ミツマルクラフトの制作日誌 (original) (raw)

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ミツマルクラフトは、日本の伝統工芸である「表装」― 掛軸、巻物、屏風など ― の製作技法を、他のジャンルに応用した作品を制作するためのプロジェクトです。

和室や床の間のある住宅が珍しくなった現在、掛軸や屏風を一般的な家庭で鑑賞する機会はなかなかありません。表装に使われる材料、技法、意匠などを、手軽で身近なものに応用し、表装を知らない人にも見て、楽しんでもらえたら、という思いから始めました。

まだまだ試行錯誤の段階ですが、少しずつ作品の幅を広げ、技術と意匠の向上に努めていきたいと思います。

現在は主に御朱印帳を制作しています。シンプルなデザインを心がけていますので、御朱印のほか、御城印、護朱印、スタンプなどのコレクションにもお使いいただけます。

小さな印籠蓋(いんろうぶた)の桐箱に、表装用の緞子などを張り付けてみました。

箱の内側には金銀砂子の紙を、蓋の裏側には古代箔(古びて見えるように変色させた金箔)を張り付けました。

箱の底面には、屏風の裏地でよく使っていた深緑の布地を貼ってあります。

外側の緞子には、御朱印帳でも多用している筋(橙色の金襴)を入れました。立体なので、蓋をかぶせたときに筋の位置が合うように、裂地をカットする寸法を割り出すのが難しいです。

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スマホのカメラの性能があまりよくないので、写真を撮るたびに色合いが変わってしまいます。綺麗な商品画像が撮影できる一眼レフが欲しいです。

今回の掛軸はおかめの絵です。

おかめを描いた掛軸というのは、私の記憶ではあまり見たことがありません。画賛回の掛軸はおかめの絵です。

おかめを描いた画賛というのは、私の記憶ではあまり見たことがありません。絵だけの作品と比較して、画賛には珍しかったり、面白い画題が多いように思います。

こういった紙表装の場合、紙に塗られている顔料が劣化して本紙につくと、なかなか取れずに苦労することがあります。この作品は保存状態が比較的良好だったため、顔料が本紙についておらず、綺麗に洗うことができました。

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Before

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After

今回は富士山の掛軸です。

これも全体にシミがついた作品でしたが、紙本だったのでわりとあっさりシミが落ちました。

紙本だからといって、必ずしも汚れが落ちやすいというわけではありませんが、絹本に比べると落ちやすい傾向にあります。

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Before

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After

今回は楷書で読みやすい作品ですが、読めません。ひとつひとつの漢字はわかりますが、どのように読むのかはさっぱり……文字の意味から類推すると、「書道における心構え」的な内容でしょうか。

落款には「尋五 君香森島節子書」とありますので、尋常小学校5年生(現在の小学5年生)の女子が書いたということでしょう。昔の人は字が上手いと言われますが、小5でここまで書けるんですねぇ。

この作品は紙本だったため、洗浄ですっきり汚れが落ちました。

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Before

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After

今回も掛軸です。例によってほぼ読めません。落款の二文字目は「南洲」(西郷隆盛)の「洲」の字に似ているような気がしますが、実際のところよくわかりません。

この作品は絹本で、煙草のヤニか何かで相当変色していましたが、思いのほか綺麗に落ちました。絹本の汚れは落としにくいのですが、これは例外的にすっきり明るくなった作品でした。

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Before

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After

今回は鶏の絵。

この作品も洗いをしたらずいぶん綺麗になりました。

あまり白くなると、お客さんによっては「古い味わいがなくなってしまった」と怒られることがあるので、そのあたりは作業前に確認します。ただ、たいていのお客さんは白くなったほうが喜ばれます。

彩色された絵は、絵の具の種類によって落ちやすいものがあるため、事前にニカワなどで絵の具を定着させます。

昔の絵の彩色には、顔彩と呼ばれる岩絵の具(鉱物などを砕いて粉状にしたものを、ニカワで溶いた絵の具)が使われることが多いですが、古くなるとこのニカワ成分が劣化して、顔料が落ちやすくなります。

そのため、お湯で溶いたニカワを塗ることで、再び絵の具の定着力を高める、ということです。透明のアクリル系塗料を定着材として使うこともあります。

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Before

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After

今回は書です。

ほぼ読めません。

落款には大正丁巳(ひのとみ)とあるので、調べてみたら大正6年(1917年)でした。

仙樵は茶人の「田中仙樵」でしょうか。

長く表具の仕事をしていた割には、崩し字や作家に関しては不勉強で、詳しい情報を提供できなくてすみません。この世界、贋作も多いので、下手に詳しい情報を載せるとツッコミが怖い……ということにしておきましょう。

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Before

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After

元の表具が紙表具で、表面の顔料が本紙に移っています。洗いをしましたが、紙の繊維に入り込んだ顔料は取れませんでした。