ヤスミン・アフマドの勇気をシャリファ・アマニら称賛 (original) (raw)
ヤスミン・アフマドの勇気と社会的影響をシャリファ・アマニら称賛、90分超えトーク
2019年7月22日 14:00 4
「伝説の監督 ヤスミン・アフマド 没後10周年記念 特集上映」が開催中である東京のシアター・イメージフォーラムで、7月21日、来日ゲストによるスペシャルトークイベントが行われた。
2009年7月、51歳で死去したマレーシアの映画監督ヤスミン・アフマド。没後10周年にあたり、彼女の作品に携わった女優のシャリファ・アマニら4姉妹と、ミュージシャンのピート・テオが来日を果たした。シャリファ4姉妹は全員が同監督の作品に出演しており、中でも「細い目」「グブラ」「ムアラフ 改心」に出演したアマニはヤスミン・アフマド作品の“ミューズ”となっている。
アマニが同監督と出会ったのは自身が17歳のときだという。ヤスミン・アフマドはすでにCMディレクターとして活躍していたが、知人を介して偶然知り合った彼女に対し、アマニは「誰?」とつれない反応だったとか。しかし「細い目」のオーディションに呼ばれ、映画の道へ進むことに。アマニは「大学には行きませんでしたが、“ヤスミン・アフマド映画大学”に進みました(笑)」とジョークを飛ばす。2人の出会いの場に同席していた姉のシャリファ・アリヤは「ヤスミンはあのとき、アマニの素を見たんだと思います。初めて会ったにもかかわらず、私たちは打ち解けていました」と振り返った。
トークでは同監督のフィルモグラフィに沿って、作品ごとにエピソードが語られていった。特に登壇者たちは、政治的な制約がある中、作品を通して問いを投げ続けたヤスミン・アフマドの勇敢さに次々と言及。テオは「当時、マレーシアでは右傾化が進み人種間の関係も悪かった。だから『細い目』のようなマレー系の少女と中国系の少年が恋に落ちる映画なんて存在していませんでした。中華系のコミュニティには常に怒りと恐怖が伴っていましたが、『細い目』はマレー系の映画作家が中華系の人々の気持ちを代弁してくれた作品です。勇気があるなと感じました」と当時の心境を振り返った。
アマニは、物議を醸すストーリーだったにもかかわらず「細い目」がマレーシアのオスカーに相当する賞を獲得したことに触れる。「細い目」の受賞に抗議する業界人もいた中、続いて同監督が発表した「グブラ」は宗教的なタブーの描写があったものの、再び最優秀賞を受賞した。「グブラ」の撮影中、彼女に向けて攻撃的な記事が書き立てられていたようで、アマニは「メイクしてもらっている間、ヤスミンはよく私のひざに頭を乗せて泣いていました。私が“母”のように思っている人が、子供のようにひざの上で『ストーリーを伝えたいだけなのに』と泣くんです」と明かす。しかしその後の「ムクシン」では、彼女の作品史上もっとも高い収益を国内で記録。アマニは「攻撃にさらされてつらかったと思いますが、1作ごとに社会に変化が表れました。もちろん彼女の映画が嫌いなままの人もいました。でも、愛は勝つということですね」と笑顔をのぞかせ、観客から拍手を送られる。
テオがヤスミン・アフマドと自身の関係性について話す場面も。彼女は「タレンタイム~優しい歌」で歌われる楽曲「I Go」にある「言葉は音を失う、墓場に向かう兵士のように」という意味の1節に対して取り憑かれたように興味を持っていたという。テオは「彼女とは5年ぐらい友人でしたが、いつも僕がツアーに出ていたので実際に会ったのは10回ぐらい。いつもテキストメッセージを送り合って、僕たちは言葉でつながっていたんです。彼女が亡くなったあと、なぜ自分がこの歌詞を書いたのか、なぜ彼女がこの部分に強く惹かれていたのかを理解できた気がします」とほほえみながら口にした。最後に「ヤスミンと僕の共通点は日本と縁があるということ。『ありがとう』と言うことは、ヤスミンの気持ちを代弁していることにもなります」と述べ、90分以上にも及んだトークイベントを締めくくった。
「伝説の監督 ヤスミン・アフマド 没後10周年記念 特集上映」は8月23日まで開催。長編全6作に加え、遺作となった短編「チョコレート」を含むオムニバス映画「15マレーシア」がスクリーンにかけられる。
伝説の監督 ヤスミン・アフマド 没後10周年記念 特集上映
開催中~2019年8月23日(金)東京都 シアター・イメージフォーラム
当日料金:一般 税込1800円
<上映作品>
「ラブン」
「細い目」
「グブラ」
「ムクシン」
「ムアラフ 改心」
「タレンタイム~優しい歌」
「15マレーシア」
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ヤスミン・アフマドの映画作品
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リンク
- 「伝説の監督 ヤスミン・アフマド特集」公式サイト
- シアター・イメージフォーラム
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