Masaki Komori | Musashi University (original) (raw)
Papers by Masaki Komori
立教アメリカンスタディーズ, 2024
本稿は、現代アメリカにおける社会運動の空間について考えるものであ る。近年のソーシャルメディア(SNS)やスマートフォンの急速な普及は、 デジタル技術を利用したコミュニケーションを促進させた。と... more 本稿は、現代アメリカにおける社会運動の空間について考えるものであ
る。近年のソーシャルメディア(SNS)やスマートフォンの急速な普及は、
デジタル技術を利用したコミュニケーションを促進させた。とりわけ新型コ
ロナウイルスによるパンデミックはこうしたデジタル・コミュニケーション
をいっそう加速させ、アメリカ合衆国においては、もはや一部の人々のもの
とは言い難いほどの普及をみせた。デジタル・コミュニケーションの持
つインフラストラクチャー的性格がいっそう強まったとするならば、人々が
暮らす〈現場=フィールド〉には質的な変容も起こったと見なすことができ
るだろう。さらに現場のデジタル的な変容は、フィールドワークに基づく研
究の条件についても再考を促すものでもある。つまり、デジタル人文学の
知見がいっそう要請される事態が訪れている。本研究は、こうしたデジタル
化をめぐる近年の状況を理解し、とりわけ2020 年のパンデミック後の変化
について記録に留めることを目指すものである。
人文学会雑誌, 2024
フィラデルフィアにある医学博物館ムター博物館で昨年起こった炎上騒動を時事的に記録する意図も込め取り上げています。脱植民地主義を旗印に人体コレクションの扱いなどについて倫理面で同館が実施した改革は... more フィラデルフィアにある医学博物館ムター博物館で昨年起こった炎上騒動を時事的に記録する意図も込め取り上げています。脱植民地主義を旗印に人体コレクションの扱いなどについて倫理面で同館が実施した改革は、スタッフやファンなど旧体制の支持者からは「キャンセルカルチャー」などと批判されて全米規模で報じられるほどの大きな騒ぎへと発展しました。
この一件はジャーナリズムでは「意識高い系改革派VS現状維持派」などと説明がなされてきたのですが、実はこの現象は、長らく続いてきたミュージアムや人文学、ひいては社会全体の「倫理」変化の歴史のなかにおいて見たほうが適切に理解できるのではないかと問題提起しています。
博論研究の頃から追いかけている同館は定点観測を続けている調査事例でもあり、また、過去に住んだ街のなかでも最も思い入れが深いフィラデルフィアの問題としても捉えられるもので、色々と「自分ごと」感がある話ということもあって力が入れて書きました。
『広告』, 2023
記事は、大英博物館に収集展示されるギリシャ大理石彫刻など文化財所有権をめぐる問題、ニューヨーク自然史博物館のルーズベルト像がはらむ人種主義、収集された先住民の遺骨返還などを扱ったものです。「ミュ... more 記事は、大英博物館に収集展示されるギリシャ大理石彫刻など文化財所有権をめぐる問題、ニューヨーク自然史博物館のルーズベルト像がはらむ人種主義、収集された先住民の遺骨返還などを扱ったものです。「ミュージアムは近代主義と植民地主義の暴力装置だ」という視座の紹介からはじめて、ミュージアムが植民地主義の歴史と現在にいかに向き合っているのか、今後どうしていくべきなのかについて論じました。
https://phoiming.hatenadiary.org/entry/2023/04/05/004621
博物館研究, 2021
コロナ禍におけるミュージアムの変容について、デジタル化に焦点を当てて論じたもので、2017年に発表した論文に続くデジタル・ミュージアム論です。掲載誌は昭和初期から続く公益財団法人日本博物館協会か... more コロナ禍におけるミュージアムの変容について、デジタル化に焦点を当てて論じたもので、2017年に発表した論文に続くデジタル・ミュージアム論です。掲載誌は昭和初期から続く公益財団法人日本博物館協会から刊行されているものです。主に学芸員などミュージアムの現場で活躍されている方々に読んでいただけるのではないかと期待しております。
『博物館研究』vol.56 no.9 (no.640)、2021年9月、19-23。
Field+ : フィールドプラス : 世界を感応する雑誌 , Jul 10, 2019
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 編『Field+ : フィールドプラス : 世界を感応する雑誌 』
arts/ (民族藝術学会誌), 2021
This paper examines the history of the ars medica collections and exhibitions at Mütter Museum in... more This paper examines the history of the ars medica collections and exhibitions at Mütter Museum in Philadelphia, Pennsylvania, the first medical museum in the United States. As the museum transformed from a research institute to an educational facility, medical art projects have been not only an effective way to make the museum's medical collections more accessible but also obstacles that have led to criticism of the museum's treatment of collections, such as publicly displaying human remains as artworks and utilizing specimens as commercial resources. The paper clarifies that museums could broaden the concept of art by building and exhibiting their collections and also make a significant role in establishing social norms and ethics in society.
