーだが、それでも結構な値段になる。毎日お米を食べて居る私には、彼らの真似はできないし、絶対真似したくはない。

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クレカが使えない事態に陥る

ワルシャワではまたもや、公共交通機関の切符を買う際に”クレジットカードが使えない症候群”を発症した。昨年のパリで懲り懲りしたはずなのに、まさかワルシャワで小銭を求めて彷徨うとは思いもしなかった。私の中ではもう二度とポーランドには来ないと決めていたので、自分の手元にある現金を全部使い切ってしまいたかった。なので、飲食店やスーパー等でほとんどを使い切れるだろうと高を括っていた。だが、現実はそう甘くなかった。カフェで現金で払おうとすると、「悪いけど、お釣りがないの」と申しわけなさそうに言われてしまい、しかたなくクレジットカードを出すしかなかった。店員さんは私の現金で払いたいという要望を聞いてくれ、レジにあるお金を数え始めるのだが、どうしてもあとちょっとの小銭が足りないらしい。要するに、ここワルシャワでは電子マネーやカード払いが主流で、驚くほど現金を使う人が少ないのだ。う~ん、ここまでキャシュレス社会だとは、想像できなかった。

特筆すべきは、カフェやスーパーではカードで支払えるのに、どうして公共交通機関の券売機ではダメなのか理解に苦しむ。私は別に、現金でなくても構わないのだ。カードが使えれば問題ないと思うのだが、いかんせん、どうして券売機では通用しないのか。正直言って、ほとほと困り果てた。券売機にはVIZAやMASTERならOKと表示が出ているにも関わらず、カードを所定の場所に差し込んだところで、ランプが付くわけでもなく全く反応しない。やっぱりだめか、と頭を抱えて、小銭を求めて街中を奔走することになった。

そもそも、ワルシャワで観光する予定も何もなかった。私の頭の中では空港行きバスの乗り場がわかればいいとさえ思っていた。なので、ワルシャワで地下鉄やトラムなどの公共交通機関に乗るなんてことは頭の隅にもなかった。駅にほど近いホテルの近辺でのんびり過ごそうと思っていたら、周りにはほとんど店がなくて面食らった。要するに暇を持て余し、しようがないので、トラムにでも乗ってみるかというような不真面目な発想になった。トラムに乗れば、王宮に行けるらしいとの情報を入手した私は、折角ワルシャワまで来たのだから、旅の記念にしようと決めた。

だが、トラムの乗り場に行って、券売機と向かい合ったら、小銭がないと門前払いなのだとようやく気付いた。この時、確かに小銭は多少なりともあった。あるにはあったが、それは空港へ行く日のためにとっておきたかった。4.4ズローティ、日本円にすると、約160円が空港までのバスの料金だった。余談だが、ワルシャワ駅の有料トイレの料金も同じくらいの値段だから、いかにトイレが高いかわかる。これでは、誰だって、皆列に並ぶのを覚悟で駅のショッピングセンターの無料のトイレを利用するだろう。

ワルシャワではバスもトラムも地下鉄もすべて共通のチケットで乗れるので、買うのはどこでも構わない。ただし、場所によっては、カード専用だったりするので、そうななると、反対側や別の場所で小銭を使える券売機を探す羽目になる。正直言って、これほど乗り物の切符を買うのに苦労するなんてことは、日本ではありえない。お金を持っていても、紙幣では使い物にならないと思い知ることになる。あちらこちらを探し回って、ようやく10ズローティ(400円)紙幣が使える券売機を見つけたときは狂喜した。まさに”地獄に仏”だったが、手放しで喜んでもいられない。次は両替を何とかしなければならない。コンビニのような小さな食料品店を見つけて、お菓子を買ったら、小銭はできたが、おつりが20ズローティ紙幣2枚だった。20では使い物にならないので、厚かましいのを承知で、10ズローティにしてくれるよう頼んだ。すると、店員さんが嫌な顔一つせずに、すぐに10ズローティ紙幣2枚を差しだしてくれたのには感謝感激だった。そんな紆余曲折を経て、やっと私はトラムに乗ることができた。この経験は良くも悪くも絶対忘れられない思い出になった。

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従業員が席を指定してくる !?

