その「正義」は永遠か? 『いけないのファッション展』不確かな現代に問いかける (original) (raw)
『いけないのファッション展』アクセサリーミュージアム 12/17(土)まで
毒で光るガラス、人型のアクセサリー、生き物たちの毛皮。みんなみんな文化的でオシャレだった。 ──『いけないのファッション展』広告より引用──
祐天寺のアクセサリーミュージアムで12月17日まで開催されている『いけないのファッション展』に行ってきました*1。
こちらの美術館には以前から行ってみたかったのですが、機会がなく数年が過ぎ……今回ぐるっとパスの対象施設であること、そして企画展が興味深い内容だったことからやっと訪問が叶いました。
たいへん楽しかった!!!
長いファッションの歴史の中で、当時は好ましく思われていなかった素材やテーマのもの。
反対に、時間が経つことで好ましくないとわかったり、現代の価値観では賛否両論のもの。
それらを一堂に集めて、みんなで考えてみようという攻めた展覧会です。
嬉しいことに写真撮影も可能。
会期終了まであとわずかですが、展覧会の魅力を伝えたいので記事にしてみました。
それでは行きます!
住宅街のど真ん中! アクセサリーミュージアムまでの道
すこし道順がややこしいのですが、あちこちの電柱に案内が掲載されているので迷うことはないと思います*2。
オーナーさんの自宅を改装した落ち着いた佇まい*3。
アクセサリーミュージアムは「コスチュームジュエリー」を中心に展示する美術館です。
コスチュームジュエリーとは、貴金属や宝石など高価な材料を使った装身具(ジュエリー)とは異なり、流行を重視して素材を問わず作られた装身具のこと。
高いファッション性を誇ると同時に、後世には残りづらいという悩みも。そのような性質上、まとめて鑑賞できるこちらの美術館の存在は大きいと思います。
1階 時代を彩る装身具 ヴィクトリアンからアール・デコまで
スロープを上がり1階で受付。
1階部分はほとんどが常設展で、年代ごとにアクセサリーが並んでいます。
セルロイドのブローチ。加工が容易なため繊細な品が次々と生み出されましたが、寒さで硬化する・燃えやすいなどのデメリットで衰退しました。
こうやってマネキンが実際に身につけるとさらに素敵!
最初「すごく高価な、いわゆるジュエリーとは印象が違うな~」と見ていたんですが、こうしてファッショナブルなドレスと合わせるのはコスチュームジュエリーのほうが良いかも? と思うように。
流行の最先端をおさえられるのはもちろん、軽やかで仰々しくないんですよね。ごく一部の富裕層しかできなかったオシャレが大衆にも広がる時代にはぴったりだったのかもしれません。
木が化石化して生まれる漆黒の宝石「ジェット」。英ヴィクトリア女王が愛したことで有名で、礼装用ジュエリーとして用いられます。
2階 企画展『いけないのファッション展』
2階部分がまるまる企画展のスペースです。
鉛や水銀入りの白粉、それらの中毒でボロボロになった肌・歯を隠すための華麗な扇などなど……。日本でも時代小説を読んでいると該当するシーンがあったりしますね。
すごくすごく可愛いし欲しいんですが、現在では使用禁止の染料で染められたハンカチ。そのように聞くと、鮮やかな色合いがいっきに毒々しく思えてきます。安全な素材で復刻しないかなあ。
チェコの「サフィレットグラス」制作方法が公になっておらず、妖しい色はヒ素などの猛毒を使用しているのでは?ともっぱらの噂だったとか。そんなんガラス越しでも怖いじゃないですか……。
薬物取り締まりが緩かった時代、ドラッグの計量に使われたスプーン状のネックレス。実際に使用するよりも、ファッション的な意味合いが大きかったかもしれないとのこと。
そして、こちらが企画展のハイライト!
リアルファーをまとったマネキンが、ぐるりと一室を占拠する場面です。
圧巻でした。
学芸員さんと話す機会があり(後述します)、そのときにお聞きした話です。
毛皮のマネキン群の展示室と、他の部屋の室温設定はおなじなのに、なぜか寒さを感じるとの声が多数あったそうです。
よくわかる気がします。私が鑑賞したときも他の客がおらず、しんとした室内に入るのをしばらく躊躇いました。厳粛さと不気味さのちょうど中間。
私や学芸員さんの親世代にとって、毛皮は大事に扱い、身内に伝えていく一生ものの品だったはずです。
けれど現在では賛否の否が圧倒的に大きく、代替品であるフェイクファーにも分解しにくいなど問題が山積み。
このような未来を若い母は想像できたでしょうか。
地下 華やかな時代の薫り オートクチュール~アバンギャルドまで
地下の3分の1は『いけないのファッション展』です。そのほかは常設展。
人種差別的であると問題になり、販売中止になったサンダル。
ルリカワセミの小さな青い羽をカットし、ニカワではりつける点翠(てんすい)という技法。
ペーパードレス。丈夫な紙や不織布で作られており、自分でカットして丈を調節できるうえ安価と、大量消費社会に大歓迎されたそうです。
流行が長く続かなかった理由は耐久性への不安や風で大きく広がるところ、さらには「パーティーで男性にわざと水をかけられる」被害が多かったからと知り、正直うえぇぇ……となりました。よくそんな卑劣なことを思いつくなぁ。
ここから下の3点は常設展です。
(いまさらですが……そして閉幕も近くなってブログ記事あげといてなんですが……)この美術館めっっちゃくちゃに展示数が多いので、こまかく鑑賞したい場合お時間に余裕をもって訪問してくださいね!!
ミュージアムショップが楽しい! アトリエではアクセサリー教室の開催も
【企画展】
「いけないのファッション展」
2022年9月1日~12月17日#美術館 #アート #コスチュームジュエリー #アクセサリー #ファッション #展覧会 pic.twitter.com/PqQZrnwP8o— アクセサリーミュージアム @ 東京都目黒区 (@acce_museum) August 30, 2022
会期も残り少なくなってきた #いけないのファッション展 では、オシャレ割引として通常チケットの入館料を100円割引いたします。
過度の露出や危険物などは割引対象となりません。楽しくご参加いただくためホームページの注意事項をご確認ください。https://t.co/BKsq2iTOFR pic.twitter.com/PTCqPZO6O2— アクセサリーミュージアム @ 東京都目黒区 (@acce_museum) December 2, 2022
美術館の地下にはアトリエとミュージアムショップがあり、アクセサリー教室も定期的に開催されているそうです。館長さんがアクセサリーメーカー大手で長年活躍された方のため、海外輸出用に制作しためずらしいパーツも豊富とか。
手づくりがお好きなら展覧会帰りに掘り出し物をさがすのもいいですね!
最後に 学芸員さんとお話したこと
スタッフはみな気さくな方ばかりで、鑑賞後に展覧会の感想を少しお話できました*4。
なにが「正しい」か、そうでないかを明言せずに、鑑賞者に考えさせる姿勢が(押しつけがましくなくて)良かったと伝えるとたいへん喜んでいただけました。
テーマがテーマなので、美術館側も迷いつつ手探りでやっている状態だそうです。SNSで紹介されお客さんが増えたのが嬉しい反面、扱いの難しさを日々痛感しているとか。
若者の無軌道な行い=パワーでもあるため、すべてを咎めるのはどうだろうか。
キャンセルカルチャーとの関連性……など、自らの不勉強を実感しつつ色々話せて楽しかったです。
『いけないのファッション展』は12/17まで! 興味があれば行ってみてください~!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!