Rikkyo American Studies, 2018
『立教アメリカンスタディーズ』(立教大学アメリカ研究所)の「デジタル史学」特集への寄稿。デジタルミュージアムの最近の動向について(欧米で呼ばれる「ヴァーチャルミュージアム」と同じもの)、なかでも... more 『立教アメリカンスタディーズ』(立教大学アメリカ研究所)の「デジタル史学」特集への寄稿。デジタルミュージアムの最近の動向について(欧米で呼ばれる「ヴァーチャルミュージアム」と同じもの)、なかでも2000年代以降のインターネット時代のデジタルミュージアムの試みを紹介しながら、情報のデジタル化から生まれたミュージアム、あるいはミュージアム的実践が人文学研究に何をもたらす可能性があるのかについても考察している。
The Journal of American and Canadian Studies, 2017
本研究は、 全米初の医学博物館ムター博物館の歴史をひもとき、博物館及び科学の公共的な役割を考察するものである。1858年、アメリカ合衆国フィラデルフィアに創設され現在も続く本博物館の目的は、設立... more 本研究は、 全米初の医学博物館ムター博物館の歴史をひもとき、博物館及び科学の公共的な役割を考察するものである。1858年、アメリカ合衆国フィラデルフィアに創設され現在も続く本博物館の目的は、設立当初に掲げられたものから大きく変容を遂げた。即ち、医学知の前進を目指す専門家が標本などの医学資料を共有する基盤組織から、広く「アメリカ人」一般に向けた啓蒙的な医学教育施設への転換である。これに貢献したのが、間接的には、モノを主体とした病理学的な医学理論からの脱却であり、公共性という博物館の持つ理念であった。そして直接的には、母体組織の経営改革と、1976年のアメリカ建国二百年祭を受けた博物館の観光地化であった。小論は博物館の制度改革の過程を議事録や展示記録から検証することで、人体の展示を例に、科学・博物館の公共性と娯楽性の相剋の在りようを探った。
ムゼイオン Museion, 2017
ミュージアム研究の「展示の政治学(ミュージアムの政治学)」理論についての総覧。 科学や芸術を公に展示するミュージアムという施設にはさまざまな権力構造が絡まりあい、それらの結果として「文化」... more ミュージアム研究の「展示の政治学(ミュージアムの政治学)」理論についての総覧。
科学や芸術を公に展示するミュージアムという施設にはさまざまな権力構造が絡まりあい、それらの結果として「文化」や「科学」や「芸術」は社会に形を取っている。いかにすればこうした力学を的確にとらえられるのか。こうした観点からミュージアムを研究してきた「展示の政治学(またはミュージアムの政治学)」理論について、日英言語圏を中心に論じた。関心を共有しながらもいくつかの研究領域(discipline)で分けて語られてきた研究群を結びつけるために、次の三つの潮流に体系立てて学説史を整理した。第一に、1980 年代半ばから始まる、ポストモダン文化人類学の流れを受けたポスト植民地主義論的ミュージアム研究。第二に、近代主義思想に関する制度論的研究。第三に、メディア論やカルチュラル・スタディーズの影響下に生まれた、コミュニケーション論的ミュージアム研究である。
本稿を通じて以下のことを明らかにした。第一、第二の議論では、「展示」とは意味を生成するメディアであり、そこには複数の意味が重なっていることが強調された。そして、この理解は研究・現場の双方で強く意識されるようになった。さらに第三の潮流に至り、来館者による展示解釈が、新たな調査対象として前景化する。このことで、対立・協調の過程から生じる展示がもつ意味の重層性について、来館者の観点からも理解すべきとする共通の課題が確認され始めることになった。すなわち、現在の展示の政治学は、受容理論を取り入れることで、論争的な課題を抱える歴史認識論・記憶論の議論を牽引するものになっていると結論づけた。
日本語圏と欧米言語圏の研究相互の関わり合い(や関わり合いのなさ)について日本語で整理することで、ミュージアムや展示について研究する基礎資料としての利用を想定している。
This paper is a historiographic review of the museum studies theory called “politics of display/politics of museum.” It explores the history of museum studies from the standpoint of museum politics: “museum” as a site for power politics and the social dynamics of the relevant actors associated with museums and exhibitions: curators, exhibition designers, educators, museum staff, museum committees, and visitors. This theory considers modern conceptions of “culture,” “science,” and “art” as social constructs emerging from these political processes.
