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月刊おもしろ映画宣伝2024年4月号

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2024年4月号[バックナンバー]

宣伝の基本は“禁断の共闘”?今月は「ゴジラxコング」が強かった

宣伝が醸し出す組み合わせの妙

2024年5月10日 11:30 8

映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。

2024年4月、ビニールタッキーが気になったのは「猿の惑星/キングダム」「キラー・ナマケモノ」「マッドマックス:フュリオサ」「ゴジラxコング 新たなる帝国」などに関する宣伝。記事末ではMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)も発表している。

文 / ビニールタッキー

日本で愛される「マッドマックス」

「月刊おもしろ映画宣伝」4月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!

キスマイ(Kis-My-Ft2)の宮田俊哉さんがハリウッド映画の吹替初挑戦! これは予想外でした! 何せ原語版の声は「怪盗グルー」シリーズのグルー役でもおなじみのスティーヴ・カレルですからね。つまり笑福亭鶴瓶さんと宮田俊哉さんが同じ俳優の吹替をするという事態になっていて個人的に震えています。しかしアニメ吹替の経験がある宮田さんですから安心できますね。楽しみです。

人類の叡智VS超巨大竜巻の戦いを描く映画「ツイスターズ」。この夏最注目の映画ですが、その日本版ポスタービジュアルが素晴らしい! 竜巻という名前の通り竜のイメージが重なる巨大竜巻に「巨竜に、挑め」というキャッチコピーと「襲来」という“龍”の字を持つ漢字を当てはめる大胆なデザイン! まさに技アリという感じです。よく洗練された海外版のポスターが評判になりますが日本版のポスターも負けていないぞ!と誇らしい気持ちになりました。素晴らしい仕事だと思います。

竹内が演じるのは、猿を統括してキングダムを築こうとする冷酷な独裁者プロキシマス・シーザー。役柄について竹内は「知性があり、よく話すキャラクターなので、猿らしく話すというよりは、彼の持つ知的なところが伝わりやすいように、そして演じているケヴィン・デュランドに寄せるように演じました」とこだわりを明かす。

また竹内は「彼のように支配をしたいという思いはないけれど、自分自身も長年会社を経営していて、みんなを引っ張っていくことが多いので、そういうところは似ているかな。自分の色を出しながら生きてきたから“俺は俺でありたい”“自分らしく”というのは人より強いと思います」と自身との共通点にも言及。そして「色んな映画に敵役がいて、主役が立つわけで、敵役がいないとエンタテインメントにならない。準主役のつもりで楽しく演じさせていただきました」と語った。

インパクト抜群なビジュアルに圧倒されてしまいますが、コメントは実に知的かつ情熱的。おちゃらけた雰囲気もなく本気度がうかがえて思わずこちらの背筋が伸びてしまいます。さすが長年迫力のある人物を演じてきた竹内力さん。自分らしさを出しつつも元の俳優さんの演技に寄せたというお話も素晴らしいですね。とても楽しみです。

「マッドマックス」シリーズの大ファンというヒロミは「初めて観たとき、憧れのオートバイや車が出てきてもうたまらなかった」と回想。長田は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が大好きだと言い、「劇場で3回くらい観ましたし、立川の爆音上映にも行きましたよ。なんといってもアクションがすごい! 何人かはイッちゃってるんじゃないかってくらい」と述懐する。

タレントさんのおもしろイベントかと思いきやヒロミさんもチョコプラ長田さんも本当に「マッドマックス」好きということでテンションが上がりました。特に長田さんの「立川の爆音上映に行った」というお話は信頼できるエピソードです。イベント内で初公開されたジョージ・ミラー監督からの特別映像では日本のファンへの感謝の言葉があったり、イベント参加者全員でV8ポーズを決めるなど「マッドマックス」という作品が日本でとても愛されていて、その愛が作り手にもしっかり伝わっている感じがしてうれしくなりました。

ナマケモノがゆっくり襲ってくる動物パニック映画「キラー・ナマケモノ」のコラボイラストが到着。なんとこれが本当にオシャレで驚いてしまいました。もともと日本版ポスターも水色やピンクを基調としたポップなデザインでしたがそれに合わせたようなさわやかでかわいらしい(そしてちょっとだけ不気味な)コラボイラストとなっています。このイラストを使用したTシャツやキーホルダーもおしゃれでかなり欲しくなりますね。まさか「キラー・ナマケモノ」のグッズにこんなにキュンキュンするとは予想していませんでした。宣伝って面白いですね。

デンマーク発のホラー映画「胸騒ぎ」が続々とコラボ! 怪談系の著名人の方々とのコラボなどがある中でVTuberコラボは今時っぽい感じでいい!と思いました。さらにはホラーゲーム「新幹線 0号」の中に「胸騒ぎ」のポスターがそのまま出てくるというこれまでになかった宣伝手法に驚きました。まさに少人数で短期開発し配信リリースするという即時性のあるインディーズゲームならではの宣伝で新たな可能性を感じるニュースでした。

ゴジラとコングをどのように商品に落とし込むか

そしてここからは「ゴジラxコング 新たなる帝国」のおもしろ宣伝が続きます。4月はゴジラxコングが強かった!

