「台湾、街かどの人形劇」監督が布袋戯の未来語る (original) (raw)

ホウ・シャオシェン監修「台湾、街かどの人形劇」監督が来日、布袋戯の未来語る

2019年11月8日 22:16 6

台湾、街かどの人形劇」の舞台挨拶が本日11月8日に東京・神楽座で行われ、監督のヤン・リージョウが登壇した。

ホウ・シャオシェンが監修した本作は、台湾の人間国宝である布袋戯(ほていぎ)の人形師チェン・シーホァンに10年間密着したドキュメンタリー。伝統芸能を継承するために奔走し、父であり師匠でもある今は亡き布袋戯の大家、リー・ティエンルーとの関係に葛藤するさまが記録されている。

まずヤン・リージョウは「子供の頃の私にとって布袋戯はとても重要な芸術でした」と切り出し、「でも大人になったらいつの間にか消えていて、そのことに私は気付いていなかったんです」と残念そうに打ち明ける。「12年前、友人に布袋戯が好きだと話すと映画の主人公であるチェン・シーホァン師匠を紹介してもらいました。彼の公演を観に行くと観客は5人だけ。舞台最前で観た彼の指使いの繊細さに感動し、映画を撮ろうと決めたんです」と力説した。

当初は布袋戯の技術を記録する映画を撮ろうとしていたというヤン・リージョウ。「でも撮影途中でチェン師匠の1番弟子が修行をしながら、生活のために洗車場で働いていることを知ったんです。ショックを受けました」と述懐し、「彼の両手は布袋戯のためにあるべきです。1番弟子にそうさせてしまっていることは台湾の恥。だから技術を記録するのではなく、映画のテーマを“伝承”にしようと決めたんです」と裏話を披露する。また、布袋戯の未来について問われるとヤン・リージョウは「答えるのは難しいですが、形を変えて存在し続けるとは思います。しかし伝統的な布袋戯が残っていくかどうかについては悲観的です」とコメントした。

イベント中盤にはMCからリー・ティエンルーとチェン・シーホァン親子は台湾100年の歴史の証人ではないかと尋ねられる場面も。「そんな難しい話をするのは2時間かかるな……」とぼやき、会場を和ませたヤン・リージョウは、劇中で布袋戯だけでなく台湾の歴史も描いたと説明。「チェン師匠は台湾語しか話さないのですが、私の台湾語は流暢ではありません。コミュニケーションを取る難しさを感じたときに、歴史の中で台湾語が消えていることに直面しました」と述べ「台湾語の消失とともに、布袋戯も消えていったような気がします」と分析した。

最後にヤン・リージョウは「この映画は布袋戯だけでなく親子関係も描いています。ぜひ映画館で観ていただきたいです」と丁寧に頭を下げ、イベントの幕を引いた。

「台湾、街かどの人形劇」は11月30日より東京・ユーロスペースほか全国で順次公開。

(c)Backstage Studio Co., Ltd.

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