アニメゴールデンカムイ第四十五話「共犯」 感想 (original) (raw)
OPなしで始まった第四期第九話「共犯」。
EDもない時間いっぱいの放送だったのにもかかわらず、いつにもましてあっという間でした。
「ゴールデンカムイって聞いたことあるけどアニメやってるのか・・・ちょっと観てみようかな?」なんて初めて触れたゴールデンカムイがこの回だったら一体どんな印象を持たれるのでしょう。
以下ネタバレ含みますのでたたみます。
インカラマッちゃんが自分の子を妊娠してると聞いて衝撃を受ける谷垣。
「何かしたんですか!」って何かしたのは谷垣なんですけど、網走で別れた時は生きるか死ぬかみたいな状態だったから、まさかそんなことになっているとはまぁ思わないですよね。
インカラマッちゃんと子どもを人質に取られたら、マタギの谷垣だって鶴見さんの言うことを聞かないわけにはいきません。
アシㇼパさんに「鶴見中尉は話の通じない人間じゃない」って言ってたけど、それは「鶴見さんが味方だった場合に限る」だったみたいです。
原作を読んでる時は「刺青を広げて暗号の答え合わせをしているのかな」なんて思ってましたが、どうやらこれははがした皮を焚火で乾かしているようですね。
これが平太師匠の皮かと思うとなんだか複雑な気持ちになりましたが、師匠とはいえ刺青の囚人。
平太師匠って小柄だったけど、人の皮ってはがすと結構大きいんですね。
いくら埋蔵金を探すという大義があったとしても、目先の利益に惑わされるのは人間の性。
このシーンの完成度がめちゃくちゃ高いのは、小林さんも伊藤さんもこの煩悩丸出しのふたりが大好きだからに違いない(妄想)。
ここは原作以上の表現と言っていいのではないでしょうか!
平太師匠の残した砂金から、刺青人皮集め以外の金塊へのアプローチ方法を模索する白石。
こんな風に物事を俯瞰で見れる白石って本当に頭がいい。
私は何度も読んで最近やっと「ああそういうこと・・・?」とぼんやり理解できてきた気がしてます。
支笏湖に沈んでいた砂金が平太師匠の煙草入れから見つかったことで、「埋蔵金が隠してある場所のアタリをつけることができる」「砂金がとれた川の近くに埋蔵金の隠し場所を知っているアイヌが住んでいる可能性がある」「支笏湖に沈んでいた砂金を見つけた海賊さん=刺青の囚人の居場所が予想できる」というようなことを白石は言っているのかなと思うんですが、違ってたらすみません。
ところでヴァシリはどこ行っちゃったんだろ。
寒いから中に入れてあげてほしいけど、この狭い空間に一緒にいれるほどはまだ打ち解けていないのかな?
満を持して房太郎登場。
こ、これは・・・声が良すぎる!!!
関さんテレビにもよく出てるし、声を聞く機会はこれまで何度もあったんですが、え、こんなにいい声だったっけ?
房太郎にぴったりではないですか!
伊藤さんが房太郎は関さんだろうという予想を当てたとおっしゃってましたが、この声をイメージしてたんだとしたらそりゃ房太郎は関さんしかありえないですね。
房太郎の息遣いから、すっごく寒そうな様子が伝わってきます。
平太師匠は砂金に詳しく鑑別もできるから支笏湖に同伴してるのでしょうが、脅されて無理やり連れてこられたって感じではない。
金で雇われた可能性もあるけど、平太師匠は自分で稼げるから嫌だったら断ることもできたはず。
なのにこうやって房太郎に手を貸すということは・・・そういう可能性もなきにしもあらずってこと?
