心電図のおすすめ本と選び方|医学生・初期研修医向け (original) (raw)

心電図のおすすめ本と選び方

~**医学生・初期研修医**向け~

<目次>

今回は、主に**医学生初期研修医向けの心電図**の参考書の選び方とおススメについてです。心電図の本と言っても、各自の学習・必要度などによる状況に合わせて必要な本も変わってくると考えています。必要に合わせて学習等をしていく際の参考になる部分があると幸いです。

出版されているすべての心電図の本を読んだわけでもなければ、私の独断と偏見になります。私の考え方と合う部分があればお使いいただき、なければ早く切り上げていただき、時間を有効にお使いください。もしかすると、全科当直し始めた普段心電図に触れなかった先生にもお使いいただける部分もあるかもしれません。

心電図の本の選び方

心電図の本といっても、様々なタイプのものがあります。どのような心電図の本が欲しいのか(どのようなことについて学びたいのか)に合わせて、本などの教材を選んでいく必要があると思います。

まだ心電図であれば手が届きやすいものも多いですが、医学書は決して安くないのが現状です。ネットでの立ち読み等を含めて、実際に本で扱う程度の内容・レベルまで確認してもらいつつ、医学書選びの一助になれば幸いです。

心電図の本の選び方・おすすめ|医学生・初期研修医向け

心電図の本といっても、大きく2つに分けられると思います。こういう疾患・病態や不整脈ではこのような心電図がみられるということを、疾患ごとの切り口から解説してくれる本と、心電図の読み方、読み方における鑑別点・対応(マネジメント)という視点の本があります。

また、重要な部分をさらっと総ざらいするものから、完全版の辞書のようなものまであります。ご自身でどのような本を探しているのかを考えつつ、それに合う本を見つけてもらえればというように思います。

A-1からB-3までナンバリングしてあります。それぞれのところで各医学書ごとの特徴も紹介していますので、詳細はそちらへご移動願います。またスライドの都合上、本のタイトル等を一部省略して短くしています。

疾患・病態ごとに学びたい

心電図を学ぶ切り口が、各不整脈心筋梗塞の梗塞部位のような疾患・病態ごとの切り口から心電図を学ぶ本を紹介していきたいと思います。

A-1. 疾患・病態ごと>基本事項

心電図について何も学んだことがない程度の初学者や、大学の講義等では不整脈の心電図が理解できなかったというような人はここの**"A-1"**の本からスタートすると相性の良い方が多いでしょうか。

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主に不整脈ごとや部位別の心筋梗塞ごとに、心電図、病態、対応・治療などについてわかりやすくまとめられています。この本の特徴は、病態から心電図波形がほぼ完璧に推測できるもの、病態からある程度心電図波形が推測できるもの、病態からは心電図波形を推測するのが困難なものというように、覚えるもの考えるものを分けてくれたりと、心電図を読む前に知っておくべきことが特徴的で良い点だと思います。

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不整脈ごとや部位別の心筋梗塞ごとについて、心電図、病態説明、心電図を読むポイントといったものを中心にわかりやすくまとめられています。患者背景や症状、治療についても軽く触れてあります。不整脈や部位別の心筋梗塞ごとの分け方、メモリ付きの心電図は、大学の授業や教科書などから馴染みやすいと思います。

A-2. 疾患・病態ごと>辞書的

一度は心電図について学んだものの、何かあった際に調べたい/詳しく知りたいという時に便利な一冊というような本の紹介です。

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もはや名著感があります。この本の嬉しいところは12誘導心電図がちゃんと各病態等毎の心電図に掲載されていることでしょうか。辞書的に頼れるという点でこの本の安心感が何よりの特徴だと思います。

これで学び始めると、初学者にはまずはどこから学べばいいのか、というような悩みが生じてしまうかもしれません。はじめの掴みは"A-1"の本に任せて、困ったときの1冊としていかがでしょうか。2006年出版なので、治療等についてガイドライン準規のような場面では新しいものをチェックしたほうが良いかもしれません。

心電図を読みたい

不整脈心筋梗塞の梗塞部位で見られる心電図についてひと通り学んだものの、「心電図を渡されて読めるのか?/どのように読むのか?」というような点から、心電図診断ごとの緊急性や対応についても学びつつ、実臨床で使えるように実践していく/精度を上げていくための本の紹介になります。

B-1. 基本事項→実践橋渡し

まずは、心電図の読み方として実践に向けての橋渡しとなるような本の紹介です。

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胸痛/虚血編失神・動機/不整脈と2つあります。いずれも、各疾患の心電図の基本事項等を学んだあとに、実臨床への橋渡しとなるような本としておススメです。最初に年齢・性別に加え簡単な現病歴と心電図から始まり、各章ごとに学んでいきます。

例えば、ST上昇を見かけたらすぐに心筋梗塞ACSではなく、STEMIのミミックのような心電図も存在します。そのような鑑別大切になってくることや循環器内科医にコンサルする必要性があるのかというようなことを実践的に学ぶことができます。不整脈編でも読み方の原則や失神心電図の流れや対応まで学ぶことができます。

骨折ハンターでもお馴染みの増井先生の心電図の本です。コンセプトは似ており、心電図の読影から初期対応ぐらいまで学ぶことができます。

また、本ではなく動画で学びたいという方向けにケアネットTVの番組(Dr.増井の心電図ハンティング)もあります。こちらは心電図ハンターを動画化したもののようです。研修医の先生であれば、CareNetの株主優待も同時に考えても良いかもしれません。

carenetv.carenet.com

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心電図を読む際に、ここの異常は気になったけど、そこからどう鑑別していったら良いのか、というような疑問を感じることはありませんか。目次にもあるように、「P波の形・大きさが変」、「PQ(PR)の長さが変」、「Q波の幅・深さが変」、…、「STの形が変」、…というように10の切り口から心電図診断をしていきます。各テーマごとに鑑別チャートがあり、System 2(網羅的・体系的思考)のようにどこかの異常を引っ掛けたときからの心電図読影・鑑別に役立ちそうな切り口の珍しい本です。