昨日書いたワルシャワのホテル、ポロニアパレスについての続きを書きたい。昨日は肝心のことを言うのに、前置きが長くなって、自分なりに設けている制限時間を過ぎてしまった。なので、今日は真っ先にあの時私が味わった困惑について説明したい。普通、ホテルの朝食ルームで、直接、従業員に自分が座る席を指定されることはまずない。いや、私の経験上、そんなバカげたことはなかった。だが、このポロニアパレスでは信じられないことにそれがまかり通っていた。

朝食ルームの席は2人席と4人席があって、普通の感覚ではひとりなら、迷わず2人席を選ぶ。でも、私は窓際の席が好きなので、空いていれば、それが4人席であっても迷わず座る。それに、たいして食べられないので、朝食にかかる時間は30分もあれば済むから構わないでしょう、というのが私の道理だった。空いている開放感のある空気の中で外を眺めながら、朝食をゆっくり味わいたい。なので、朝一番に行くのが私なりの流儀だった。まあ、たまには団体客によって切なる願いが脅かされる場合があるが、それ以外はたいてい私の希望は満たされた。

だが、今回のポロニアパレスはどうやら違うようなのだ。このホテルでの最初の朝食の時は窓際の席を確保できて、朝早くから人々が行き交うのを眺めながら、ゆっくり朝食を楽しんだ。2日目も同じように窓際の席の方向に歩いて行こうとしたら、従業員が私の行く手を遮り、斜め前の方向にある2人席を指差すではないか。つまり、ここに座れと言いたいらしいが、あんな壁際の席は御免被ると、無視して相手にしなかった。そういえば、従業員の手には「reserve」と書いた紙が見えたが、あれは一体どういうつもりなのか。

二日目に朝食ルームに足を踏み入れた時、ある種の異変を感じて、仰天した。どういうことかというと、広くてゆったりとした朝食ルームなのにも関わらず、従業員がいるカウンターの前あたりにあるテーブルだけがやたら混みあっていた。他の場所はガラガラで、そこだけに人が集中していた。カウンターの中には4,5人の従業員がいて、見るからに暇そうだったが、彼らは客を見張っているに違いなかった。少なくとも私にはそう思えた。

自分たちが指定した席に私を座らせようとした従業員から逃げてきた私は、窓際の4人席に座ろうとした。だがそこには「reserve」の紙が置いてあったので、躊躇し、傍らにあった2人席に移った。隅に追いやられた感があったが、一転、そこからは高層ビルの科学大宮殿がよく見えた。予期せぬ幸運に、先ほどまでの不快感が一瞬にして消えた。外の景色を眺めながら、食事をしていると、一人の女性がやって来て、4人席に座った。その人は「reserve」と書かれた紙を隣の席にポイと放ると気にすることもなくコーヒーを飲んだ。

それを見ていた私は、従業員が飛んでくるのではないかと気が気でなかったが、誰も来なかった。なあ~んだ、と自分が馬鹿に思えた。あんなに大勢いるのに、誰一人として目の前で食べている客にしか興味がないようだ。つまり、ここの朝食ルームの従業員はそれくらい動かなった。どこのホテルでも客を見張るという仕事はあると思うのだが、ここではできるだけ客を自分の監視下に置いておきたいようだった。

余談だが、私は今回紅茶に嵌ってしまった。紅茶は好きでも嫌いでもないが、普段は全く飲まない。それなのに、ホテルの部屋にあったティーバックの「クランベリーラズベリー茶」を試しに飲んでみたら、これが美味しかった。他のも試そうという野望を抱いた私は、朝食ルームの紅茶を貰って部屋で飲もうとした。だが、悲しいことに、紅茶が置いてある場所が、カウンターの真ん前で、従業員が見張っているので、無理だった。

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朝食ルームが感じ悪すぎる

そもそもこのホテル、ポロニアパレスに泊まることにしたのは、宿泊サイトの口コミに触発されたからだった。「ワルシャワでまた泊まるなら、迷わずここにします」との記述に大いに感激したからだった。そんなに気持ちにさせられるのなら、間違いないと少し高めの料金だったが、3泊の予約を入れた。その時は3泊で7万1千円だったが、納得して、まあこのくらいならいいか、と思っていた。それが旅行の半年前で、気にもしなかったが、ある日思いもよらないことが起った。それはフィンランド航空からの突然のメールで、ワルシャワからヘルシンキへの便が翌日に変更になったと知らせてきた。

そうなると、ホテルの予約の変更をしなければならない。まだ2カ月程時間があるので問題はなかったが、フライトの変更は初めての経験だったので少し慌てた。ワルシャワのホテル、ポロニアパレスの日にちを一日ずらして、再度予約しなおした。すると、驚いたことに、同じ3泊なのに、一万円ほど安くなった。はて、これはどうしたことなのか、まあ、安くなったからいいようなものの、これが逆に高くなったらどう考えればいいのか。最初の木曜日にチェックインして日曜日にチェックアウトする予定だと、7万円で、金曜日から月曜日の予定だと、何故か1万円安くなる。このからくりが私にはどうも理解しがたい。これまでの経験で、ホテルの料金は土日が入ると、高くなるというのは当然だと思っていたが、今回の事態には首を傾げるばかりだ。

