月刊コミックZERO-SUM - コミックナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

ファンタジーや学園ものなどを中心に美麗な画風の作品を揃え、世の女子たちを唸らせ悶えさせてきた月刊コミックZERO-SUM(一迅社)が、6月28日発売の8月号で100号目を迎えた。

コミックナタリーでは、同誌の2大看板作家である「最遊記RELOAD BLAST」の峰倉かずやと、「LOVELESS」の高河ゆん、そして杉野庸介編集長を迎え、鼎談を敢行。8年間の軌跡を振り返ってもらうとともに、ゼロサムがいかに作家とともに成長を遂げてきたかを語ってもらった。

取材・文/坂本恵 編集・撮影/唐木元

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会社名や誌名も一緒に決めましたね

──ゼロサムがこの8月号でついに100号目ということで、創刊からこれまでの8年間を振り返っていきたいと思います。まず、創刊当時のことを聞かせてください。

杉野 僕が前の会社から独立してゼロサムを作るために、まず新しく出版社を立ち上げるところから始まったんです。今の一迅社になる前の、一賽舎という会社ですね。この一賽舎という社名を決めるときは高河さんに電話で相談したりもして。最終的に決めたのは峰倉さんのお仕事場でだったんですよね。

峰倉 編集の方と、私のアシスタントの子たちみんなで、好きな漢字を1文字ずつ出し合って組み合わせたんですよ。いろいろ試した挙句、杉野さんが出したスタートの意味の「一」と、私が出した賽子(サイコロ)の「賽」っていう漢字に決まったんです。

インタビュー写真

──峰倉さんはどうして「賽」の字を?

峰倉 博打的な意味を込めて、ですね。前の会社を飛び出して作った、成功するかどうかもわからない会社ですから。で、その後雑誌の名前を決めて。

杉野 雑誌名を決めたのは会社ででしたよね。遠藤海成先生もいらっしゃって。

峰倉 みんなで単語を出しては、その単語が他に使われてないかネットで検索したりして。でもなかなか決まらなくて、みんな飽きてきたころに杉野さんが「ゼロサムゲームのゼロサムってどうかな」ってボソッと。みんなもう疲れてたから「それ!」って(笑)。

杉野 なんだ、みんな飽きてたせいで同意してくれたんですか?

峰倉 いやいや(笑)。みんな何となくしっくりきたから、「いいんじゃないの、それで」って。会社名に続いて博打っぽい感じなのも良かったし。

高河 私も後で誌名聞いて、すごく “らしいの”きたなーって思いましたね。

──社名を決めたり雑誌名を決めたり、立ち上げから作家がこんなにもコミットするのってレアなケースですよね。

杉野 そうですね。まあ逆にスタッフもその当時少なかったですから。

峰倉 ちょっとみんなで考えましょうか、という軽いノリですよ。

──ゼロサムを立ち上げるとき、コンセプトみたいなものはあったんですか?

インタビュー写真

杉野 コンセプトよりは、誰に描いてもらうか、というところを重要視しましたね。描いてもらう内容は作家さんの描きたいものでいいけど、僕のお願いしたメンバーで描いていただく。だから創刊号は、みなさん僕の好きな作家さんなんですよ。僕、雑誌って民主主義では作れないって思ってたところがあって。アンケートも無条件には信用してないし、編集長の個人的感覚で作るべきだって思ってたんですね。で、特に創刊号はそうやって作ったんです。ただ8年経った今は編集スタッフも増えたし、彼らのことを信用してるので、みんなのセンスに従っている部分も少なからずあります。

──ワンマン編集長から、だんだんスタッフに任せるというか、権限を委ねるように変わってきたってことですね。

高河 それってすごくいいですよね。ある時期から「これ絶対杉野さんの好みとは違うな」っていう作品が掲載されてるのがわかって、でもそれがすごくいいなって思ってました。

杉野 今はみんなで持ち寄って作ってる感じですね。それぞれの編集を信頼できるところまで来たと思うので。確かに高河さんの言うとおり、個人的には好みではない……と言うより、自分では企画できないような作品もなくはない。でも編集部員それぞれの感性で選んだ作品でいいと思うんですよね。一生懸命作家さんたちと創ってくれれば最終的に編集長がやらなきゃいけないことって、「何を載せないか」という判断だけかもしれません。「何を載せるか」はそれぞれのスタッフがいいと思った作品でいい。