「今宵も悪夢を」第21夜 SCANDAL RINA (original) (raw)

「今宵も悪夢を」第21回ビジュアル

ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第21夜[バックナンバー]

モーテルの一室に居るような気分で一緒にハラハラ

2022年7月15日 21:00 7

ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第21回はSCANDAL RINAが、嵐の中のモーテルを舞台に殺人が繰り広げられる「アイデンティティー」を紹介。“磁石で引き寄せられたかのように”集まった人々とある殺人鬼の関係とは? 彼女が定期的に思い出すという本作の魅力をつづってくれた。

文 / SCANDAL RINA(コラム)、田尻和花(作品紹介)

どちらに傾くでもなく同居する、スリルと切なさ

車でどこにも行けないほど激しい雨の降る中、「今日はなんだかツイてない」。似たような心の曇り方をした人たちが古びたモーテルに集結する。行き場のないもの同士。だけど、全く違う人格を持った人間が、磁石で引き寄せられたかのように、次から次へとチェックインする。

そして、不穏な空気のなか予想通りの展開が始まる。雨に打たれて散乱した落とし物を辿り、高い音を立てて揺れるフェンスに呼ばれては、行って欲しくない方へちゃんと足を運んで、めくって欲しくない布をめくってくれる。
誰がどう考えても動いてはいけないときに約束を守れない人はいるし、目を離した隙にしっかり誰かが死んじゃうのだ。...可愛い。とりあえず、最初から最悪な条件が揃ってて最高。

テンポ良くどんどんその世界に引き込まれて行く。そして、ナンバーが書かれた赤いルームキーが、事件の鍵になっていることにも気付く。
番号通りに迫ってくる恐怖に耐えながら、モーテルの一室に居るような気分で一緒にハラハラする。

それから、突然ハッとする。
夢から醒めるように明確に。
この映画につけられたタイトルの意味と、モーテルで酷い殺人事件がスピーディーに連続する訳を同時に知ったとき、いつも泣きそうになる。
こんなにもスリルと切なさはどちらに傾くでもなく同居してしまうのだなと何度みても思う。

何故だか定期的にこの映画を思い出す。
シンプルに好きなんだと思う。
勿体振らず潔く1時間半で終わるのも良い。
いつまで経っても色褪せない、スタイリッシュな作品だと思う。

RINA

SCANDAL RINA

1991年8月21日生まれ、奈良県出身。2006年にHARUNA(Vo, G)、MAMI(G, Vo)、TOMOMI(B, Vo)と結成したガールズバンド・SCANDALでドラムとボーカルを担当。2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューを果たし、翌2009年にシングル「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞した。2019年にはSCANDALのプライベートレーベル・herを設立。1月26日にリリースした新アルバム「MIRROR」を引っさげ、ツアー「SCANDAL WORLD TOUR 2022 "MIRROR"」を開催中。

「アイデンティティー」(2003年製作)

嵐によって1軒のモーテルに閉じ込められてしまった11人が、次々に惨殺されていくサイコスリラー。残された人々が自分たちに共通点を見出す中、時を同じくして、ある猟奇殺人鬼の再審理が行われる。そしてその彼にも、モーテルの人々と共通点があり……。
監督は「フォードvsフェラーリ」のジェームズ・マンゴールドが担当。キャストとしてジョン・キューザックレイ・リオッタアマンダ・ピートアルフレッド・モリーナクレア・デュヴァルレベッカ・デモーネイが集まった。

「アイデンティティー」デジタル配信中 / Blu-ray&DVDレンタル中

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