文の林 (original) (raw)

猛暑の夏ももう少しで終わるだろう。
暑くて床にごろんと横になっていた時、
ウチの奥さんが何やら持ってきて
俺の体にミストをかけてくれた。
熱中症の予防かね、ウチのやつも
俺の事心配してくれているかと思うと
ありがたかったね。
あとで、何をスプレーしたのかと
探してみたら、「生ごみ消臭スプレー」だった
ような気がするが、そんなことないよな。

酒はいいね。
特に夏の暑さが終わり秋に飲むのがいいな。
今が春なら、
寒い冬が終わり春に酒は似合うなと
言うと思うがネ。
今日一日が終わり、反省しないで飲む。
明日からの先のことなんて考えずに飲む。
酒を飲む理由は百ぐらいはあるだろう。
「百薬の長」なんて言われているからな。
面倒なことを言ったが
ただ単に今日も酒を飲みたいのよ。

缶ビール、350mlのやつだが、ジョッキーに
注ぎ込み泡がちょうどいいように出すのが
コツだ。
ジョッキーはいつも冷蔵庫に入れてあるので
ヒエヒエのビールを飲むことができる。
欠点は缶ビールをそのまま口をつけて
飲むより、早く飲んでしまうことだな。
焼酎は自分でコップに1/3くらい入れてから
満杯になるまで水やお湯を入れる。
日本酒はコップ、ちょうど１合入るやつを
用意して、そこに入れるだけ。
そうだよ。
書いてあるように、お酒の用意は俺がやる。
つまみとしてチーズや柿ピーまで俺がやる。
たまには冷蔵庫に入っているキャビアや
フォアグラを出してきて・・・・
なんて書いてみたいもんだがネ。
その間にウチの奥さんが手早く
料理したものを出してくる。
家でゆっくり飲むのはいいねえ。
自分の家だと言う安心感、
いつもの食卓テーブル、向かいにテレビ、
手の届くところに今日の新聞が置いてあり
小さな幸せを感じながら飲むことができる。
当然、お会計を気にすることもない。

家で何回か飲んでいるうちに
たまには外でも飲みたいなと思ってくる。
そうだそうだ行きつけの店のスージーから、
マリリンという可愛い子が入ったから
来てよねと電話が来ていたな。
安心感もいいけど、外で飲む刺激も
良いわな～。
待っていろよ、マリリンちゃん。

ケンタロウはお母さんに買い物を頼まれたら
お釣りはちょろまかさないでお母さんに戻す。
ケンタロウが５千円を出して買い物をしたとき、
店員から渡した以上のお釣りを受け取った
ことがある。
店員が１万円渡してもらったと思ったのだろう。
ケンタロウは「５千円出したんだけど」と
正直に言ったら、
店員は「あらあら損するところだった」と言って
「５千円返してね」と言ってきた。
５千円戻したけれど、そのままお店を出れば
良かったなと少し思った。
後でお店でお金を数えたら５千円足りないので
困ったと思う。
ケンタロウは、良いことをしたのだからと
うれしかった。

家族で街に行くとき、夏なので暖かいから
薄着でいいだろうと上着は着なかった。
徐々に天気が悪くなり風が強くなってきた。
お母さんが「そんな恰好で寒くないの」と
聞いてきた。
ケンタロウは「少し」と言った。
お店を見て回っていた時に、お母さんが
「これ、どう？」と聞いて来た。
秋に着るような風を通さない暖かそうな
上着だった。
ケンタロウが袖を通してみるとちょうど良い
サイズだった。
その服を買ってもらったら、お父さんが
「服を買ってもらいたくて、寒そうな格好で
きたのか」と聞いてきた。
「そんなことはない」と言ったが、
新しい服を買ってもらえてうれしかった。

ポイント活動を行うときは
パソコンのモニターに２画面出して、
ふたつのポイントサイトを交互に入力し
モニターの横においてあるテレビもチラチラ
見ながらマウスやキーボードをたたいている。
時短にもなるし、三つの事を同時に行うことで
とても脳活にも良さそうだからだ。

弊害が出てきた。
マウスを操作する右手首に痛みが。
キーボードの数字を連打しているわけでは
ないのに、腱鞘炎なのか？
右手首が痛いので、ポイ活の時間を短くして
２画面出さず、右手に負担をかけないように
ゆっくり入力するようにした。
ネットで調べて人間工学的に考えられた
エルゴノミクスマウスを買った。
右腕の肘から先を右に傾けたままマウスを
操作することができる。
いくぶんかは痛みは軽減される。
そうか、傾いたマウスでなく普通のマウスも
傾けて使えばいいのだと考えた。
今は20㎝四方の板（小さなまな板）を
腹の上に乗せてそこでマウスを操作している。
手を離すとマウスが滑り落ちる事があるが、
右手が腹をさするような形になっているので、
腕や肘、手首に負担はかかっていないようだ。
いつの間にか２画面表示してポイ活をしていた。

