REDWING COLUMN NO.114 オロラセットのベロ裏 (original) (raw)

REDWING COLUMN NO.114 オロラセットのベロ裏

毎年恒例10月12日はレッドウィングファンの方が設立した、レッドウィングの日ということで

普段は見えないベロ裏に注目するという、マニア向けレッドウィングネタにしてみた。

このベロに使われるパーツは、個人的には最も個性が現れる部分だと思っているところで

以前取り上げたブラッククロームに続き、今回はオロラセットまたはオロラセット・ポーテージ編。

※レッドウィング社の創業者チャールズ・ベックマンの本当の命日は10月21日。

レッドウィングの象徴とも言える、この赤茶色レザーのオロラセットとオロラセット・ポーテージ。

オロラセットは元々オレンジ色っぽい茶色をしていたのが、1990年頃から徐々に赤みが増して行き

1995年~96年頃にはほぼ真っ赤になり、そこで一旦レザーの色味と質感を見直して細分化され

日本で人気の高かった赤みの強いレザーは、オロラセット・ポーテージとして生まれ変わり現在に至る。

今回はこれらの最終オロラセットと、オロラセット・ポーテージの6足のベロ裏を見ていく。

先ずは90年代のオロラセット・ポーテージで一番多いと思われるパターンのベロ裏から見てみる。

色味が若干明るくなったりとかしているけど、これぐらいの毛足の長さがおそらく一般的な感じ。

近年に製造された個体では、表裏の色が揃っているものが少なくなっているように思う。

これは90年代の8875なので、右足の裏側には通称四角犬タグが縫い付けられている。

ちなみに8875の初期版の1996年後半に製造された個体は、このタグが表に付けられていたりする。

自分の所有するオロラセット・ポーテージの中では、一番紫っぽい99年製の8166のベロ裏。

先程の8875と比べると茶色っぽさがだいぶ無く、この時期は色の振れ幅がかなり大きい。

8166も同じく右足側には四角犬タグが縫い付けられ、両方とも毛足の長さが揃っている印象。

先程のタグ無し側の単体よりも濃く写り、肉眼で見た色味はこちらの方が近くなっていると思う。

次も同じく8166にはなるけど、タグの仕様が一つ前の半円犬タグ97年製の個体。

こちらはオロラセットの真っ赤な時期の色味に近く、ベロ裏の黒ずみは履き込みによるもの。

反対側は半円犬タグを縫い付けるステッチが見え、とても丁寧な仕事をしている印象を受ける。

毛足は長くないものの、肌触りがとても良くて、最初から足首にしっかりと馴染んでいた。

ここまでの三つは色味の違いがありつつも、質感や毛足の長さなどは大体揃っている様子。

ベロ裏の個体差や面白みがあるのは次からなので、この半円犬タグのステッチも注目しておきたい。

肉眼で見るともう少し赤みがあるんだけど、この875のベロ裏は他よりもだいぶ茶色っぽく

丸洗いなどで若干退色したのもあってか、オロラセット・ポーテージとは雰囲気が違っているように感じる。

そして反対側はこのように毛足がとても長く、正に90年代のラフアウトレザーという風合いで

タグを縫い付けたステッチがその長い毛に埋まっていて、分かりづらくなっているのが面白い。

一つのペアで毛足の長さがこうも違うのが、いかにもアメリカ製らしさを感じるところ。

左右でフィット感に違いは特にないけど、右側の方が足首周りの汗を吸ってくれそう。

続いてはこれまでと色味ががらりと変わって、ベージュ色をしている8175のベロ裏。

このタイプのレザーの場合、基本的にはベースとなる素材に茶色の物を使うことが多いけれど

現行の8875などでは灰色っぽい物が使われている個体も見られ、以前所有していた8166もそうだった。

右足側はタグが縫い付けられているけど、毛足の長さはそこまでではないのでステッチが良く見える。

このタグの形状がかまぼこっぽいことから、人によってはかまぼこタグと言ったりもするらしい。

ブラッククロームの茶ベロはもう少し馴染んで見えてはいたけど、こちらはかなりはっきりしていて

ベロとシャフトの縫い合わせは最初の方の工程なので、この着色作業もそうなると思われる。

現行モデルでもこういう色味のベロ裏は見掛けるけど、おそらくこの仕上げは省略されている。

ラストはオロラセットと単体で呼んでいた、ほぼ最後の時期に製造された877のベロ裏は

赤茶でもベージュでもなく、オレンジやピンクっぽい何とも不思議な色合いになっている。

タグの付く右足側の方が若干毛足が短くなっていて、淵を少し削ったような跡も見られる。

今回の6足の中では一番硬い質感の物が使われているので、ベロが立ってシャキッとしている。

ベロ裏の色は左右で近いものの、こうやって比較すると毛足の長さの違いは感じる。

日本だと左右揃えるのが当たり前のように思えるけど、これがある意味普通なのがレッドウィング。

先程の8175みたいにくっきりとしていないので、しっかりと見ないと着色した部分が分からない。

これだけ微妙な感じに仕上げるのならば、正直言ってやらなくても良いようにも思える。

今回取り上げた中で個人的に気に入っているのは、この二つのタイプのベロ裏。

左の毛足がやたらと長い875のタグ側と、右の何かのキャラクターにも見えてくるベージュの8175。

ベロ裏には色んなタイプがあることは漠然と気付いていたけど、いつからかここに注目し始めて

自分で言うのもなんだけど、ディテール系としては地味なネタでも結構広げられたように思う。

気温と湿度が落ち着くと着用だけでなく、油分の多いレザーのメンテナンスもいよいよというところで

毎年秋のレッドウィングの日を迎えると、本格的なブーツシーズンの始まりを実感する。

今も根本的な方法は変わっていないけれど、この875のメンテナンス記事はブログ開設初期なので

細かい作業や工程が増えていることもあり、5年半分のアップデートを兼ねて改めて記事にする予定。

折角なのでレッドウィングの日ならではの小ネタとして、何かを調べた時に翻訳したメモ書きをおまけ。

「1994年レッドウィングシューズがミズーリ州ケンタッキー州の工場を買収。

ケンタッキー州の工場は2012年に閉鎖され、ミズーリ州の工場は拡張されます。」

かつてケンタッキー州にあった工場は第八工場として知られていて、そこで製造された個体は

その証として第八工場=P8の刻印が入り、1990年代~2000年代半ば頃に日本で特に人気の高かった

定番的なモデルは、レッドウィング社の伝統的な第一工場=P1と合わせて多く作られていた。

おそらく1994年の途中からブーツに入る刻印が変わったのは、製造拠点の増加も要因として考えられ

そして現在ミズーリ州には子会社のタンナーがあるようなので、もう片方はその関連なのかもしれない。