さて、実際に行って、ワルシャワ駅を出て、ホテルを探す段になると、とても良い目印になるものを見つけて狂喜した。以前、駅前にある科学大宮殿は夜空にある北極星のように羅針盤になってくれる存在だと書いたが、そこにはウィーンで泊まったことのある「ノボテル」の文字が見えた。ノボテルは高層ホテルで、ガイドブックの地図で何度も見かけて、私が泊まる予定のポロニアパレスの近くにあるホテルだった。駅から10分も行かないところにあって、絶対迷うことがない立地にあるのが気に入ってもいた。それが、こんなにもすぐ私の行く方向を照らしてくれるなんて、感激だった。

ホテルの入口まで来ると、2,3人の人たちの中に入ろうとしていた。彼らに付いて行くと、中は広く、「パレス」にふさわしいゴージャスな装飾が施してある。ふと、モスクワで泊まった昔は超高級ホテルだったらしき場所を思い出した。そこは広すぎてどこがフロントだかすぐにはわからなかった。おそらくホテルの玄関にはベルボーイが立っていて、ホテルにやって来る客を待ち構えていたはずだ。客が部屋に行く際は、当然、荷物を持ってくれ、部屋まで案内してくれた。そんな時代もあったのだと、夢のようなことを考えてしまった。

もちろん今では客はカードキーを貰い、自分で荷物を持って部屋まで行くのが常識になった。コロナ以前と比べてはいけないのだが、どうしても不思議に思わずにはいられない。ボロニアパレスの部屋には、冷蔵庫も電動ポットもすべて揃っていた。何の不足もないが、ただ、今回泊まったホテルと比べると、テレビが小さすぎると感じてしまった。クラクフで泊まったプロホテルには、4Kの大きな画面のテレビがあった。正直言って、これまでいろんなホテルに泊まったが、あれだけのテレビに出会ったのは初めてだった。いや、別にテレビがどうのこうの言うつもりはないが、今気が付くと、どこも衛星放送が映るのだが、日本のアニメがやっていなかったのが不可解と言えば不可解だ。ロシアでも、韓国ドラマはもちろん、日本のアニメ、キャプテンつばさやドラゴンボールなどがやっていた。モロッコでさえもクレヨンしんちゃんを見たことがある。それなのに今回訪れたウィーンとポーランドでは全く日本のアニメは放送されていなかった。これは一体どういうことなのだろうか。

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後にも先にも見つけるのに苦労したバス停

ワルシャワの科学大宮殿にあるツーリストインフォメーションで地図を貰ったからと言って、安心してはいられなかった。地図と言っても、駅や歴史的建造物等の表示がある概略図にすぎないので、当然目の前にある状況にはあってはいない。地図上では確かにワルシャワ中央駅の目の前に175番のバス停があるように見えるが、実際はそんなに簡単ではない。要するに、バス停には各方面に行くバスが発着し、私が探している175番のバスはたくさんあるうちのひとつに過ぎなかった。また、日本と違って、外国のバス停は行きと帰りで乗り降りする場所が違っていることが多く、いつも反対側に自分が乗りたいバスがあるとは限らない。御多分に漏れず、ワルシャワのバス停もそうだった。

バス停を探すにあたって、インフォメーションで貰った地図上に、自分が今いる場所を当てはめてみるが、今一つわからない。高層ビルの科学大宮殿がそびえていて、わかりやすいはずなのに、自分が今いる場所がしっくりこない。自分がそのときどっちの方向いているいるかさえわからなかった。それというのも、一体全体どこからどこまでが駅なのかさえもわからないからで、ショッピングセンターも隣接はしているが、ガイドブックの地図とはえらく違っていた。

そうなると、方位磁石を持ってはいても、迷うのは必至で、気が付くと駅とは反対方向に彷徨っていた。ただ、その時大ぜいの人が高層の建物に入っていくのを見て、「ここはいったい何なのだろう?」と不思議に思った。頭を上げて見上げると、そこには「インターコンチネンタルホテル」と書かれていた。インフォメーションで貰った地図でその位置を確かめてみて初めて、自分が駅とは反対方向に来たのだと気付いた。すぐに引き返して、駅の方に戻ったが、今度は175番のバス停のある場所を探せなかった。近くまで来ながら、なぜ見つけられないのかというと、駅前は複雑な形状になっており、バス停と路面電車の乗り場が隣り合って存在していた。