とっても地味なポイント活動。
手っ取り早く儲けようとＳＮＳで暗号資産へ
投資して詐欺られるより安全で良いだろうな。
時間に余裕のある老人にはうってつけだ。

ネットで毎日、ポイントを稼ぐことを
楽しみながら行っているが、
どうも、やらされているような感じがする。
そこに行えばポイントもらえるよと
サイトがささやいて私を呼ぶのだ。
私はそこに行かざるをえなくなる。
誘惑に負けて呼ばれた場所に行ったら、
私は数時間は逃れられなくなる。
老化防止、ボケ防止、新知識の習得、
キーボードとマウスを使うので指の運動、
前に出題された問題の記憶力の確認、
などなど有用だと言う理由を考えている。
日常に差し支えないようにと
早起きしてポイント活動を行う。
早起きするために早寝するので、
ゴールデンタイムのテレビは観なくなった。

長時間、このようにして入力していくと
頭がボヤ～としてきて、今、何をしていたんだ、
って言うときがある。
眼が画面を読んで、指が勝手にキーボードを
たたいたり、マウスをクリックしていたようだ。
脳がハッと気づいて、この次は何をするのか
わからないときがある。
これでも老化防止になるのかなぁ。
逆に老化しているのかもと感じられるときも
あるのだが。

ポイント活動を楽しみながら
行っていると書いてきた。
老化防止をしながら少しばかりの
お金儲けができるとも書いたのだが、
いことばかりでないようだ。

ネットでポイントを取得できるサイトに行く。
クイズで出される英単語、国旗、クロスワード、
将棋、難読漢字、三字熟語、ことわざなど。
アンケートにも答えていく。
クイズはポイントを獲得するために
正解を入力していく。
アンケートは居住地や性別、年齢は
誤魔化さないで入力するが
質問内容については適当なときもある。
質問文をしっかり読んで考えて
答えていくと時間がかかるので
一番上の項目にチェックを入れるか、
一番下のある「その他」にチェックを
入れるときもある。
「この質問は○○をチェックしてください」という
フェイントをかけられるときもあるので
ある程度は読んで答えているよ。
ポイント活動は、麻薬と同じようで
常習性があるようだ。
いつも同じポイントサイトに行く。
１日のノルマになっているようだ。

貯まったポイントをアマゾンギフトカードに
交換したとしても1ヶ月に1,000円くらいだ。
画面に表示されているメーカーとかが
お金を出していると思うのですが
家の椅子に座っていてお金がもらえるのは
とてもありがたいことです。
こんな得なことはないと思うかもしれませんが、
時給に換算すると１０円くらいだろうかな。
もっと割のいいサイトがあるかもしれないが
私は知らないのだ。

夏はクワガタが友達になる。
家の電灯にも飛んでくることがあるが、
近くに倉庫があり、そこに煌々と輝く
照明がついている。
ケンタロウのクワガタとりの
誰にも言っていない秘密の場所だ。

暗くなってから秘密の場所に行く。
いろんな虫が照明の周りを飛んでいる。
クワガタのメスはけっこう飛んでいるが、
アゴが大きくてかっこいいオスは少ない。
オスなら出来るだけ大きいのをとりたい。
一番多く飛んでいるのは蛾だ。
クワガタは不器用に飛んでいるので
他の昆虫と違ってわかりやす。
虫取り網でとるときもあるし
木の幹や地面を歩いているのを
手で捕まえるときもある。

捕まえてきたクワガタはフタ以外は透明な
プラスチックでできた虫かごに入れる。
下には土を入れ落ち葉をしいておく。
木の枝を何本もいれてあるので
クワガタは細い足で上手に登ってくる。

夜、虫かごをケンタロウが寝ている近くに
おいておくとザワザワとクワガタが
歩く音が聞こえてくる。
ケンタロウはオスの大きなクワガタの背中に
乗って大空を飛び回っている夢をみた。

食後に歯磨きしていても、
ベッドに横になる前に口を指さし
歯磨きしたかと聞いてくる

よろめく父をささえたら
ベッドの父に布団をかぶせたら
いつも「ありがとう」と言う

朝、何を食べたか覚えていないが
商売のお金の話をすると
金銭感覚はシビアだった

トイレの後に水分補給として
ポカリスエットを100ミリリットル
ゆっくり時間をかけて飲んでいた

痩せた体にポッコリ膨らんだお腹
両手でお腹をさすりながら
悪い病気でなければ良いがと言う

ベッドの枠とトイレの手すりに
ぶら下がっていたＳＯＳボタン
押されたら音が鳴り父宅に急行

起き上がれず歩けなくなっても
娘たちに迷惑かけたくなくて
最後までトイレに行こうとした

訪問看護の看護師さん
訪問入浴の業者の人達に
いつも明るく対応していた

子や孫、ひ孫が来ても
いつでも会うことが出来た
家で看取ることができ良かった

一週間前にも来ていた遠方の弟
亡くなる日の前の晩に来て
静かに息を止めた父を見送った

年末近くの誕生日を過ぎ
年が明ければ数え９４
あと二晩を越せられなかった