「Re After Recording」第2回「かくしごと」| 神谷浩史&高橋李依が“12話観て完成する”アニメへの熱い思いを語り尽くす - コミックナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

アニメ専門チャンネル・AT-Xによる動画配信サービス「AT-DX」で、5月23日にスタートした新番組「Re After Recording」。キャストが人気作の名シーンの再アフレコに挑戦し、その姿を映像で観られるという画期的な企画は、早くもアニメ・声優ファンからの注目を集めている。6月27日から配信されている第2回の題材として選ばれたのは、2020年に放送されたTVアニメ「かくしごと」。自分がマンガ家であることを娘に隠している後藤可久士を演じた神谷浩史と、娘の後藤姫を演じた高橋李依が、再アフレコに挑戦した。

コミックナタリーでは、第1回の「昭和元禄落語心中」回に続いて、今回も番組収録に密着。その模様をお届けする。再アフレコとトークパートの収録を取材した後は、2人へのインタビューも行い、再アフレコに挑戦した感想や、「かくしごと」という作品への熱い思いなどを語ってもらった。

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取材・文 / 丸本大輔撮影 / 武田真和

「Re After Recording」#2収録現場レポート

声だけで、さまざまなキャラクターを演じていく声優。AT-DXオリジナルの新番組「Re After Recording」は、声優の「芝居」のすごさや魅力をさらに深く知ってもらうことを目的に生まれた番組だ。第2回の題材には、久米田康治のマンガを原作として、2020年の4月から6月にわたって全12話が放送されたTVアニメ「かくしごと」をピックアップ。物語の終盤は、原作の連載とほぼ同時進行で感動的な大団円が描かれたことでも話題を集めた名作で、2021年7月には、新規カットが加わった「劇場編集版かくしごと ―ひめごとはなんですか―」も公開されている。今回再アフレコに臨むのは、主人公の後藤可久士を演じる神谷浩史と、一人娘の後藤姫を演じる高橋李依。都内某所のスタジオを訪れた2人は、番組スタッフから改めて企画内容や収録の段取りについて説明を受けた後、2本のマイクが設置されたアフレコブースの中へ。神谷と高橋による「Re After Recording」が始まった。

TVアニメ「かくしごと」より、マンガ家・後藤可久士。下ネタ満載の作品「きんたましまし」でヒットを経験。現在は豪談社の週刊少年マンガジンに同じ方向性の作品「風のタイツ」を連載中。一人娘の姫を愛するあまり、自分が描いているマンガのことをひた隠しにしている。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、マンガ家・後藤可久士。下ネタ満載の作品「きんたましまし」でヒットを経験。現在は豪談社の週刊少年マンガジンに同じ方向性の作品「風のタイツ」を連載中。一人娘の姫を愛するあまり、自分が描いているマンガのことをひた隠しにしている。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、可久士の娘・姫。幾度となく可久士の仕事がバレそうな状況に居合わせるが、気づかないままの生活を送る。父親思いでしっかりした一面を持つ。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、可久士の娘・姫。幾度となく可久士の仕事がバレそうな状況に居合わせるが、気づかないままの生活を送る。父親思いでしっかりした一面を持つ。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

ブースに入ってすぐ、設置されたカメラの多さに驚く2人。この「Re After Recording」では、6台ものカメラを使って、アフレコ中の声優の姿をさまざまな角度から撮影するのだ。ブースの中の光景は、普段のアフレコとは少し異なっていたが、2人ともリラックスした雰囲気。スタッフの準備が整うまでの時間は、コロナ禍前に行われたアフレコの思い出などを語っていた。

アフレコパートの収録風景。

アフレコパートの収録風景。

今回再アフレコされるのは、全12話の中から抜粋された14のシーン。実際のTVアニメのアフレコでは、Aパートのテストと本番の後、休憩を挟んでBパートという順番で収録していくのだが、今回は1シーンごとにテスト、本番という形で収録していく。スタッフからの合図でマイクの前に立つ2人。まずは第1話の冒頭、18歳の姫の「隠し事は、何ですか?」というモノローグから、可久士と10歳の姫が自宅を出て、職場と学校へ向かうシーンまでのテストが始まった。18歳の姫のモノローグやセリフは、シリアスな内容が多いためか、芝居をしている高橋の表情も真剣でどこか切なそう。しかし、可久士と10歳の姫が「気をつけてな」「お父さんこそ」と声を掛け合うシーンになった瞬間、明るい笑顔に切り替わる。もちろん、芝居も18歳から10歳へガラリと変化した。

