幸四郎&七之助「十六夜清心」に初役で挑む (original) (raw)
「壽 初春大歌舞伎」第三部「花街模様薊色縫 通し狂言 十六夜清心」の取材会が、本日12月22日に東京都内で行われた。
取材会には、出演者の松本幸四郎と中村七之助が出席。本作で、幸四郎は恋に溺れ寺を追われた僧・清心、七之助は清心を思い廓を抜け出した遊女・十六夜を、それぞれ初役で演じる。幸四郎は「音楽的にも視覚的にも美しいお芝居ですが、ドラマとしても成立することを目指しております」、七之助は「(『十六夜清心』には)求女役でも出たことがなく、縁のない作品でしたが、清元も名曲ですし、良いお芝居。最後の大詰めまでかかることは珍しいので、そこも見どころになるかと思いますし、お客様にはたっぷりとお楽しみいただければ」と述べた。
取材会では、幸四郎は片岡仁左衛門、七之助は坂東玉三郎から役を習っていることが明かされた。幸四郎は「(仁左衛門からは)まず『前半は踊りになってはいけない』と。また後半は同じ役でも別人のようになりますから、お芝居としてガラッと変わる部分が演じていて気持ちの良いところ。役全体としてメリハリを付けて演じるように、と教えていただきました」と仁左衛門からの教えに触れる。七之助は「(玉三郎も)まさしく同じことをおっしゃっていました。前半部分は振りにならないよう、『清元をちゃんと聴いて使いなさい』と。役としてやることはきちんとやりつつも、“やっている”ように見せてはいけない。そういった部分は、舞台稽古で実際にやらないとわからないでしょうね、とも言われています」と語る。
さらに幸四郎は「出が大事」と語り、「心中がクライマックスのお芝居はたくさんありますが、『十六夜清心』は心中から始まります。なので、最初にどれだけ(清心と十六夜が)好き合っているかが、それぞれが出てきたときにお客様に伝わらないといけない」とその意味を語る。七之助もそれにうなずき「十六夜は特に、清心が好きだという気持ちしかない。その感情を、前半部分でお客様に最初にしっかりとお見せしないと、あとの部分が嘘になってしまう」と言葉に力を込めた。
会場には、撮り下ろされた「十六夜清心」のスチール写真が展示されていた。薄桃色を背景に、幸四郎扮する清心、七之助扮する十六夜が手を合わせているビジュアルで、記者から撮られる際に気を付けたことを聞かれた幸四郎は「少し太ったので、太って見えないようにすることだけを心がけました。口は閉じていても、歯と歯を合わせないでいると細く見えるのではないかな、とか……(笑)」と話し、会場を笑いで包む。七之助は「スチール撮影自体、久しぶりでうれしかったです。スチールを撮ると、そこから気持ちを持っていけますし、お客様の作品としての期待値も上がっていくと思うので。また舞台で演じる前でしたので、『こういう感じなんだろうな』と想像しながら撮影に挑みました」とほほ笑む。
記者から互いの印象を聞かれると、幸四郎は「(七之助は)素晴らしい俳優さんなので、ご一緒できるのはありがたいです。『忠臣蔵』の5・6段目だったり、『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』だったりと、共演してきた作品の幅が広いですよね」と七之助との共演を振り返る。七之助は「うちの母も(幸四郎の)大ファンでございまして(笑)。初めて相手役とちゃんと言えるお役を演じたのは、(2011年『明治座 五月花形歌舞伎』の)『怪談 牡丹燈籠』かな。幸四郎さんのすさまじい早替りを見て、僕も『これではいけないな』と気が引き締まりました。舞台上で歌舞伎俳優としての姿勢を見せてくださる先輩なので、今回の共演もうれしいですね」と語った。
