TVアニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」特集 小野勝巳監督、シリーズ構成・吉田伸、北村京子プロデューサー座談会 - コミックナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

2017年9月の始動から約3年、もはやコミックナタリー読者で「ヒプノシスマイク」の名前を知らない人はいないだろう。著名ラッパーや作家陣も多数参加する本格的な楽曲や、武力による戦争が根絶され、女性が覇権を握るようになったという独自の世界観、何より多彩なキャラクターの魅力によって、熱狂を生み続ける「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」。その満を持してのアニメ化作品となる「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」が、いよいよ10月にスタートした。

コミックナタリーでは放送に先がけ、小野勝巳監督、シリーズ構成の吉田伸、A-1 Picturesの北村京子プロデューサーの3人にインタビュー。本作の大きな見どころであるラップバトルの描き方について、さらに今後の展開についても話を聞いた。

取材・文 / 柳川春香

カードゲーム≒ラップバトル!?

──満を持しての「ヒプノシスマイク」アニメ化ということで、楽しみにしていたファンも多いと思いますが、そもそも皆さんがアニメ制作のお話を受けたのはいつ頃だったのでしょうか。

小野勝巳 一昨年くらいだったかなと思います。監督として参加する前から人気があるというのは聞いていて、「アニメ化するだろうな」と思っていたら僕のところに話が来たので、驚きましたね。「遊☆戯☆王ARC-V」や「戦姫絶唱シンフォギア」シリーズをやっていたので、そういった経歴を見てお話をいただけたのかなと思いました。

吉田伸 僕は小野さんに声をかけてもらったんですが、そのときはまだ「ヒプマイ」を知らなかったんです。2年くらい前なので、当時はまだプロジェクト自体が始まってから間もなくて。最初は「ラップをアニメになんてできるの?」って思いましたね。

小野 吉田さんとは「遊☆戯☆王5D's」でご一緒していて、バトルとストーリーを合致させるというような作業を得意とされてきた方なので、これは頼もうと。

吉田 カードゲームとラップバトルは相当違いますよ(笑)。

TVアニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」より。

TVアニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」より。

北村京子 私も詳しかったわけではないのですが、「ヒプマイ」の楽曲は音楽として聴いていて。それまでラップというジャンルには縁がなかったので、ラップを聴くのも「ヒプマイ」が初めてでした。アニメ化のお話をもらったときは、まず「どうしたらいいのかまったくわからない」と思いました(笑)。

──あはは(笑)。

北村 すごく人気のあるタイトルなので、プレッシャーもありましたし。でもやらせていただくからには、私のようなラップになじみのない人にも楽しんでもらえるものになればと思って作っています。

ヤバイ扉を開けた感じ

──「ヒプマイ」のアニメ化にあたって、やっぱり一番気になるのがラップバトルをどう表現されるのかというところだったんです。第1話を拝見しましたが、キャラクターはCGで描かれていましたね。

小野 第1話はCGですが、そうじゃないものもこれからいっぱい出てきます。

──そうなんですか。

北村 今後はCGも作画も交えてさまざまな演出をしているので、お楽しみにというところですね。

──キャラクターももちろんなんですが、ダメージを与えた相手の様子がアニメでこういうふうに可視化されるんだな、というのが面白かったです。

小野 やっぱりアニメ化にあたっては、バトルをちゃんとやらなきゃなと思いました。音声だとバトルの様子はそこまで明確になっていなかったと思うんですが、絵にすることでリアルに寄るというか、情報が増えるので、バトルシーンは早い段階でイメージボードを作って揉んでいきました。

──リリックの文字が視覚的に使われるのも印象的でした。アニメでこれだけ文字がフィーチャーされる演出はあまりないですよね。

小野 言葉を具現化して、それがダメージを与えているように見えればと思っていました。韻を踏んだところでパワーが発動する、みたいなことを表現できればと。スタッフには「聖闘士星矢」の鳳凰幻魔拳みたいな、とかって説明していましたね(笑)。イメージ演出をずっとやっているようなものなので大変でもありましたが、僕は作っていてすごく面白かったです。

TVアニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」より。

TVアニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」より。

──そして、第1話でいきなり新曲が4曲も使われたことにも驚きました。

小野 毎話すごくカッコいい曲が来て、あとラップってすごく幅が広いんだなと思いました。「こういうのもアリなんだ」って。

北村 予想以上に曲は多くなりましたね。全話オリジナル曲を書き下ろしてもらったので、曲を作られた皆様も大変な作業だったと思います。歌入りの曲をシナリオの後に作るというのは珍しいことで、ラップ待ちという時間があったんですよ。限られた時間の中であれだけたくさんの楽曲を作っていただいたのは凄いことだと思います。

小野 シナリオが上がってからラップを発注して、話に沿ったラップが上がってきて……という順番でしたね。曲がシナリオみたいなものというか、曲が話を動かしていくので。

北村 ミュージカルみたいな感じですよね。普通、キャラクターソングが入るようなアニメでも、楽曲の歌詞の内容はあくまでキャラクターのイメージを歌っているものが多いので、本編の内容に直結した内容の楽曲って本当に珍しい。

吉田 新しいし……ヤバイ扉を開けた感じがします。

──(笑)。

吉田 「こんなのやっちゃうの!?」って。もしもみんながこれに追随してきたら、すごいことになりますよ。