“マガジンラブコメ”のネオスタンダード「カノジョも彼女」を徹底解剖。榎木淳弥、佐倉綾音、和氣あず未が二股主人公をジャッジ - コミックナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
今、週刊少年マガジン(講談社)にラブコメブームが来ている。そんな印象を持っている読者も多いのではないだろうか。劇場版も控える「五等分の花嫁」の大ヒットは記憶に新しいが、さらにTVアニメ2期が決定した「彼女、お借りします」、アニメ化が決定している「カノジョも彼女」「カッコウの許嫁」「それでも歩は寄せてくる」と、マガジンでは現在も豊富なラブコメ作品が連載されている。
コミックナタリーでは、そんな週刊少年マガジンのラブコメがいかに盛り上がっているのか、データとともに紹介。そしてラブコメ激戦区の週刊少年マガジンで連載8カ月という驚異のスピードでTVアニメ化が発表された「カノジョも彼女」の魅力を、向井直也役の榎木淳弥、佐⽊咲役の佐倉綾音、水瀬渚役の和氣あず未のキャスト3人のコメントとともに深堀りしていく。
文 / 粕谷太智 撮影 / 武田和真
週刊少年マガジンにラブコメブームが来てるって本当?
6月16日に発売された週刊少年マガジン2021年29号の目次を見ると、なんと25の連載作品の内、3割以上となる9作品をラブコメが占めている。そして上述した通り、その半数近い4作品でアニメ化が決定しているのだ。さらに週刊少年マガジンでは2021年1号から7号にかけて“ラブコメラッシュ”と称し、新連載と読み切りで4作のラブコメを掲載。今年の1月には、編集長の栗田宏俊が自ら「最近『カッコウの許嫁』を始め、『週刊少年マガジン』は空前絶後のラブコメブームです」と話し、新連載の「恋か魔法かわからない!」が週刊少年マガジンでは異例の2号連続のカラー掲載となったことについてコメントを寄せている。こうしたことからも、週刊少年マガジンが雑誌としてラブコメに力を入れていることがうかがえる。
週刊少年マガジンで連載中のラブコメ一覧
- 宮島礼吏「彼女、お借りします」(2017年32号〜)
- 英貴「男子高校生を養いたいお姉さんの話」(2018年19号〜)
- 山本崇一朗「それでも歩は寄せてくる」(2019年14号〜)
- 吉河美希「カッコウの許嫁」(2020年9号〜)
- ヒロユキ「カノジョも彼女」(2020年14号〜)
- 内山敦司「恋か魔法かわからない!」(2021年2・3合併号〜)
- 瀬尾公治「女神のカフェテラス」(2021年12号〜)
- 内藤マーシー「甘神さんちの縁結び」(2021年21号〜)
- 久世蘭「黒岩メダカに私の可愛いが通じない」(2021年26号〜)
大ヒット作「五等分の花嫁」を軸にたどる“ラブコメブーム”
ここでは、近年のラブコメマンガの中でも“大ヒット作”と言って差し支えないであろう「五等分の花嫁」を軸に、近年の週刊少年マガジンのラブコメ作品の変遷を追っていきたい。2020年12号で完結を迎えた「五等分の花嫁」だが、その連載の始まりは2017年36・37合併号。このとき連載されていたラブコメは、全体の26作に対し「五等分の花嫁」を含め、「風夏」「星野、目をつぶって。」「徒然チルドレン」「彼女、お借りします」「川柳少女」の6作だ。数は多くないものの、ほとんどがアニメ化もされた人気作となっており、すでにブームが始まっていたと言えるだろう。
さらにその5年前である2012年36・37合併号では全体の26作に対し、ラブコメはなんと「山田くんと7人の魔女」「君のいる町」「ハッピープロジェクト」の3作。「AKB49~恋愛禁止条例~」「GE~グッドエンディング~」とコメディ要素の薄い作品を入れても5作という数字になった。一方、現在の週刊少年マガジンだが、2020年から2021年にスタートした新連載で現在も連載が続いている13作中6作がラブコメと顕著な数字を叩き出している。この数字からも現在の週刊少年マガジンがラブコメの宝庫となっていることがわかるのではないか。