To shape this historiography derived from scholarly works mainly in English and Japanese, this paper narrates these discussions in three roughly chronological currents: 1) the trend of post-colonial museum studies and postmodern anthropology since the 1980s; 2) the tendencies of institutional analyses in the critique of modernism; 3) the tide of communication studies in museum fields, which was strongly influenced by cultural studies and media studies.
In the first and second trends, museums and displays became considered as political sites and complex assemblages that constitute a web of meaning. Throughout these trends, this understanding of how to interpret museums was common in both practical and theoretical fields. As the third stage goes, communication studies focused on the receptive aspect and museum theory focused on the visitor’s experience in the meaning-making process. As a result, it is nearly inevitable for museum scholars to discuss museum politics without mentioning receptions at museums. Through analyzing these three movements, this paper uncovers the historical path of increased significance on reception theory in recent museum politics.
『都市計画』日本都市計画学会、第62巻第4号、pp.47-50、2013年。, 2013
This paper analyzes the development and diffusion of a series of the art projects,“Oshokuji, orig... more This paper analyzes the development and diffusion of a series of the art projects,“Oshokuji, originally created by Miyake Kotaro. By exploring the art history of collaboration with local communities and regional development plans, this paper points out that utilizing art in community development often causes problems, including conflicts between artists and non-art experts, as well as benefits. As a key for solving the problems, this paper suggests an importance of understanding of the dual aspects, “problem finding" and “problem resolution," of art-making practices within the local community. Primarily, Miyake created the first Oshokuji as a problem finding system. As a consequent result, miscellaneous local voluntary activities used the system as problem resolution projects for local communities.
『展示学』『展示学』日本展示学会、第54号、pp.62-71、2017年2月。, 2017
全米初の医学博物館ムター博物館におけるアルスメディカ(医療芸術)の展示事業を事例として、ミュージアムがモノの意味をいかに変容させるのかについて報告した。当地フィラデルフィアの観光都市計画やナショ... more 全米初の医学博物館ムター博物館におけるアルスメディカ(医療芸術)の展示事業を事例として、ミュージアムがモノの意味をいかに変容させるのかについて報告した。当地フィラデルフィアの観光都市計画やナショナルアイデンティティ、及び、経営学的博物館運営等が絡み合い、その結果、献体や人骨は「アルスメディカ」として語られ、収集・展示されてきた。本論文では、ミュージアムを通じて医学資料が「芸術」に成る過程として本事例を理解する視座を示した。
『博物館學雑誌』全日本博物館学会、第38巻第2号、pp.47-72、2013年。, 2013
This paper analyzes creation museums that explain the biblical creation story as an authoritative... more This paper analyzes creation museums that explain the biblical creation story as an authoritative “scientific fact,” a certain type of museum that has become popular since the 1980s in the United States. Based on the perspectives gained from museum studies and from my analysis of exhibits during my fieldworks in August 2010 and January 2011 at the Creation Museum (2007-) in Petersburg, Kentucky, I argue that the museum problematizes the concept of “science museum” through its identity politics of scientific knowledge.
In the context of creation-evolution controversy since the 19th century, creationists after the 1970s have emphasized the validity of creationism by using scientific explanations, or so-called “creation science.” However, evolutionists have harshly criticized it and have argued that the controversy does not serve as a ground for “scientific debate.” Meanwhile, creationists have taken another strategy for justifying the creation science. With the change in the role of museum education particularly since the 1980s, scientifically authorized objects at exhibitions often have been replaced by replicas of authorized objects or audio-visual materials. As the visitors do not pay much attention to whether objects at science museums are scientifically authentic or not, the Creation Museum has come to use many scientifically unauthorized materials as their scientific “evidence.” From my analysis of its exhibitions, I demonstrate that this strategy enables the museum to succeed in avoiding the evolutionists’ counterarguments on the exhibited objects by appropriating traits of typical science museums.
[*An English version will be published soon.]
