大田原愚豚舎を特集、渡辺紘文の最新作も上映 (original) (raw)
特集上映「異能・渡辺紘文監督特集 ー大田原愚豚舎の世界Vol.2ー」が10月30日より東京・UPLINK吉祥寺ほかで順次実施される。
“大田原愚豚舎”は今村昌平の長男・天願大介による命名のもと、映画監督・渡辺紘文と映画音楽家・渡辺雄司の兄弟によって2013年に旗揚げされた映像制作団体。故郷・栃木県大田原市を拠点に活動し、ほぼ毎年1本以上のペースで精力的に作品を発表してきた。
本特集では渡辺紘文の監督デビュー作「八月の軽い豚」や、「そして泥船はゆく」「七日」「プールサイドマン」「地球はお祭り騒ぎ」「普通は走り出す」を上映。さらに2019年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で監督賞を受賞した「叫び声」、2020年のウーディネ・ファーイースト映画祭でワールド・プレミア上映された「わたしは元気」もラインナップに含まれる。YouTubeでは本特集の予告映像が公開中だ。
特集実施に向け、ファンを公言する著名人からもコメントが到着。行定勲は「影響も受けているだろうし、憧れさえ抱いている」とつづり、「喜劇 愛妻物語」で渡辺紘文を俳優として起用した足立紳は「渡辺兄弟特集がまた行われるということでこんなにめでたいことはない」と期待をのぞかせた。
また渡辺紘文は「今後も遊ばず、驕らず、怠けず、地道に努力を続け、罵倒されようが、無視されようが、石を投げつけられようが、より過激に、より愚かに、より精力的に、のそのそと映画という狂気の旅を続けてゆこうと思います」と伝えている。
異能・渡辺紘文監督特集 ー大田原愚豚舎の世界Vol.2ー
2020年10月30日(金)~11月19日(木)東京都 UPLINK吉祥寺ほか
<上映作品>
「八月の軽い豚」
「普通は走り出す」
「そして泥船はゆく」
「七日」
「プールサイドマン」
「地球はお祭り騒ぎ」
「叫び声」
「わたしは元気」
行定勲(映画監督)コメント
私は大田原愚豚舎の作り出す映画を楽しみにしているひとりである。影響も受けているだろうし、憧れさえ抱いている。しかし、彼らの真似など出来るわけないから、いつも安心して一観客として向き合える。人間の在り方を見せてくれる、あの“くり返しの美学”に私は虜なのだ。
大九明子(映画監督)コメント
打楽器の音、豚たちの声、風の音、のっけから引き込まれる。働く男は日曜日、休んで映画を観る。なんと正しく健やかな暮らし。だけどどこか不穏。だけど居心地がいい。だけど、だけど。さああなたも、言葉にならない叫び声を浴びよう。
藤田容介(映画監督)コメント
何かに取り憑かれたかのように愚痴と悪口と言い訳と弱音を吐き続ける映画監督が主人公であっても、自分の殻に閉じこもって一切の他人を拒絶する病的なプール監視員が主人公であっても、大田原愚豚舎の映画には、ジメジメとした辛気臭さがない。どんなネガティヴな題材が扱われていても、モノクロームの画面は、いつもドライで、風通しが良い。そこには上質なユーモアがあり、出演者への深い愛がある。それからこれは最新作「わたしは元気」を観て思ったのだが、小4の魅力的な少女の感性とシンクロしてしまうイノセンスを渡辺監督は持っている。その澄んだ魂こそが、日常の中の特に何も起きていない時間を、幸福な時間として輝かせてしまうという錬金術を生むのだろう。大田原愚豚舎は、今、絶好調だ。
矢田部吉彦(東京国際映画祭チーフ・プログラマー)コメント
渡辺監督作品には日常の反復を通じて孤独と現実をえぐるハードコアなアート世界や、こどもや家族を配して詩情と温かみを描く世界があり、「叫び声」は前者、「わたしは元気」は後者の最新作である。各路線作を矢継ぎ早に発表することで渡辺ワールドが年々拡張していく。そのスピードと並走するのは我々に許された快楽だ。世界に向けて放たれる「叫び声」の叫びは耳に残って離れず、「わたしは元気」はキアロスタミでありつつフランス映画の香りも漂う。ミクロコスモス大田原のビッグバンは止まらない。
足立紳(映画監督・脚本家)コメント