※「ドメスティックな彼女」はラブストーリーとしてカウント。
※読み切り作品は除く。
ブームはまだまだ終わらない!層の厚いマガジンラブコメ
ここでは週刊少年マガジンの近年のラブコメ作品をピックアップして紹介する。その数字や記録からも勢いや層の厚さを感じてほしい。
「五等分の花嫁」
五つ子全員がヒロインという異色作。物語冒頭から主人公の上杉風太郎が「五つ子の内の誰かと結婚する」という結末が示され、読者はそれが誰になるのか予想しながら読み進めるというミステリ的な設定でも人気を呼んだ。花澤香菜、竹達彩奈、伊藤美来、佐倉綾音、水瀬いのりの5人をヒロインのキャストに揃えたTVアニメ放送後から人気が急上昇。単行本は全14巻で、累計1500万部を突破している。2022年にはTVアニメ第2期の続きとなる劇場アニメの公開も控える。
「彼女、お借りします」
「五等分の花嫁」とほぼ同時期に連載をスタートし、近年のマガジンラブコメを支えてきた存在。恋人代行サービス“レンタル彼女”で出会ったヒロイン水原千鶴と、彼女を“レンタル”した冴えない大学生・木ノ下和也は、思わぬトラブルから互いを彼氏・彼女と偽り……と、王道な始まりながらも“レンタル彼女”というスパイスや、“レンタル彼女”として登場する魅力的なヒロインたちに目が離せなくなる作品だ。2022年にはTVアニメ第2期の放送も決定している。
「カッコウの許嫁」
「ヤンキー君とメガネちゃん」「山田くんと7人の魔女」と週刊少年マガジンで人気作を生み出し続ける吉河美希の最新作。赤ちゃんの頃に取り違えられた主人公・海野凪と、超お嬢様女子高生・天野エリカとの偶然の出会いから始まる人生交錯ラブコメディだ。2020年に連載が開始すると、週刊少年マガジン史上最速で表紙を飾ったのを皮切りに、講談社では今世紀初の4週連続重版、講談社史上最速の10刷り達成と記録を作り続けている。TVアニメはキャストに石川界人、鬼頭明里を迎え2022年に放送予定。
「恋か魔法かわからない!」
“ひと目惚れの魔法”のみが使える主人公・宮前魅斗(みやまえかいと)を描くファンタジーラブコメディ。幼なじみの舞と「偉大な魔法使いになる」という約束をしていた魅斗だったが、魔力を発現させることができず、魔法学園の中でも最下層の中の最下層と呼ばれバカにされていた。しかしひょんなことから、魅斗は目が合った相手を強制的に惚れさせる“ひと目惚れの魔法”を発現して……。新連載作品ながら2号連続でカラー掲載されるという、週刊少年マガジンでは異例の試みが行われた。
ラブコメは次の段階へ……“ネオ・スタンダードラブコメ”「カノジョも彼女」
「からかい上手の高木さん」の山本崇一朗による将棋ラブコメ「それでも歩は寄せてくる」、マガジンのラブコメに欠かせない瀬尾公治の最新作「女神のカフェテラス」など、まだまだ紹介したい作品はあるが、ここでは週刊少年マガジンで驚異の速さでアニメ化が決まり、先陣を切って7月にTVアニメがスタートする「カノジョも彼女」を取り上げる。
週刊少年マガジンでも連載されていた「アホガール」をはじめ、「ドージンワーク」「マンガ家さんとアシスタントさんと」と人気作を生み出してきたヒロユキによる最新作「カノジョも彼女」。小学生の頃から告白し続けてきた幼なじみの佐木咲と遂に恋人になれた主人公・向井直也は、ある日、直也のことを思い続けていた美少女・水瀬渚から突然告白されてしまう。一度は恋人の存在を理由に告白を断った直也だったが、渚の熱意に押され“二股”での交際を提案。嘘の付けない性格の直也は、咲の了解を得て二股、そして3人での共同生活をスタートさせる。
ラブコメの楽しみ方の1つとして「どのヒロインと恋人になるのか」というものがあるだろう。しかし同作が謳う“ネオ・スタンダードラブコメ”では「どっちもかわいいから選ばない」が正解なのだ。次項では、ギャグマンガを書き続けてきたヒロユキによる「カノジョも彼女」が、“マガジンラブコメ”の次代を担う“新しいラブコメ”であることを榎木淳弥、佐倉綾音、和氣あず未のキャスト3人のコメントとともに深堀りしていく。