『出版研究』第42巻、日本出版学会、2012年3月、47-68頁。, 2012
This paper investigates the transformation of a concept of "Americanization" in Japan. From my an... more This paper investigates the transformation of a concept of "Americanization" in Japan. From my analysis of magazines' production, advertising business models' distribution, and readers' reception, this study reveals the role of these major and influential fashion magazines in the 1970s, including Takarajima and Popeye, in transforming an image of American culture in Japan from ideological counter culture to well-made commodities and entertainments.
『博物館學雑誌』第37巻第1号、全日本博物館学会、2011年12月、1-33頁。, 2011
This paper analyzes how and why ‘art museum at department-store’ a museum form unique within Japa... more This paper analyzes how and why ‘art museum at department-store’ a museum form unique within Japan, emerged and developed. By analyzing the institutional relationship between a diffusion of ’contemporary art’ and a cultural development of Americanization since the 1970s Japan, I demonstrate that The Seibu Museum of Art, the first art museum at department-store, which operated from 1975 to 1999 in the heart of Tokyo, aimed to have somewhat different functions from conventional ‘museums’ in Euro-American definition. In other words, this museum did not possess any collection and was an institution focusing on diffusion of contemporary art newly-imported into Japan. Understood as a space to be valued based on only event, exhibition, curation and direction, rather than its collection, thus, Seibu Museum of Art could be characterized as a metaphor of ‘theater’ within museum studies theory.
Books by Masaki Komori
人文学のレッスン 文学・芸術・歴史, 2022
ジェンダー的バイアスについて批判的に美術史を読み直す方法について、ミュージアム研究および女性史の観点から論じた。現代美術作品、美術展キュレーション、及び、美術品収集・美術館創設の事例から、美術史... more ジェンダー的バイアスについて批判的に美術史を読み直す方法について、ミュージアム研究および女性史の観点から論じた。現代美術作品、美術展キュレーション、及び、美術品収集・美術館創設の事例から、美術史において隠されてきた「女性」の影響力を再評価し美術史を是正する試みについて紹介した。さらにより近年の事例として、ミュージアムにおけるICT技術利用の取り組みも取り上げ、デジタル化が展覧会による歴史の語りにもたらした貢献についても議論した。
なお、本書は武蔵大学人文学部におけるリレー講義の教科書として編まれたものである。
This book was edited and published as a textbook for the Humanities Department at Musashi University. Museum studies scholar Masaki Komori tackles in the fourth chapter how museums, exhibitions, and artworks have been playing a significant role in historical narrative-making. While analyzing an artwork by Guerrilla Girls, exhibits at National Gallery in London, The National Museum of Women in the Arts (NMWA) in D.C. and Brooklyn Museum to demonstrate case studies in women’s history, black history and LGBTQ history, the chapter points out how important the intersectionality between gender and ethnicity functions in narrating and education in history.
立教アメリカンスタディーズ, 2024