そう考えるとこの房太郎のモラハラっぷりもプレイの一種に思えてくるから不思議。
危険を伴う素潜り、信頼がなかったら命綱は預けられません。
そういや房太郎は面白い男が好きって言ってましたね。
「ぷーん!」っていう平太師匠がかわいらしい。
石田さんの平太師匠、やっぱりいいですね。
房太郎は作画も気合が入ってます。
アニメ制作の予算はここに大量投入されたのかなぁ。
その予算、少しでいいから菊田さんにも分けてあげて。
門倉とイチャイチャ楽しそうだけど、キラウシはコタンに帰らなくて大丈夫なのかしら。
新八さんからたんまり報酬をもらって仕送りたくさんできているといいんだけど。
土方陣営に尾形が合流しました。
めちゃくちゃリラックスしとる。
バアチャン子の尾形は平均年齢が高い土方陣営が性に合ってるのではないでしょうか。
しばらく放浪してたみたいだから、暖かい場所でぬくぬくゴロゴロできて良かったですね。
連絡もないまま長期不在にしてたにもかかわらず、「戻ってきた」と言ってもらえ、旅の報告をすればこうやって全員揃って耳を傾けてくれる。
土方さんは尾形の能力も銃の腕前も評価してくれてるし、「蝦夷共和国の幹部」も私は悪くないと思うんですけどねぇ・・・。
土方さんに話しながら火鉢独り占めしてる尾形カワイイ。
尾形の2はやっぱり銃の形でした。
左撃ちだと弾を装填するレバー(?)使いにくそうですね。
当時も左利きの人は結構いたと思うんですけど、そういう人に配慮した銃は・・・今はわからないけどこの時代にはなかったかもなぁ。
私の左利きの友人は「自動改札がピッてしにくい」と言ってましたが、できないわけじゃないけどやりにくいって地味にストレスだと思います。
それでも文句を言わず、黙々と左撃ちの練習をする尾形。
きっとロシア語もこうやって人知れず学んだに違いない。
尾形の銃の腕前ってセンスもあっただろうけど、やっぱり努力の賜物なんですよね。
白鳥鍋のお話ないのかー。
尾形を含め、おじさんたちがワイワイやってるの見たかったなぁ。
アシㇼパさんがよくわかんない嘘つくのもかわいかったのに、残念。
道画劇場に期待します!
(ちなみに現在期間限定で配信中の道画劇場、鯉登さんの「月島も占って!」がキュートすぎて鬼リピしてます。)
連続殺人犯に殺される娼婦の描写、結構がっつりでしたね。
苦手な人もいるかもしれないけど、ここはちゃんと見せておいてくれた方がいいと思います。
じゃないと第五期の杉元が単なる乱暴者になっちゃいますからね!
第五期、ありますよね?
土方さんには常に敬意を払っている新八さんですが、新聞記者の石川啄木に対しては毒舌全開。
石川啄木・・・急に歴史上の人物が出てきてびっくりしました。
しかもご本人に似ているし。
石川啄木って私は学校で習った程度の知識しかないですが、きっと愛されキャラだったんだと思います。
新八さんの言葉のチョイスが独特で、これは現代だったらきっとご意見番として各メディアに引っ張りだこですね。
連続殺人が刺青の脱獄囚の仕業ではないかと疑う鶴見さん。
札幌に宇佐美を同行するように命令された菊田さんの、心底嫌そうな「はい」。
そして宇佐美は相変わらず失礼です。
菊田さんが宇佐美と行きたくないのはわかります。
でも宇佐美はなんで嫌なんでしょう。
菊田さんが口うるさいお母さんみたいだからかな。
「宇佐美はきっと札幌で役に立つ」。
後半はその言葉の意味がわかる宇佐美過去編です。
鶴見さんは宇佐美少年のことを「時重くん」と呼んでいましたが、今は「宇佐美」と呼んでいます。
部下なので当然なのですが、なんとなく「普段は名前呼びなのに付き合ってるのは内緒だからみんなの前では名字で呼び合うカップル」の気配を感じます。
上司と部下であると同時に「共犯」でもあるふたり。
そんなふたりのひみつの聖地に、稽古がない日もふらっと来てしまうという14歳の時重くん。
例え歩いて2時間かかったとしても「聖地」に通ってしまう気持ちはわかるんですけど、私が思う「聖地」と時重くんの「聖地」はちと違ったようです。
まだ幼さの残る12歳の時重くんは、仲の良い家族に囲まれて育った孝行息子。
親友と慕ってくれる友達もいる。
途中までは王道の少年漫画の展開だったからつい油断していたところに、突如登場する鬼の形相。
そうでした、私が観ていたのはゴールデンカムイでした。
本当は全然許せてなかった「許す」。
許すと自分に言い聞かせていた「うん」。
えらい剣幕に驚きつつも、すぐに時重くんのほしい言葉を言ってあげる鶴見さん、さすがです。
こんなんでごまかされちゃうなんてまだまだ子ども・・・とも考えられるけど、もしかしたら篤四郎さんを疑うなんて選択肢はそもそもないのかもしれません。