映画「ゴジラvsコング」吹替版 予告編

いやーすごい曲です! ゴジラのテーマを史上初の公式サンプリング、しかもAIさんらしくゴスペル的な咆哮が響き渡るという持ち味を生かした楽曲になっています。同じモンスター・ヴァースで言うと「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」では[Alexandros]、「ゴジラvsコング」ではMAN WITH A MISSIONが日本版主題歌を担当しており「モンスター・ヴァースと言えば日本版主題歌」という考え方がすっかり定着したと感じます。これからも継続してほしいと思います。

「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」×「ゴジラxコング 新たなる帝国」コラボムービー

こちらも映画宣伝ファンにとってすっかりおなじみとなったゴールデンウイークの「名探偵コナン」映画と大型洋画のコラボ。「お互い映画館を盛り上げて行きましょう!」という共闘のニュアンスが感じられて大好きなんですが、今年は「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」と「ゴジラxコング 新たなる帝国」という“禁断の共闘”がテーマの映画2つが宣伝で禁断の共闘(コラボ)をするという事態に! こんな面白い出来事が起きるのもおもしろ映画宣伝ならではですね。コラボムービーも最高なのでぜひ観てみてください。

これは本作を配給する東宝と、江戸時代から約400年の歴史を誇る老舗茶屋「京都利休園」がタッグを組み、“怪獣と和の融合商品”として展開するもの。ゴジラ焙煎(高温焙煎)により芳ばしさや香りが最大限に引き出された高温焙煎ほうじ茶に国産黒豆をブレンドした「ゴジラオリジナル焙煎茶:ゴジラ用焙煎(199℃)ほうじ茶+黒豆粉末」や、和紅茶にバナナフレーバーをブレンドした「コングオリジナルバナナ紅茶:和紅茶+バナナフレーバー」がラインナップされた。

毎回あっと驚くコラボがあるゴジラ映画ですが、今回はお茶とコラボ! 「怪獣と和の融合商品」「ゴジラ焙煎(高温焙煎)」「コングオリジナルバナナ紅茶」などパワーワードの連続で本気で作られたコラボ商品であることが伝わります。

「ゴジラxコング 新たなる帝国」「ゴジラ-1.0」という日米の大ヒットゴジラ映画がオールナイト上映されるという歴史的な事件が起きている一方でコラボパンがどうしても気になってしまうニュースです。

「ゴジラ×コングパン」は、ピンクと黄色の鮮やかな見た目で、2つの味を1つのパンに合わせることで今作を表現。ゴジラとコングがそれぞれ日米を代表する怪獣であるため、日本をイメージしたあんこ、アメリカをイメージしたコーンチーズが包まれている。

先ほどのお茶もそうですがゴジラとコングをどのように商品に落とし込むかという苦労とアイデアが感じられて感慨深い気持ちになります。「アメリカをイメージしたコーンチーズ」あたりに送り手側の努力を感じました。

先月に引き続き「SHOGUN 将軍」が登場! 写真を見ると真田さんご本人が緊張しつつも終始楽しそうだったのが印象的です。映像でも見ましたがグラウンドを去る際に一礼していてSAMURAIの魂を感じました。しかし日本人選手が複数いるアメリカの球場で日本が舞台のドラマの宣伝で真田広之が始球式、という少し前では考えられなかったことが起きていることに改めてうれしくなります。

そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今回はこちらです!

もぐらは映画の公開日である4月26日にちなんだ426番のユニフォームを着用し、ファンキャップをかぶって東京ドームに現れた。そしてピッチャーマウンドに立ち、ゴジラとちびゴジラ、ジャビットファミリーが見守る中で彼が投げた一球は、大きく逸れながらもキャッチャー・佐々木俊輔のミットに収まり、観客からは大きな拍手と歓声が巻き起った。

初の始球式を終えたもぐらは「ゴジラも見守ってくれている中投げることができてうれしかったです」「YouTubeで研究し、練習ではいくつかストライクに入ったのですが、本番は球が引っかかってしまい、思うようにいかなかったです」とコメント。ピッチングの自己採点を尋ねられると「100点満点中426点」と答えた。

やはり今月は「ゴジラxコング」が強かった! そしてこちらも始球式! 日本語吹替にも参加されている鈴木もぐらさんが始球式に挑戦。単なる始球式ではなく「ゴジラxコング」巨人軍というものすごく巨大なPRを背負った状態での始球式となりました。もぐらさんを見守るゴジラとちびゴジラの背中が優しげでなんだか味わい深い気持ちになります。

しかし「ゴジラxコング」のように、映画宣伝というのはこれとこれを組み合わせたら面白い!という“禁断の共闘”アイデアが基本だと改めて感じました。「猿の惑星」と竹内力、ナマケモノホラーとポップなイラスト、ホラー映画とホラーゲーム、アンパンとコーンチーズパン、そしてゴジラ映画とゴジラのファンキャップを被った鈴木もぐらさんの始球式! 今後もこういった宣伝が醸し出す組み合わせの妙を楽しみたいと思いました。

以上、月刊おもしろ映画宣伝2024年4月号でした。次回もお楽しみに!

ビニールタッキー

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。

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