本稿は、現代アメリカにおける社会運動の空間について考えるものであ る。近年のソーシャルメディア(SNS)やスマートフォンの急速な普及は、 デジタル技術を利用したコミュニケーションを促進させた。と... more 本稿は、現代アメリカにおける社会運動の空間について考えるものであ
る。近年のソーシャルメディア(SNS)やスマートフォンの急速な普及は、
デジタル技術を利用したコミュニケーションを促進させた。とりわけ新型コ
ロナウイルスによるパンデミックはこうしたデジタル・コミュニケーション
をいっそう加速させ、アメリカ合衆国においては、もはや一部の人々のもの
とは言い難いほどの普及をみせた。デジタル・コミュニケーションの持
つインフラストラクチャー的性格がいっそう強まったとするならば、人々が
暮らす〈現場=フィールド〉には質的な変容も起こったと見なすことができ
るだろう。さらに現場のデジタル的な変容は、フィールドワークに基づく研
究の条件についても再考を促すものでもある。つまり、デジタル人文学の
知見がいっそう要請される事態が訪れている。本研究は、こうしたデジタル
化をめぐる近年の状況を理解し、とりわけ2020 年のパンデミック後の変化
について記録に留めることを目指すものである。
人文学会雑誌, 2024
フィラデルフィアにある医学博物館ムター博物館で昨年起こった炎上騒動を時事的に記録する意図も込め取り上げています。脱植民地主義を旗印に人体コレクションの扱いなどについて倫理面で同館が実施した改革は... more フィラデルフィアにある医学博物館ムター博物館で昨年起こった炎上騒動を時事的に記録する意図も込め取り上げています。脱植民地主義を旗印に人体コレクションの扱いなどについて倫理面で同館が実施した改革は、スタッフやファンなど旧体制の支持者からは「キャンセルカルチャー」などと批判されて全米規模で報じられるほどの大きな騒ぎへと発展しました。
この一件はジャーナリズムでは「意識高い系改革派VS現状維持派」などと説明がなされてきたのですが、実はこの現象は、長らく続いてきたミュージアムや人文学、ひいては社会全体の「倫理」変化の歴史のなかにおいて見たほうが適切に理解できるのではないかと問題提起しています。
博論研究の頃から追いかけている同館は定点観測を続けている調査事例でもあり、また、過去に住んだ街のなかでも最も思い入れが深いフィラデルフィアの問題としても捉えられるもので、色々と「自分ごと」感がある話ということもあって力が入れて書きました。
『広告』, 2023
記事は、大英博物館に収集展示されるギリシャ大理石彫刻など文化財所有権をめぐる問題、ニューヨーク自然史博物館のルーズベルト像がはらむ人種主義、収集された先住民の遺骨返還などを扱ったものです。「ミュ... more 記事は、大英博物館に収集展示されるギリシャ大理石彫刻など文化財所有権をめぐる問題、ニューヨーク自然史博物館のルーズベルト像がはらむ人種主義、収集された先住民の遺骨返還などを扱ったものです。「ミュージアムは近代主義と植民地主義の暴力装置だ」という視座の紹介からはじめて、ミュージアムが植民地主義の歴史と現在にいかに向き合っているのか、今後どうしていくべきなのかについて論じました。
https://phoiming.hatenadiary.org/entry/2023/04/05/004621
博物館研究, 2021
コロナ禍におけるミュージアムの変容について、デジタル化に焦点を当てて論じたもので、2017年に発表した論文に続くデジタル・ミュージアム論です。掲載誌は昭和初期から続く公益財団法人日本博物館協会か... more コロナ禍におけるミュージアムの変容について、デジタル化に焦点を当てて論じたもので、2017年に発表した論文に続くデジタル・ミュージアム論です。掲載誌は昭和初期から続く公益財団法人日本博物館協会から刊行されているものです。主に学芸員などミュージアムの現場で活躍されている方々に読んでいただけるのではないかと期待しております。
『博物館研究』vol.56 no.9 (no.640)、2021年9月、19-23。
Field+ : フィールドプラス : 世界を感応する雑誌 , Jul 10, 2019
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 編『Field+ : フィールドプラス : 世界を感応する雑誌 』
arts/ (民族藝術学会誌), 2021
This paper examines the history of the ars medica collections and exhibitions at Mütter Museum in... more This paper examines the history of the ars medica collections and exhibitions at Mütter Museum in Philadelphia, Pennsylvania, the first medical museum in the United States. As the museum transformed from a research institute to an educational facility, medical art projects have been not only an effective way to make the museum's medical collections more accessible but also obstacles that have led to criticism of the museum's treatment of collections, such as publicly displaying human remains as artworks and utilizing specimens as commercial resources. The paper clarifies that museums could broaden the concept of art by building and exhibiting their collections and also make a significant role in establishing social norms and ethics in society.