心電図ハンターはST上昇で左脚ブロック、早期細分極のように、System 1によって(直感的に)ある程度絞られているのに対し、こちらは抜けが少なく網羅的に感じます。A-2のような、とりあえず心電図ハンター等で学んだあとに辞書的にというような立ち位置でいかがでしょうか。

B-2. 実践的心電図読む

心電図のみならず、実際のよくありそうな症例の情報量や流れに基づいてのトレーニングになります。主訴や現病歴、身体所見などからも鑑別結果を予想しながら(事前確率を考えながら)心電図読影をしてみたい人向けの本になります。

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かなり実践に近い心電図の問題だと思います。主訴別に心電図で鑑別の付きやすいものを中心に扱うというような流れです。症例は数行の現病歴に加え、既往歴、内服歴、身体所見等も書いてあるうえでの心電図診断でとても実践的な本です。

主訴も意識障害、失神、胸痛、呼吸困難、めまい(浮遊感)をはじめ、様々な主訴があります。解説もしっかりしており、例えば、左脚ブロックとSTEMIの話でSgarbossa criteriaに触れていたりします。

B-3. 心電図のみ中心読む

心電図読影ぐいぐい進めたい、心電図の読み方や鑑別点などの習ったもののをもっと使って心電図診断の精度高めたいというような人に向いている本の紹介です。

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第二章の心電図トレーニンが中心となる本です。年齢・性別に加え、1行程度のすごく簡単な現病歴と12誘導心電図から判読します。判読の10ステップに則り、心拍数、軸、移行帯、P、PQ、異常Q、QRS、ST、T、QTが全ての症例でチェック一覧となっているのが特徴的です。これらのチェックから心電図診断をするトレーニングになります。

第一章でも心電図の基本について軽く触れてありますが、心電図の基本そのものは著者の先生のYouTube(下記)を参考にしてみても良いかもしれません。「【心電図 読み方 ①】」などと下記のYouTubeチェンネルで検索してみてください。

www.youtube.com

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年齢・性別に加え、2行程度の現病歴から心電図を読む本。特徴としては解説に心エコーや冠動脈造影画像があったり、無症状時と有症状時の2つの心電図があったり、ただただ心電図だけでなく、ちょっと周辺まで学びにつながりやすいのが特徴的です。

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心電図のみを中心としたトレーニングであれば、心電図検定の本もあります。

年齢・性別に加え、1行程度の現病歴か健診目的程度の理由が書かれており、12誘導心電図をメインに心電図を読む形になります。健康診断(検診心電図)、ホルダー心電図のような救急外来では接しにくいような状況の心電図も多くなりますが、もっともっと心電図を読みたい人や心電図検定を受けてみたい人はいかがでしょうか。

あくまでも具体例として個人的に余白などからデザインの好きなものを一つだけ挙げておきます。

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最後に

自分の成長に必要なところから

心電図を全く学んだ記憶のない医学生・研修医の先生であれば、**"A-1"**でざっくりと各疾患や病態の心電図をざっと学び、そしてその次にB-1のような本で実践(実臨床)で使えるように、基本事項から実践に向けての橋渡しをしていくような感じになるかと思います。

一方で、すでに大学の講義などで各疾患・病態ごとの心電図は学んだことがあり、ある程度記憶にある方でしたら、”B-1”のような橋渡しの本からで良いと思います。心電図だけで読めるようになりたいのか、心電図+病歴・身体所見で攻めていくのかでもまた方向性は変わっていくと思います。

使えそうな部分や私の考え方と合いそうな部分があれば、試してもらえれば、ネットを含めて本を手に取ってもらえれば、目次等をチェックしていただければと思います。参考になる部分があれば幸いです。

あとがき ~記事のきっかけ~

今回の心電図おススメ本の記事はある出来事がきっかけでした。研修医向けの研修医病院合同勉強会の心電図レクチャーを一部拝見しました。原則参加のようでした。ハンドアウトや資料もなく1時間以上に渡って講義を行うものでした。原則参加でなければ、途中退出するなり、欠席なりもできるので問題は大きくないとは思うのですが、…。単発の1時間強の時間で完結できるようなものでもないと考えています。また、人によって必要とする内容やレベルも様々であると思います。

医学教育や総合診療・地域医療を謳う講座がバックにある勉強会でしたが、医学教育って何だろう、強制参加の教えたがりや一部の焼き増しのような一方向的な講演業の必要性ってなんだろう、と問題に感じたりしました。CareNetの動画があるものすらあります。

研修医の先生との話での素直な感想から、このような一方向的な講義を原則参加でやる意味を考えると疑問が生じました(社会性ある研修医の先生なので運営への感想は当たり障りなく答えたようです)。受講したい訳でも、タイミングよく学べるとかでなければ、早く帰れる日なら帰ってゆっくりしてほしいと思います。学びたいときに学べるように、対抗心のようなものからこの記事を書くに至りました。

今回の記事を書くにあたって、新たに存在を認識して確認し、紹介させていただいた心電図の本もありました。もちろん、すべての心電図関連の本を知っている訳でもなければ、個人的な考え方の違いもあります。合わなければ、無理せずに他の人のアドバイスを参考にしたりして、この記事を閉じて時間を有効活用してください。

本日もお読みくださいましてありがとうございました。

【関連記事】

今回の心電図の本の記事ように、方向性をもって医学書のおススメなどをまとめた記事になります。

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