渡辺兄弟特集がまた行われるということでこんなにめでたいことはない。いっそのこと秋の風物詩にしたらいいと思う。ところで今回、渡辺兄弟は子供たちが主人公の新作を引っさげている。まさか子供を題材にしてくるとは夢にも思わなかったが、ふと考えると意外に相性は良いかもしれない。渡辺監督と子供。ほとんど=のような生き物の気がしないでもない。そして観た。いつもの渡辺兄弟の匂いに包まれつつ、大人が子供に伴走するのでなく、子供が友達を撮っているかのような、心底から子供という生き物の言動をおもしろがっている渡辺兄弟だからこそ作れた面白い映画だった。
山内ケンジ(城山羊の会、映画監督)コメント
なんと昨年に続いて今年も開催される愚豚舎特集、今年は2本の新作が追加される! 昨年も私は大田原愚豚舎特集宣伝コメントを書かせて頂きました。あの時のアップリンク吉祥寺、特に後半は連日満席でした。その後、イタリア・ウディネ映画祭では世界初の愚豚舎特集が組まれ、絶賛を博した。今やその実力と魅力は留まるところを知らない。もはや、私などよりも、指原さんに観てもらい、驚きのツイートをしてもらうにふさわしい状況だと思います。いやしかし、もしかして、映画館はまだ座席数を減らしての営業なのだろうか? だとしたら、入りきれないお客さんが多すぎるので、今年はまだ、指原さんには観てもらわないでおこう。とにかくこれだけははっきりしている。大田原愚豚舎の映画は(現時点で)ソフト化も配信もされていない。映画館でしか観られません!
渡辺紘文(大田原愚豚舎)コメント
昨年に続き大田原愚豚舎特集vol.2が開催されることになりました。
小さな自主映画制作集団である僕たち大田原愚豚舎にとってこれほど嬉しく光栄なことはありません。
日頃より応援してくださるすべての皆様、上映にご協力くださいますすべての皆様、一緒に映画をつくってくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。
今回の特集上映には「叫び声」と「わたしは元気」という大田原愚豚舎渾身の最新作2本が新たなラインアップとして加わっています。
この貴重な上映機会に、より多くの皆様に我々の作品が届くことを願っています。
ところで昨年の特集上映開催の折、僕は「大田原愚豚舎作品をいっぺんに振り返るなどという狂気的な機会は今後もう二度とない」というようなコメントを書いていたようです。
当時は本気でそう思っていたのですが、特集も2度目の開催ということで少し欲が出てきました。
この大田原愚豚舎特集が今後、vol.3、vol.4、vol.5……と続けていけるよう、今後も遊ばず、驕らず、怠けず、地道に努力を続け、罵倒されようが、無視されようが、石を投げつけられようが、より過激に、より愚かに、より精力的に、のそのそと映画という狂気の旅を続けてゆこうと思います。
日々予測できないことばかりが起こり、時代は厳しくなるばかりですが、大田原愚豚舎作品が少しでも皆様の気晴らしや暇つぶし、楽しみや何かを考えるような機会になることを願っています。
というわけで、大田原愚豚舎特集vol.2の幕開けです。
渡辺雄司(大田原愚豚舎)コメント
新型コロナウイルスが蔓延し、世界中の人たちが生活を変えることを余儀なくされています。
今まで当たり前に過ごしてきた日常が変化せざるを得ない光景を
ぼくたちは毎日目の当たりにしている。
インターネットやスマートフォンが急速に発達し、
TikTokやYouTubeで短い時間の動画を見る層が圧倒的に増える中、
映画のこれまでのやりかたも変化せざるを得ない時代に突入しつつあります。
ちょっと前まで、皆がデジタルで映画をつくることに否定的だったように思う。
デジタルカメラで映画を録るなんて!映画はフィルムで録らなきゃ駄目だとか、
音楽は生録音でなきゃ、整音も、編集も、ちゃんとしたスタッフ編成でやらないと、と。
そういった意見はとても素晴らしいと思うし、ぼくも本来そのように映画は撮るべきだと思うところもある。
しかし、現実にはそうすることはできない。なぜか?
単純な話、お金がかかるから。
パソコンやスマートフォン、インターネットの恩恵は、コストの問題を著しく下げた。
印刷物の製作や、整音、編集、宣伝など、あらゆることが容易になった。
「大田原愚豚舎」はそのような時代の変化の中から出来た映画制作団体だ。
今後はこういった映画の製作スタイルが当たり前になっていくと思う。
誰もがレビューを書くように、誰もが作品を作り、発信できる時代になった。
これからの新しい時代を生きていく方々に、大田原愚豚舎がどういった歩みで映画を作ってきたか、
ぜひ劇場で見てほしいと思います。
(c)2018 FOOLISH PIGGIES FILMS