「リキッドスカイ」4Kデジタル修復版が再上映 (original) (raw)

「奇想天外映画祭」で話題を呼んだ「リキッドスカイ」4Kデジタル修復版が、東京・K's cinemaで10月29日から11月4日までアンコール上映される。

スラバ・ツッカーマンが監督、アン・カーライルが主演を務めた本作。劇中では、ヘロインを求めるエイリアンを乗せた宇宙船が米ニューヨーク・マンハッタンのアパート屋上に降り立つ。そこではモデルのマーガレットがドラッグの密売人でガールフレンドのエイドリアンと暮らしていた。やがて、マーガレットと関係を持つ男たちがエクスタシーに逹した途端に息絶え、姿を消すという奇怪な現象が相次いで発生。性的オーガズムによって脳内に分泌される物質がヘロインと同じ作用をもたらすことがわかり、エイリアンの狙いがその物質にあることが明らかになる。

映画評論家の柳下毅一郎は「『リキッド・スカイ』は1980年代ニューヨーク・インディーズの忘れられた秘宝だ。時代の刻印をもっとも濃密に刻みながら、それゆえにタイムカプセルに封じこまれたカルト映画となった。今、数十年ぶりに封印を解かれ、瞬間冷凍された1982年のニューヨークが甦ったのである」と語っている。

柳下毅一郎(映画評論家)コメント

空にUFO、地にはテクノ。「リキッド・スカイ」は1980年代ニューヨーク・インディーズの忘れられた秘宝だ。時代の刻印をもっとも濃密に刻みながら、それゆえにタイムカプセルに封じこまれたカルト映画となった。今、数十年ぶりに封印を解かれ、瞬間冷凍された1982年のニューヨークが甦ったのである。
宇宙の彼方から快楽物質を求めて地球にやってきた宇宙人。彼らを迎えるのは80sのニューヨーカーだ。UFOは運命的にモデルのマーガレットが住む家の真上にやってくる。マーガレット=アン・カーライルこそ、この時代の美学を体現した不感症の快楽主義者であるからだ。
この映画の顔となったアン・カーライルは「デヴィッド・ボウイよりもアンドロギュノス(両性具有的)だ」と言われる中性的な美に輝く。アン・カーライルはマーガレットだけではなくコカイン中毒の男性ジミーの役をも性別を超えた二役で演じ、自分で自分とセックスする。文字通りの自涜行為というわけだ。男からも女からも欲望されるセクシャルなヒロインだが、グラマラスな蠱惑的美女ではない。むしろ中性的な、ほとんど性を嫌悪しているかのようにも見えるいつも不機嫌な仏頂面である。だが、それこそが80sの理想形ではなかったか。肉欲なきセックス。身体なきダンス。アン・カーライルはそれを体現したのである。

(c) Slava Tsukerman

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