見どころ満載の「大吉原展」は江戸風俗・文化を学ぶ機会(東京藝術大学大学美術館) (original) (raw)

ゴールデンウィークの美術館巡り第2弾は、上野で開催されている展覧会をハシゴする。一つはトーハクの特別展「法然と極楽浄土」、もう一つは東京藝術大学大学美術館の「大吉原展」である。いわば、聖と俗。対照的なテーマの展覧会が、奇しくも上野で行われていることになる。

daiyoshiwara2024.jp tsumugu.yomiuri.co.jp

連休中の上野公園は駐車場が満車になる心配があるので、電車で上野に向かう。上野駅構内で「浅草今半」の弁当を購入、日陰のベンチで早めのランチを済ませる。

まずは「俗」。江戸時代の一大文化、吉原である。展覧会の Web サイトから概要を引用する:

江戸の吉原は、約250年続いた幕府公認の遊廓でした。遊廓は、前借金の返済にしばられ自由意志でやめることのできない遊女たちの犠牲の上に成り立っていた、現在では許されない、二度とこの世に出現してはならない制度です。 一方で、江戸時代における吉原は、文芸やファッションなど流行発信の最先端でもありました。

3月にだけ桜を植えて花見を楽しむ仲之町の桜や、遊女の供養に細工を凝らした盆燈籠(ぼんとうろう)を飾る7月の玉菊燈籠、吉原芸者が屋外で芸を披露する8月の俄(にわか)など、季節ごとに町をあげて催事を行い、贅沢に非日常が演出され仕掛けられた虚構の世界。そこでは、書や和歌俳諧、着物や諸道具の工芸、書籍の出版、舞踊、音曲、生け花、茶の湯などが盛んでした。そうした吉原の様子は多くの浮世絵師たちによって描かれ、蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)らの出版人、大田南畝(おおた なんぽ)ら文化人たちが吉原を舞台に活躍しました。また、年中行事は江戸庶民に親しまれ、地方から江戸見物に来た人々も吉原を訪れました。

本展に、吉原の制度を容認する意図はありません。国内外から吉原に関する美術作品を集め、その一つひとつを丁寧に検証しつつ、江戸時代の吉原の美術と文化を再考する機会として開催します。展示は、ワズワース・アテネウム美術館や大英博物館からの里帰り作品を含む、菱川師宣(ひしかわ もろのぶ)、英一蝶(はなぶさ いっちょう)、喜多川歌麿(きたがわ うたまろ)、鳥文斎栄之(ちょうぶんさい えいし)、葛飾北斎(かつしか ほくさい)、歌川広重(うたがわ ひろしげ)、酒井抱一(さかい ほういつ)らの絵画や錦絵、修復後初公開となる高橋由一の油絵《花魁》(重要文化財)などに工芸品を加えた約230点による構成です。現代美術家福田美蘭さんによる描きおろし作品《大吉原展》も出品されます。

www.youtube.com

展覧会は三部構成になっている:

  1. 入門編として、吉原の文化、しきたり、生活、四季などを、厳選した浮世絵作品や映像を交えてわかりやすく解説
  2. 風俗画や美人画を中心に、吉原約250 年の歴史をたどる
  3. 展示室全体で吉原の五丁町を演出
    • 浮世絵を中心に工芸品や模型も交えてテーマごとに作品を展示
    • 吉原独自の年中行事をめぐりながら、遊女のファッション、芸者たちの芸能活動などを知る

正直、見どころ満載、見応え十分の展覧会であった。2時間でも足りないくらいである。

特に浮世絵を含む絵画について、興味深い学びがあった。

たとえば浮世絵の黄金時代を築いた版元の蔦屋重三郎は、吉原に生まれ育っている。蔦屋重三郎のもとで、喜多川歌麿は吉原の遊女を描き、世に届け、「青楼の画家」と呼ばれるようになる。

琳派の一人と位置づけられる酒井抱一は、花魁を身請けして妻にしている。その妻、小鸞と吉原の近くに住まいを構え、抱一の絵に小鸞が書や漢詩を加えるなどの合作も行なっている。

人形師・辻村寿三郎、檜細工師・三浦宏、江戸小物細工師・服部一郎による《江戸風俗人形》(昭和58年)は、発表当時《吉原》と題されていたように、文化・文政(1804 - 1830 年)頃の大見世をテーマに作られている。

「大吉原展」は、江戸風俗・文化を紐解く貴重な機会であった。

すっかり疲れたので、美術館のカフェで甘いものを摂取して、次は「聖」。トーハクの特別展「法然と極楽浄土」に向かう。