今だから分かるが、バス停とバス停との間に路面電車が走っているので、当然反対方向のバス停は遠くて見えない。この状況が私のような異邦人を混乱させるのに十分だった。やっと空港からのバスが止まるバス停を見つけたのにも関わらず、肝心の空港へ行くバス停が見つからない。すぐに思いつくのは、こんな時は反対側に渡ればいいという考えだが、悲しいことに、駅前は道路を渡ることができないので、地下から行くしかない。階段を降りて、地下に潜って見たら、ちゃんとバス乗り場の表示があった。これがワルシャワでの第一日目だったが、その地下に降りる階段が一つではなく、他にもあってどこか別の場所の行ってしまったこともあった。

なので、バス停に迷わずちゃんと行ける練習が必要だった。本番の空港へ行く日に迷わないようにするために、毎日駅前の175番のバス停に行かないと不安だった。こう書くとなんだか頭がおかしいように思われるかも知れないが、私は真剣そのものだった。正直言って、これほど見つけるのに苦労したバス停は後にも先にもワルシャワだけだ。旅行準備中に、ワルシャワのツーリストインフォメーションにメールで175番のバス停の場所を問い合わせたことは既述した。返事がなしのつぶてだったと書いたが、現地に行って見て、この状況では無理もないなあと納得した。バス停の場所をどう書いたら、どう表現したらわかってもらえるかどうか、私だったら頭を悩ますことは必至だ。だが、こうも思う、つまりいつも見慣れた風景の中にいると、それが当たり前になり、旅行者がいかに困惑するかなどと言うことは頭の隅にも浮かばないのかもしれないと。

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空港に行くための必須事項だった

今回の旅行で、帰りの便をワルシャワにしたのには、それなりの理由があった。日本からフィンランド航空でヘルシンキに飛び、そこからウィーンに行った。そこまではクリムトの絵画を見るという目的のためだったが、帰りをどうしようかと考えたとき、ワルシャワを思いついた。というのも、アウシュビッツに行くというもう一つの長年の願いを叶えるためにポーランドクラクフに行かなければならなかったからだ。そうなると、必然的にワルシャワから帰るという選択肢しかなかった。正直に言うと、私は何もワルシャワに行きたかったわけでも何でもないが、そこから帰るのがどう考えてみても最善だった。

要するに、おまけのような形でワルシャワにいくことになったわけだが、一つ問題があった。それは空港駅のバス停の場所がガイドブックの地図に載っていないことだった。これまで行った都市のどの地図にも一応の場所くらいは表示があったにも関わらず、ワルシャワだけは載っていない。こうなると、頼りになるのはネットの情報で、検索してみると、「駅の隣りにあるショッピングセンターの横にあります」と出ていた。これを信じていいのかわからず、さらに検索してみたが、「行きも帰りの175番のバスを利用しました」とサラリと書いてあるだけだった。詳しいバス停の場所に関する情報はどこにもなかった。

これには正直焦った。できることなら、現地に行く前にある程度把握しておきたいのに、それさえ叶わない。あとは現地に行って何とかするしかないのかと途方に暮れた。でも、待てよ、観光都市には必ずインフォメーションがあることを思い出した。ガイドブックを見ると、ワルシャワにもツーリストのためのi (インフォメーション)が、科学宮殿の中にあることが分かった。早速、メールで問い合わせるが、数日たっても無しのつぶてで、諦めるしかなかった。出発間際のなっても返事は来なかった。後にその理由を現地に行って初めて知ることになるのだが。

なので、ワルシャワでの観光など一切頭になく、ただバス停を探すことしか考えられなかった。無理もない、一番大事な空港行きのバスの乗り場がどこにあるのかさえわからないのだから。ワルシャワ駅前にあるのはわかっているし、175番のバスだということも、空港までの料金もわかっている。だが、肝心の乗り場がどこかわからなくてはどうしようもない。ワルシャワのホテルにチェックインして、真っ先に向かった場所はツーリストインフォメーションだった。実際にはその場所さえ探すのに苦労した。なぜなら、科学宮殿は以前訪れたことのあるモスクワ大学を思わせるような高層の建物で、想像以上に広大だったからだ。まずツーリストインフォメーションの入口が分からず、建物の周りを何度もぐるぐる回って、やっと見つけたときは地獄で仏を見た気がした。