智春くんの喉を踏みつけて殺したのに、罪悪感の欠片もない。
それどころか死んだ智春くんを「それ」呼ばわりするわ、自分が一線を越えたのは篤四郎さんにも原因はあると言わんばかりの「共犯らいね」。
ドン引きしている鶴見さんとは対象的に、ふたりだけの秘密ができてなんだかとっても嬉しそう。
鶴見さんにこんな顔をさせられるのは後にも先にも宇佐美だけ。
この事件があったから宇佐美というモンスターが生まれたわけではなく、宇佐美は最初から宇佐美でした。
こんなヤベーやつ、ちょっと距離を取りたくなりそうなものなのに、自分の軍に必要な逸材だと判断した鶴見さんは、宇佐美を第七師団にスカウトします。
長男の時重くんが家の手伝いをしなくてはいけないのはわかっているけど、自分が「第七師団で待っている」と言えばどんな手段を使ってでも必ず入隊してくる。
鶴見さんが「愛です理論」を導き出すきっかけとなった宇佐美との出会い。
もちろん愛は一方通行では成り立ちません。
時間をかけて育てた部下たちを鶴見さんは愛していたと思います。
今他の鶴見チルドレンたちは鶴見さんに少なからず疑念を持ち始めていますが、宇佐美の鶴見さんへの愛は最後まで一切ブレませんでした。
罪悪感を持ち合わせていない宇佐美には、鶴見さんにそれを払しょくするほどの目的や大義があるかどうかなんて関係ない。
ただ自分が篤四郎さんの一番であればいい。
鶴見さんが「育てて作った兵士」ではなく「生まれながらにして兵士」だった宇佐美はやはり唯一無二の存在だったんだなと思います。
最初原作を読んだ時は「許す」と「うん」のインパクトの強さから「宇佐美ヤバい」としか思いませんでしたが、今は智春くんを許そうとしたけど許せなかった宇佐美の気持ちも理解できます。
時重視点で見たら、智春くんは時重くんと篤四郎さんの時間の邪魔しかしてませんでしたからね。
アニメ観ながら「智春今はやめとけ!」と何度も思いました。
松岡さんの狂気と愛に満ちた時重くん、すばらしかったです。
松岡さんの熱演により、宇佐美の異常性だけでなく、苦悩ややるせなさも伝わってきました。
そしてこの宇佐美の心の声の甘さったらなんですか。
「僕の童貞喪失」がこんなイケボで聞けるとは思わなかった。
理解不能なサイコパスだと思っていた宇佐美に体温を感じることができたのは、松岡さんのおかげです。
本物の新潟弁が聞けるのもアニメのありがたいところ。
新潟弁って文字で見たら大体の意味は伝わりますが、実際に聞くとずいぶん印象違いますね。
身近に新潟出身の人がいないので、イントネーションとか全然想像できてませんでした。
アニメを観て明確に違うなと思ったのは「馬」が「うんま」だったのと、「愛です」が「愛らんです」だったことですかね。
アニメ化にあたり、より実際の方言に近づけたのでしょうか。
ゴールデンカムイのこういうこだわり、素晴らしいと思います。
しかし大事な「愛らんです」の場面の宇佐美の顔・・・ちょっとマイルドすぎやしませんか?
ここの宇佐美はもうちょっととがっていても良かったと思います。
時重くんの聖地とは、篤四郎さんと初めて一線を越えた場所。
何度も来ては篤四郎さんとの秘め事をかみしめてうっとりしていたのでしょう。
鶴見さんは宇佐美ならシリアルキラーの手がかりを見つけられると札幌に行かせました。
宇佐美は連続殺人犯のことを「現場に戻り自慰行為をする変態」と評してましたが、宇佐美にそれが分かるのは、「自分がそうだから」という自覚があるからか、それが「一般的な変態のセオリー」だからか。
私には、宇佐美は自分が変態だとは思っていなさそうに見えます。
「罪悪感を感じない」というのは、行動と感情を切り離せるっていうことなのかもしれませんね。
宇佐美回、とにかく色々盛りだくさんでした。
過去回では常に場を支配していた鶴見さんが、宇佐美という制御不能の暴れ馬に手を焼く様子が見られるのもこの回の見どころのひとつだと思います。
想定外の行動に困惑しつつも巧みな手綱さばきで宇佐美を制した鶴見さん。
宇佐美を乗りこなせる鶴見さんって、やっぱりすごい人ですね。
今回感想を書くことで宇佐美への理解を少しは深めることができたのではないかと思いますが、なにせ相手は宇佐美ですから、正解に近づけたのか、そもそも正解があるのかすらわかりません。
とにかく謎多き宇佐美に向き合う良い機会にはなりました。
宇佐美探偵でさらに理解が深まるのか、それとも謎が深まるのか。
やっぱり宇佐美は私にとってまだまだ未知の存在です。
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