Rikkyo American Studies, 2018
『立教アメリカンスタディーズ』(立教大学アメリカ研究所)の「デジタル史学」特集への寄稿。デジタルミュージアムの最近の動向について(欧米で呼ばれる「ヴァーチャルミュージアム」と同じもの)、なかでも... more 『立教アメリカンスタディーズ』(立教大学アメリカ研究所)の「デジタル史学」特集への寄稿。デジタルミュージアムの最近の動向について(欧米で呼ばれる「ヴァーチャルミュージアム」と同じもの)、なかでも2000年代以降のインターネット時代のデジタルミュージアムの試みを紹介しながら、情報のデジタル化から生まれたミュージアム、あるいはミュージアム的実践が人文学研究に何をもたらす可能性があるのかについても考察している。
The Journal of American and Canadian Studies, 2017
本研究は、 全米初の医学博物館ムター博物館の歴史をひもとき、博物館及び科学の公共的な役割を考察するものである。1858年、アメリカ合衆国フィラデルフィアに創設され現在も続く本博物館の目的は、設立... more 本研究は、 全米初の医学博物館ムター博物館の歴史をひもとき、博物館及び科学の公共的な役割を考察するものである。1858年、アメリカ合衆国フィラデルフィアに創設され現在も続く本博物館の目的は、設立当初に掲げられたものから大きく変容を遂げた。即ち、医学知の前進を目指す専門家が標本などの医学資料を共有する基盤組織から、広く「アメリカ人」一般に向けた啓蒙的な医学教育施設への転換である。これに貢献したのが、間接的には、モノを主体とした病理学的な医学理論からの脱却であり、公共性という博物館の持つ理念であった。そして直接的には、母体組織の経営改革と、1976年のアメリカ建国二百年祭を受けた博物館の観光地化であった。小論は博物館の制度改革の過程を議事録や展示記録から検証することで、人体の展示を例に、科学・博物館の公共性と娯楽性の相剋の在りようを探った。
ムゼイオン Museion, 2017
ミュージアム研究の「展示の政治学(ミュージアムの政治学)」理論についての総覧。 科学や芸術を公に展示するミュージアムという施設にはさまざまな権力構造が絡まりあい、それらの結果として「文化」... more ミュージアム研究の「展示の政治学(ミュージアムの政治学)」理論についての総覧。
科学や芸術を公に展示するミュージアムという施設にはさまざまな権力構造が絡まりあい、それらの結果として「文化」や「科学」や「芸術」は社会に形を取っている。いかにすればこうした力学を的確にとらえられるのか。こうした観点からミュージアムを研究してきた「展示の政治学(またはミュージアムの政治学)」理論について、日英言語圏を中心に論じた。関心を共有しながらもいくつかの研究領域(discipline)で分けて語られてきた研究群を結びつけるために、次の三つの潮流に体系立てて学説史を整理した。第一に、1980 年代半ばから始まる、ポストモダン文化人類学の流れを受けたポスト植民地主義論的ミュージアム研究。第二に、近代主義思想に関する制度論的研究。第三に、メディア論やカルチュラル・スタディーズの影響下に生まれた、コミュニケーション論的ミュージアム研究である。
本稿を通じて以下のことを明らかにした。第一、第二の議論では、「展示」とは意味を生成するメディアであり、そこには複数の意味が重なっていることが強調された。そして、この理解は研究・現場の双方で強く意識されるようになった。さらに第三の潮流に至り、来館者による展示解釈が、新たな調査対象として前景化する。このことで、対立・協調の過程から生じる展示がもつ意味の重層性について、来館者の観点からも理解すべきとする共通の課題が確認され始めることになった。すなわち、現在の展示の政治学は、受容理論を取り入れることで、論争的な課題を抱える歴史認識論・記憶論の議論を牽引するものになっていると結論づけた。
日本語圏と欧米言語圏の研究相互の関わり合い(や関わり合いのなさ)について日本語で整理することで、ミュージアムや展示について研究する基礎資料としての利用を想定している。
This paper is a historiographic review of the museum studies theory called “politics of display/politics of museum.” It explores the history of museum studies from the standpoint of museum politics: “museum” as a site for power politics and the social dynamics of the relevant actors associated with museums and exhibitions: curators, exhibition designers, educators, museum staff, museum committees, and visitors. This theory considers modern conceptions of “culture,” “science,” and “art” as social constructs emerging from these political processes.
To shape this historiography derived from scholarly works mainly in English and Japanese, this paper narrates these discussions in three roughly chronological currents: 1) the trend of post-colonial museum studies and postmodern anthropology since the 1980s; 2) the tendencies of institutional analyses in the critique of modernism; 3) the tide of communication studies in museum fields, which was strongly influenced by cultural studies and media studies.
In the first and second trends, museums and displays became considered as political sites and complex assemblages that constitute a web of meaning. Throughout these trends, this understanding of how to interpret museums was common in both practical and theoretical fields. As the third stage goes, communication studies focused on the receptive aspect and museum theory focused on the visitor’s experience in the meaning-making process. As a result, it is nearly inevitable for museum scholars to discuss museum politics without mentioning receptions at museums. Through analyzing these three movements, this paper uncovers the historical path of increased significance on reception theory in recent museum politics.