幸四郎は上演期間中に50歳を迎える。幸四郎は「(50歳の節目は)あえて意識しようと思っています。これまでは年齢的な節目だけではなく襲名のときも、変わらないでいることが大事だと考えていました。ただ、意識するとどういう年になるのか興味があり、50歳はあえて区切ってみます」と考えの変化を語る。七之助は「僕も来年40歳なんです」と明かしつつ「日本では還暦が一番祝われますが、海外では50歳の方が重要で、うちの父(中村勘三郎)も50歳の誕生日を一番盛大に祝いましたね。なので、(幸四郎の誕生日も)ぜひ盛大に祝いたいです(笑)」と笑顔を見せた。公演は1月2日から27日まで東京・歌舞伎座にて。
なおステージナタリーでは、現在歌舞伎座で上演中の「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台『十二月大歌舞伎』」の特集記事を展開中。「助六」に出演する坂東玉三郎が、作品への思いや見どころ、そして歌舞伎の未来について語っている。
歌舞伎座新開場十周年「壽 初春大歌舞伎」
2023年1月2日(月・振休)~27日(金)
東京都 歌舞伎座
第一部
一、「卯春歌舞伎草紙」
出演
名古屋山三:市川猿之助
出雲の阿国:中村七之助
浪花の阿梅:市川門之助
女歌舞伎阿壱:中村壱太郎
同 阿鈴:市川男寅
同 阿千:片岡千之助
同 阿玉:中村玉太郎
同 阿京:市川笑也
同 阿高:市川笑三郎
若衆栄之丞:大谷廣太郎
同 福之丞:中村福之助
同 月之丞:中村虎之介
同 花之丞:中村鷹之資
同 銀之丞:市川染五郎
同 鶴之丞:中村鶴松
坊主小兵衛:市川青虎
村長寿右衛門:市川寿猿
多門庄左衛門:市川猿弥
佐渡嶋右源太:中村勘九郎
佐渡嶋左源太:片岡愛之助
二、「弁天娘女男白浪 浜松屋見世先の場 稲瀬川勢揃いの場」
作:河竹黙阿弥
出演
弁天小僧菊之助:片岡愛之助
南郷力丸:中村勘九郎
忠信利平:市川猿之助
赤星十三郎:中村七之助
浜松屋伜宗之助:中村歌之助
番頭与九郎:片岡松之助
鳶頭清次:中村又五郎
浜松屋幸兵衛:中村東蔵
日本駄右衛門:中村芝翫
第二部
一、「壽恵方曽我」
脚本:松岡亮
出演
曽我五郎時致:松本幸四郎
曽我十郎祐成:市川猿之助
化粧坂少将:中村雀右衛門
小林朝比奈:中村鴈治郎
犬坊丸:市川染五郎
梶原平次景高:大谷廣太郎
鬼王新左衛門:中村歌六
大磯の虎:中村魁春
工藤左衛門祐経:松本白鸚
二、「人間万事金世中 強欲勢左衛門始末」
作:河竹黙阿弥
演出:今井豊茂
辺見勢左衛門:坂東彌十郎
勢左衛門妻おらん:中村扇雀
恵府林之助:中村錦之助
倉田娘おくら:片岡孝太郎
勢左衛門娘おしな:中村虎之介
番頭蒙八:嵐橘三郎
若い者鉄造:澤村宗之助
親類山本当助:大谷桂三
代言人杉田梅生:市川男女蔵
門戸手代藤太郎:中村松江
雅羅田臼右衛門:坂東秀調
毛織五郎右衛門:中村芝翫
寿無田宇津蔵:中村鴈治郎
第三部
「花街模様薊色縫 通し狂言 十六夜清心」
作:河竹黙阿弥
極楽寺所化清心後に鬼薊の清吉:松本幸四郎
扇屋抱え十六夜後におさよ:中村七之助
恋塚求女:中村壱太郎
下男杢助実は寺沢塔十郎:中村亀鶴
佐五兵衛後に道心者西心:松本錦吾
船頭三次:市川男女蔵
白蓮女房お藤:市川高麗蔵
俳諧師白蓮実は大寺正兵衛:中村梅玉
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