「あなたにふさわしい」、役所広司の応援コメント到着 (original) (raw)
「あなたにふさわしい」を鑑賞した役所広司や山内ケンジ、武正晴ら11名から応援コメントが到着した。
「愛しき反抗」の宝隼也が監督した本作は、1つの別荘をシェアした2組の夫婦が離婚の危機に直面する5日間を描く群像劇。夫に不満を持つ専業主婦の飯塚美希を山本真由美、その夫・由則を橋本一郎が演じ、由則の仕事のパートナーである林多香子には島侑子、多香子の夫・充には中村有が扮した。第19回TAMA NEW WAVEやボストン国際映画祭2019に正式出品され、第11回オイド映画祭東京では主要キャスト賞に輝いている。
役所は本作の感想を「男と女……。これは、何とも理解しようにも訳がわからない」「この映画、泥沼の要素てんこ盛りだが、大団円の軽みがとても心地良い!」と感想を述べた。「クソ野郎と美しき世界」に参加した監督・山内は、劇中の夫婦2組について「その言葉と思考に、初めは勝手にしろ、と言いたくなるが、次第にもっと聴いていたくなる。つまりは、静謐な室内楽のような映画である」と語り、「百円の恋」の監督・武は「彼ら、彼女達の生活に必要なもの、欠如しているものとは。何かが足りないのだ。それが何なのかは映画館のスクリーンで見つけることとしよう」とコメントを寄せた。11名の全コメントは以下に掲載している。
「あなたにふさわしい」は、6月12日より東京・UPLINK吉祥寺ほか全国で順次公開。
※記事初出時、人名に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。
役所広司(俳優)コメント
男と女……。
これは、何とも理解しようにも訳がわからない。
それにしても男はなぜかよく喋り、それに対して、女は口数少なく腹が座っている。この差はなんだろう?
この映画、泥沼の要素てんこ盛りだが、大団円の軽みがとても心地良い!
彦摩呂(タレント)コメント
うわぁこれは凄い映画やで。
登場人物の誰の目線で見るかで、全く感じ方が違うんです。善か悪か、欲か理性か、愛か憎か、白か黒か。
毎日食べなれた食事が、たまに名店のグルメを食べると美味しさが引き立ちます。
毎日グルメじゃ、飽きる。しかし最後は食べ慣れた、いつもの食事がいいんですよね。(笑)
何のこっちゃ。
さぁ、もう一回見よう!! 次は誰目線にしよ。
山内ケンジ(劇作家 / 映画監督)コメント
二組の若い夫婦は夫婦なのにいけない恋愛をしている。まだ青春なのだ。
青春は恋愛だけしていれば良いのだが、彼らには仕事がある。
恋愛と仕事との両立は、昨今特に難しく、夫婦たちは迷う。
その迷いは、都会の喧噪の中なら誤魔化せるが、空気の冷たい軽井沢にいると、直截、言葉になり、
思考になる。
その言葉と思考に、初めは勝手にしろ、と言いたくなるが、次第にもっと聴いていたくなる。
つまりは、静謐な室内楽のような映画である。
武正晴(映画監督)コメント
身勝手な我々人間の生活を垣間見せられた。
彼ら、彼女達の生活に必要なもの、欠如しているものとは。何かが足りないのだ。
それが何なのかは映画館のスクリーンで見つけることとしよう。
その日が早く来ることを心待ちにしている。
森谷雄(プロデューサー / 映画監督)コメント
初めて観たのは「ええじゃないか とよはし映画祭2019」のコンペティション部門の審査中だった。
登場人物のキャラクター、脚本、演出…それら全てが魅力的ですぐに心を掴まれた。
特に山本真由美さんをはじめとする俳優陣の演技には目を見張るものがあった。
非日常の中で人と人との関係性は浮き彫りにされる。
そこから日常にもう一度戻れるかどうかで本当に相応しい相手を見極めることになるのだ。
インディーズ作品としては骨太な印象がこの作品にはある。
洋介犬(マンガ家)コメント
名は枷である。
名は象徴である。
名は呪いである。
名はギフトである。
誰もが名を持っている。名無しという名ですら名である。そのカテゴライズから誰も逃れられない。
そして、それが「自分にふさわしい」か、誰もが悩む。
ふさわしい名を求め、人は時に血を流す。称号や尊称のために。
宝隼也監督の「あなたにふさわしい」はそんな名にまつわる作品である。
「ふさわしい」のために、5人の男女が惑い、求める。その悲喜劇があまりにも滑稽であり美しい。
そして最後に気づく。
「あなたにふさわしい」というタイトル以上にこの映画に「ふさわしい」ものはないと。
春陽漁介(劇団5454 / 劇作家・演出家)コメント
別荘という閉鎖空間での会話から滲み出る心理描写は、普段演劇を作る僕にとってもとても魅力的。
加えて、軽井沢の自然という開放空間で描く人と人の距離感が関係性を立体化させる。
浮つく気持ちと必死に自分を肯定しようとする様は、きっと誰にも身に覚えがある。
カドの立たない恋なんて出来ない。愛の正体なんて掴めない。
そんな僕にふさわしい、大人の青春映画。
山川直人(映画監督)コメント
「あなたにふさわしい」は冒険映画である。
生きていると時々誰もが遭遇する温もりや楽しさ、悲しさそして迷い。
人は皆それらと向かい合い、あるいは逃げ道を探したりする時もある。
「その先、道はないですよ」「はあ」
しかしまた同じ方向へ歩き出し、再び考える。
愛とは何か。悲しみとは何か。ふさわしさとは?
そんな風にしてやがて言葉は空転し、また迷いと残像だけが残る。
難しいけど簡単だったりもする。
「あなたにふさわしい」とはそんな迷いの果ての人間冒険映画だ。
真魚八重子(映画評論家)コメント
世間がひどく不倫を憎むのは、それがいつも過渡期にあって明瞭な名称を拒むからではないだろうか。「あなたはどちらを愛しているのですか?」──これほどくだらない質問はない。感情の明文化をもっとも厭うのが、対立した存在の間を行き交う愛の心理だからだ。
山岸謙太郎(映画監督)コメント
見終わった後、登場人物たちがなぜそうしたのか。自分はどうなのか。
すれ違いも寂しいけど、ぴったりハマり過ぎるのも息苦しい。
「ふさわしい」ってどういうことなのか考える時間をもらえる作品です。
くどうれいん(作家)コメント
切ない恋愛映画だと思ったらだまされた。
これほど壮大で、切実で、ばからしい夫婦喧嘩を見たことがない。
美希さん、それにしてもあんまりじゃありませんか。美希のことをわかりたくないのは、わかったら羨ましくなってしまうからかもしれない。
車から手を振るシーンのために、わたしはこの映画をもう一度観たい。あーあ、なんかもう全部許しちゃうじゃん。許さないけど!
ふさわしさなんて、ぜんぶ後から付いてくる。
(c)Shunya Takara