Supertrampアルバム紹介 ex1:Roger Hodgson / In The Eye of The Storm (original) (raw)

1982年のアルバム ... Famous Last Words ... とそのコンサートツアーを最後に、Roger Hodgsonはバンドを脱退しました。この後、Hodgsonと彼が去った後のバンドは、オリジナルアルバムをそれぞれ数作発表しますが、ここからは両者の作品を順に追っていこうと思います。

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まずは、Roger Hodgsonが1984年にリリースしたソロアルバムから。実は1983年の春にはその時点でのアルバム収録予定曲の録音は終了していたらしいので、Supertrampのアルバム**... Famous Last Words ...**と並行して作業は行われていたようです。しかし、1983年のSupertrampによるコンサートツアー終了後、再度アルバム内容を見直し、当初予定した収録曲のうち2曲を残してレコーディングを行って完成したのがこのアルバム In The Eye of The Storm(邦題:愛なき嵐にむかって)です。

Supertramp在籍時にはギターとキーボード、バンド初期にはベースを担当していたHodgsonは、この自身のソロデビュー作ではドラムとフレットレスベース(一部の曲)と管楽器以外の楽器をすべて自分で演奏しています。その結果、Hodgsonの他のソロアルバムと比較してもプライベート感が濃く、自身のカラーを強く感じさせる力作となっています。

収録曲は全7曲、そのうち4曲は7分以上という長尺の曲となっているのも特徴ですが、曲調はどの曲もHodgsonならではの親しみやすいメロディがフィーチャ―されており、非常に聴きやすい印象です。私もこのアルバムがリリースされたときにはいち早く輸入盤レコードを購入して何度も聴いた記憶があります。もちろん今でもお気に入りのアルバムです。

Roger Hodgson / In The Eye Of The Storm

Side 1
1. Had A Dream (Sleeping With The Enemy)
2. In Jeopardy
3. Lovers In The Wind
4. Hooked On A Problem
Side 2
1. Give Me Love, Give Me Life
2. I'm Not Afraid
3. Only Because Of You

Had A Dream (Sleeping With The Enemy)
冒頭、アルバムのカバーアートから連想されるような不穏なSEから始まるのですが、そこから始まるピアノイントロがいかにもHodgsonらしい印象の曲。躍動感のあるサウンドと変化に富んだアレンジで、8分以上ある長さを感じさせないいい曲です。ちなみにこの曲と4曲目の「Hooked On A Problem」はSupertrampの大ヒットアルバム Breakfast In America 用としてHodgsonから提案したもののバンドメンバーから反対された曲らしいです。

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In Jeopardy
1曲目「Had A Dream」とこの「In Jeopardy」はシングルカットされ、ヴィデオクリップも制作されました。Supertrampでは寡黙なイメージがあったHodgsonもソロ作ということで、この曲のヴィデオクリップでは表情豊かなパフォーマンスをしています(ちょっと無理して頑張ってます感もありますが・・・)。この曲で特徴的なのはソロプレイも披露しているブラス音のシンセのサウンドで、ヴィデオをみるとヤマハDX7を演奏していることが分かります。アルバムのクレジットにもヤマハに謝辞が書かれているので、他の曲でもDX7を結構多用しているのかも知れません。

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Lovers In The Wind
アルバム中一番短い曲ですが、メランコリックで美しいメロディをもったバラード。彼の妻へ向けたラブソングとのことです。

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Hooked On A Problem
ピアノの3連のイントロが印象的な、これもHodgsonならではのポップソング。サックス演奏はセッションミュージシャンのScott Pageが担当しています。この人は1983年に行われたSupertrampのライブツアーにもサポートとして参加していました。

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ここまでがSide 1。全曲外れなしで流れも完璧じゃないかと思います。

Give Me Love, Give Me Life

ここからSide 2。7分以上の長尺曲が3曲並んでいます。1曲目の「Give Me Love, Give Me Life」は以前このブログで単独で紹介したことがあります。

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上記でも書いたように、3種類のメロディのヴァースがサビと繋がる構成となっていて、Hodgsonのメロディメーカーとしての実力が存分に反映されたポジティブな印象のある曲。個人的には本作中ベストの曲です。

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I'm Not Afraid
Hodgsonの曲では珍しいブルージーな香りがするメロディから始める曲。でも3分手前から曲調が一転してポップなサウンドに切り替わり、前向きなメッセージが歌われていきます。

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Only Because Of You
前の曲「I'm Not Afraid」からシームレスで繋がるこの曲は、壮大なラブバラード。ここでの「You」は身近な「あなた」ではなく、「神」を指しているようで、神々しいサウンドが展開されます。中間部で聴ける女性ヴォーカルのスキャットは、Supertrampのアルバム ... Famous Last Words ... の最後の曲「Don't Leave Me Now」でも起用されたカナダのシンガー Clair Diamentによるものです。

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Side 2の後半はスピリチュアルな雰囲気が濃くなっているので、ちょっと聴く人を選ぶような気もしますが、アルバム全体としては、当時のHodgson自身の音楽的才能を余すところなく詰め込んだ力作と言っていいと思います。

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