『都市計画』日本都市計画学会、第62巻第4号、pp.47-50、2013年。, 2013
This paper analyzes the development and diffusion of a series of the art projects,“Oshokuji, orig... more This paper analyzes the development and diffusion of a series of the art projects,“Oshokuji, originally created by Miyake Kotaro. By exploring the art history of collaboration with local communities and regional development plans, this paper points out that utilizing art in community development often causes problems, including conflicts between artists and non-art experts, as well as benefits. As a key for solving the problems, this paper suggests an importance of understanding of the dual aspects, “problem finding" and “problem resolution," of art-making practices within the local community. Primarily, Miyake created the first Oshokuji as a problem finding system. As a consequent result, miscellaneous local voluntary activities used the system as problem resolution projects for local communities.
『展示学』『展示学』日本展示学会、第54号、pp.62-71、2017年2月。, 2017
全米初の医学博物館ムター博物館におけるアルスメディカ(医療芸術)の展示事業を事例として、ミュージアムがモノの意味をいかに変容させるのかについて報告した。当地フィラデルフィアの観光都市計画やナショ... more 全米初の医学博物館ムター博物館におけるアルスメディカ(医療芸術)の展示事業を事例として、ミュージアムがモノの意味をいかに変容させるのかについて報告した。当地フィラデルフィアの観光都市計画やナショナルアイデンティティ、及び、経営学的博物館運営等が絡み合い、その結果、献体や人骨は「アルスメディカ」として語られ、収集・展示されてきた。本論文では、ミュージアムを通じて医学資料が「芸術」に成る過程として本事例を理解する視座を示した。
『博物館學雑誌』全日本博物館学会、第38巻第2号、pp.47-72、2013年。, 2013
This paper analyzes creation museums that explain the biblical creation story as an authoritative... more This paper analyzes creation museums that explain the biblical creation story as an authoritative “scientific fact,” a certain type of museum that has become popular since the 1980s in the United States. Based on the perspectives gained from museum studies and from my analysis of exhibits during my fieldworks in August 2010 and January 2011 at the Creation Museum (2007-) in Petersburg, Kentucky, I argue that the museum problematizes the concept of “science museum” through its identity politics of scientific knowledge.
In the context of creation-evolution controversy since the 19th century, creationists after the 1970s have emphasized the validity of creationism by using scientific explanations, or so-called “creation science.” However, evolutionists have harshly criticized it and have argued that the controversy does not serve as a ground for “scientific debate.” Meanwhile, creationists have taken another strategy for justifying the creation science. With the change in the role of museum education particularly since the 1980s, scientifically authorized objects at exhibitions often have been replaced by replicas of authorized objects or audio-visual materials. As the visitors do not pay much attention to whether objects at science museums are scientifically authentic or not, the Creation Museum has come to use many scientifically unauthorized materials as their scientific “evidence.” From my analysis of its exhibitions, I demonstrate that this strategy enables the museum to succeed in avoiding the evolutionists’ counterarguments on the exhibited objects by appropriating traits of typical science museums.
[*An English version will be published soon.]
『出版研究』第42巻、日本出版学会、2012年3月、47-68頁。, 2012
This paper investigates the transformation of a concept of "Americanization" in Japan. From my an... more This paper investigates the transformation of a concept of "Americanization" in Japan. From my analysis of magazines' production, advertising business models' distribution, and readers' reception, this study reveals the role of these major and influential fashion magazines in the 1970s, including Takarajima and Popeye, in transforming an image of American culture in Japan from ideological counter culture to well-made commodities and entertainments.
『博物館學雑誌』第37巻第1号、全日本博物館学会、2011年12月、1-33頁。, 2011
This paper analyzes how and why ‘art museum at department-store’ a museum form unique within Japa... more This paper analyzes how and why ‘art museum at department-store’ a museum form unique within Japan, emerged and developed. By analyzing the institutional relationship between a diffusion of ’contemporary art’ and a cultural development of Americanization since the 1970s Japan, I demonstrate that The Seibu Museum of Art, the first art museum at department-store, which operated from 1975 to 1999 in the heart of Tokyo, aimed to have somewhat different functions from conventional ‘museums’ in Euro-American definition. In other words, this museum did not possess any collection and was an institution focusing on diffusion of contemporary art newly-imported into Japan. Understood as a space to be valued based on only event, exhibition, curation and direction, rather than its collection, thus, Seibu Museum of Art could be characterized as a metaphor of ‘theater’ within museum studies theory.