私が中に入っていくと、先客がいたので少し待った。係りの人は一人しかいなかったが、すぐにバス乗り場の場所を教えてもらえた。ただ、訪れたのが金曜日だったためか、バスよりも電車を勧められた。その訳は土曜と日曜はバスの本数が平日の半分に減ってしまうからだったが、私には列車という選択肢はなかった。それというのも異国の鉄道は異邦人にとっては未知の領域で分かりにくいことこの上ないからだ。できれば、バスで行きたいと希望を伝えると、「あなたがバスに乗るのはいつ?」と尋ねられた。私が空港に行くのは月曜日だったので、「月曜日」と答えると、「それなら問題ない」となって、バスの時刻表と街の地図をくれた。地図を広げると、バス停のある場所に赤ボールペンで、「バス停はここよ」とマークして私に教えてくれる。ここまでしてくれると、私にはもう何も言うことがなくて、不安は多少あったがお礼を言って引き下がるしかない。だが、このあと、いっこうにバス停が探せなかった。この続きは明日書くことにする。

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何だか雰囲気が暗いなあと思ったら

10月16日水曜日 8時45分 朝 クラクフのホテル ウイットホォシュにて

ガイドブックに書いてある通り、このホテルの朝食はその種類とバラエティに富んでいる。クロックムッシュもケーキ型に焼きあげたピザパンのようなものもどれも美味しかった。さらに、ピザパンに人気があったので、すぐになくなり、次の皿にはクリームチーズをサーモンで巻いてあるものが乗っていた。ええ!?スモークサーモンなんて、嘘みたい!スモークサーモンがとろける食感で、文句なく美味しい。もっと食べたかったが、悲しいことに私のお腹は小食モードときている。ホテル代が朝食込みだから、どうせたいしたことないだろう、と馬鹿にしていたら嬉しい驚きだった。

コーヒーマシンのカプチーノも苦くなくて飲めた。それにオレンジジュースも美味しかった。ただ、困ったのはコーヒーマシンの使い方がわからなかったことで、近くにいる人に聞いてみるが、上手くいかない。ボタンを押しても、いっこうにマシンが動かない。うんともすんとも言わないマシンを前にただじっと待っているしかなかった。そのうち、係の人が通り掛かり、やってもらうが、何故かその人がやると機械は言うことを聞く。なのに私がやるとダメなのだ。何が、どこがいけないのかさっぱりわからない。コーヒー2杯も飲まないから問題はないが、明日もまた挑戦してみよう。

この日記の中で、「カプチーノも苦くなくて飲めた」と書いてあるのは、今回泊まったホテルは総じて、どこも皆カフェラテ等のミルクコーヒーが苦くて、とても飲めた代物ではなかったことを如実に表している。ウィーンで泊まった3軒のホテルの中、ノボテルは朝食を断ったからわからないが、高級ホテルのはずのアンバサダーもカフェラテが苦すぎて飲めなかった。しかもここは朝食が20ユーロ以上したにもかかわらずだ。今回痛感したのは、朝食込みも朝食が有料でも、たいしてその中身は変わらないということだ。つまり、お高い有料の朝食に期待は禁物だということで、どこも経費節減に余念がない。例えば、パンに塗って食べるバターにしたって、パッケージにはちゃんと「バター」と表示してあるが、味はどう見てもマーガリンだった。こんなんで、「有料」を良いことにせこく節約をしているなんて、笑止千万だ。かくいう私の大いに期待してしまった輩で、どうしても、「朝食込み」と「朝食有料」の違いを見つけ出したくなるのが本音だ。だが、蓋を開けてみると、期待したほど、両者の違いはないというのが本当のところだ。となると、これからホテルを予約する際には、「朝食込み」を選択する方がリーズナブルと言えるだろう。また、口コミに惑わされて、高級ホテルを選択する際も過度な期待などせず、まずはどんなものが試してみて、満足できなかったら、翌日はパスすればいいだけだ。実際に、私はやたらこちらを窺う従業員の視線にも耐えられなかったし、朝食の内容にも不満だったので、翌日は朝食ルームに行かなかった。

10月16日の日記の続き。

このホテルについて、特筆すべきは他のホテルに比べて、朝食のテーブルに何のセッティングもないということ。つまり、テーブルクロス無し、ナイフとフォークの用意無しでナプキンさえ用意されていなかった。徹底的にすべての無駄を廃していたということ。少し考えてみれば誰にでもわかる。テーブルクロスがあったら、シミもできるだろうし、当然クリーニングが必要になる。でも、無ければ無いでいいし、そんなものだと思えば、誰も困らない。ある意味で、いつもの家庭のテーブルと何ら変わりない。正直言うと、最初私は、「あれ?何か変だ」と思ったことは確かだが、何が変なのかはその時はわからなかった。朝食を終えて、部屋に帰ってしばらく経ってから、「そう言えば・・・」とテーブルに何もなかったことに気が付いた。要するに、食事の内容で勝負なのだ。

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