神谷浩史

高橋李依

最初のテストの段階から、アニメで観て聴いてきた可久士と姫の声が聞こえてくる。テストの芝居にはなんの問題もなく、そのまま本番。その後もテンポよく次々と収録が進んで行く。可久士と姫というキャラクターの違いも大きな要因だとは思うが、マイク前にすっと立ち、あまり動かないまま芝居をしていく神谷に対し、10歳の姫を演じるときの高橋は、表情豊かで身体の動きも画面の姫と少しシンクロ。姫が考え込むシーンでは、かわいく首を傾けて視線を斜め上に向けて不思議そうな表情。布団の中にもぐっていた姫が、もぞもぞと顔を出して話すシーンでは、姫と同じように少し肩を左右に揺らしていた。比較的真剣な表情が続く神谷も、可久士が優しく姫に話しかけるときには、温かい笑顔に変わる。

神谷浩史

高橋李依

収録はスムーズに進行。時折、水分補給をする程度の間を取るだけで、次々に変わるシーンを休みなく演じていく。最後のテストを前に、スタッフが「こんなに連続で録ることありますか?」と尋ねると、高橋は「ないです」と笑顔で即答していた。2人とも身体を軽くストレッチするなど、少し疲れた様子も見せてはいたが、シリアスなシーンの続く12話も一発OK。予定スケジュールよりも少し短い約1時間で、「かくしごと」の再アフレコが終了した。

神谷浩史

高橋李依

セット変更も兼ねた休憩の後、アフレコブースの中で収録されたトークパートでは、再アフレコの感想だけではなく、「かくしごと」のアフレコスタジオでの思い出なども語られていく。また、「かくしごと」に関する話題に留まらず、声優という職業を続ける中で経験してきた深い話も展開。「かくしごと」はもちろん声優に興味がある人は、ぜひ番組を観てほしい。

神谷浩史×高橋李依インタビュー

5年も前にやったことをもう一回できるのかなって(神谷)

──この「Re After Recording」という番組への出演オファーがあったときの率直な感想を教えてください。

高橋李依 まずは、番組の題材として「かくしごと」という作品を選んでいただけたことが、すごくうれしかったです。そして、「神谷さんは、出ますか?」ということが気になりました(笑)。

──神谷さんと一緒にということも、重要なポイントだったのですね。

高橋 はい。「かくしごと」が題材になっていることと、神谷さんともう一度、掛け合いができることの両方がとてもうれしかったので、「ぜひ!」という感じでやらせていただきました。

神谷浩史 実は、この企画のお話自体はかなり前にいただいていたのですが、僕と李依ちゃんのスケジュールが全然合わなくて。ずいぶん先延ばしになっていたので、企画自体、もうなくなったのかなと思っていたんです。それが、急にスケジュールが決まり、本当にやることになって。「マジか」って(笑)。

神谷浩史

──なぜ、「マジか」と思われたのですか?

神谷 「かくしごと」のアフレコをしたのは5年くらい前なんですけど。5年前と今とでは、もう細胞レベルでは別人なので(笑)。

──人間の身体の細胞は、数年で入れ替わるという説もありますね。

神谷 5年も前にやったことをもう一回できるのかなって。

高橋 神谷さんでもそうですか? 私も変わっちゃうだろうなーとは思いました。

神谷 どういうふうにやったらできるのだろうと考えて、当時使った台本と(今日の)収録用の台本を比べてみたりしました。当時の台本には、アフレコのときに(納谷僚介音響監督や村野佑太監督から)聞いた演出意図も書いてあるんです。それを改めて見直して、自分の仕事に対するアプローチもずいぶん変わったなとか思いながら、今日の収録に参加しました。12話分の台本は、今日もスタジオに持ってきています。

神谷浩史、高橋李依

──アプローチが変わると、やはり、お芝居自体にも変化はあったのでしょうか?

神谷 どうなんでしょう? それを判断するのは、観てくださる第三者なので、自分としてはわからないです。それに、変わっていたとしても、それはしょうがないことなので(笑)。

高橋 大丈夫。完成した作品は、もうありますし(笑)。

神谷 そうなんですよ。正解は、一回、アニメとしてお見せしているので、そちらを観ていただけたらということで。ただ、「今、新しくやると、こういうアプローチになります」という提案にはなったかなと思います。