人文学のレッスン 文学・芸術・歴史, 2022
ジェンダー的バイアスについて批判的に美術史を読み直す方法について、ミュージアム研究および女性史の観点から論じた。現代美術作品、美術展キュレーション、及び、美術品収集・美術館創設の事例から、美術史... more ジェンダー的バイアスについて批判的に美術史を読み直す方法について、ミュージアム研究および女性史の観点から論じた。現代美術作品、美術展キュレーション、及び、美術品収集・美術館創設の事例から、美術史において隠されてきた「女性」の影響力を再評価し美術史を是正する試みについて紹介した。さらにより近年の事例として、ミュージアムにおけるICT技術利用の取り組みも取り上げ、デジタル化が展覧会による歴史の語りにもたらした貢献についても議論した。
なお、本書は武蔵大学人文学部におけるリレー講義の教科書として編まれたものである。
This book was edited and published as a textbook for the Humanities Department at Musashi University. Museum studies scholar Masaki Komori tackles in the fourth chapter how museums, exhibitions, and artworks have been playing a significant role in historical narrative-making. While analyzing an artwork by Guerrilla Girls, exhibits at National Gallery in London, The National Museum of Women in the Arts (NMWA) in D.C. and Brooklyn Museum to demonstrate case studies in women’s history, black history and LGBTQ history, the chapter points out how important the intersectionality between gender and ethnicity functions in narrating and education in history.
『あいちトリエンナーレ2019 ラーニング記録集』, 2020
あいトリは複数の部門で展開しましたが、本書は「ラーニング」部門ーー舞台や音楽、展覧会企画と並行して行われた美術教育プログラムーーの記録集です。拙稿では、実施された「アート・プレイグラウンド」の... more あいトリは複数の部門で展開しましたが、本書は「ラーニング」部門ーー舞台や音楽、展覧会企画と並行して行われた美術教育プログラムーーの記録集です。拙稿では、実施された「アート・プレイグラウンド」の企画について、ミュージアム研究、文化人類学、美術史等の観点から解説をしています。
「主体的な学び(ラーニング)」というフレーズを一度は皆さん聞いたことがあると思いますが、それくらいに日本でもラーニング教育は普及しています。欧米の美術界に牽引されながら、美術館において実験的な美術教育を行うことは日本でも普及してきました。今回のあいトリでも、ラーニングのキュレーターの会田大也さんの企画、アーティストの日比野克彦さんと建築家の遠藤幹子さんのリード、そして各所のコーディネータとスタッフたちの協働作業によって、まさにこの種の実験的で「作品」と呼ぶべき教育企画が行われました。しかし、こうした胎動する現場に比べ、美術の言論では教育活動をうまく評するものが少ないと感じてきました。そこで今回、美術批評とミュージアムの現場との橋渡しができればと思って論を寄せました。教育をテーマにした実験的な試みがアートシーンに増えたことは「教育的転回」などとも呼ばれますが、こうした立場から、キュレーションや美術作品と同じように、教育プログラムにももっと創造性があると評価できるのではないかという投げかけでもあります。
2019年のあいちトリエンナーレでは、不幸にも、「表現の自由」が失われつつある芸術をめぐる現在の状況を象徴するような事件が起こり、そこに議論が集中してしまったきらいがあります。しかし、現場では表現の自由を守ろうとする人々の動きがありました。展示を見ることもしない人々がウェブ上で「炎上」させ続けた「表現の不自由展・その後」のすぐ隣りでは、アート・プレイグラウンドで子供たちが「交流」し、思想信条を超えて来館者同士が深い「対話」を交わしていました。ここでは、未来と社会の「公共性」が育まれていたと感じています。この様子が克明に記録された報告書の「TALK 受け手ノート」には勇気をもらいました。本件で主に焦点が当たってきたのは、炎上の火種となった右翼の活動や、芸術監督の津田大介さん、抑圧したり援助する政治家たち、文化庁とその背後にいる日本政府、そしてもちろん、アーティストのボイコットやカウンター的活動です。本書が描くのは、「現場のスタッフと来場者」というもう一つの顔です。
アメリカ研究の事典の項目「祝日・祭日」(『アメリカ文化事典』、丸善書店、2018年)
椎野若菜・丹羽朋子・梶丸岳編 『フィールドノート古今東西 シリーズFENICS 百万人のフィールドワーカー13』古今書院、2016年3月。, 2016
This is a book chapter. As part of a series of fifteen volumes about field work as knowledge, thi... more This is a book chapter. As part of a series of fifteen volumes about field work as knowledge, this study, titled "Field note in museum studies: research methodology at the digital age," explores how museum scholars uses digital devices and applications as "field note," and also how they could maximize an advantage of paper-based notes after the digital age.