クエンティン・タランティーノ監督「レザボア・ドッグス」3823本目 (original) (raw)

タランティーノのドキュメンタリーを見たら、彼の監督作品を全部見直したくなりました。これは見たのが昔すぎて感想を書くのは初めてですね。

あのドキュメンタリーと、U-NEXTでイーライ・ロスが監督した「ヒストリー・オブ・ホラーズ」シリーズを見た後では、この作品が映画マニアが「昔見たあの映画のあのシーン、くっそ最高だったよな、もしかしてあれをもっと無茶苦茶にこうしたらもっと最高なんじゃないか?」というマニアの感覚まるだしで作ったものに見えてきます。多分実際そうなんじゃないだろうか。

私がこれを最初に見た数十年前は、人を縛り上げて拷問をしながら、優し気な音楽を流してステップを踏むとか、そういう場面に震え上がって、やりすぎだろ…こんなの面白がるなんて鬼畜か!…と思ったものでした。そこから一周回って、ホラーやバイオレンスの名作を山ほど見てから戻ってくると、タランティーノという人は、今までに自分が震え上がったり狂喜したりした作品への愛を踏まえて、自分が次に何を見たいか?を実現するために映画を作ってきたんだなということがわかります。

たとえば、冷酷無比でサディスティックな殺人者が、無声映画の時代に、濃すぎるメイクや撮影アングルのせいでちょっと面白い顔をしたところが逆に面白かったので、めちゃくちゃリラックスしたサディストという造形をしてみたくなる、のかもしれない。たとえばね。

渋い筋金入りのギャングたちが無駄死にして、最後に生き残るのは隠れていた最弱の「Mr.ピンク」(スティーブ・ブシェミ)だったり。

ティム・ロスの普通っぽくてあまり強くなさそうな感じを、どう転がすと意外で面白いか。瀕死のティム・ロスとハーヴェイ・カイテルの告白の場面が、シリアスなのにゾンビに見えたり。警察が乗り込んできて、次の場面が来る前にエンドロール、というこの見事な切り替え。

おもしろいわ、この映画。すごいわやっぱりタランティーノ。さすがだわ。そしてもう本気でこの映画を怖いと思えない、いろんなものを見てしまった自分は経験値を積んでよかったのか残念なのか。面白さが増したんだからいいか。

ギャングたちを色で呼ぶのにあたって、希望を言わせたら全員黒っていうからボスが決める、とかゴレンジャーシリーズか。(タランティーノはあの手の戦隊ものを知ってるんだろうか)

さて、引き続き制作順にどんどん見ますよ。

レザボア・ドッグス