「ケイコ 目を澄ませて」キネ旬ベスト・テン4冠に輝く (original) (raw)
2022年 第96回キネマ旬報ベスト・テンの表彰式が、本日2月1日に東京・Bunkamura オーチャードホールで開催された。
「キネマ旬報ベスト・テン」は、1924年度に当時の編集同人の投票によってベストテンを選定したことを発端とする映画賞。今回は、三宅唱の監督作「ケイコ 目を澄ませて」が日本映画1位に輝いた。さらに三宅が読者選出日本映画監督賞、キャストの岸井ゆきのが主演女優賞、三浦友和が助演男優賞を獲得し、同作は4冠を達成。表彰式には三宅、岸井、三浦らが登壇した。
三宅は「投票してくださった読者の方々、映画館で働いてくださっている方々、映画館に足を運んでいただいた皆さん、感謝する人を挙げるときりがないのですが……(笑)。本当に感謝しています」と述べ、岸井はトロフィーを手に「このような歴史ある賞をいただけて、とてもうれしいです。ありがとうございます」と瞳を潤ませる。三浦は「この映画はミニシアター系、低予算映画と言われる部類ではありますが、そういうところから三宅さんのような若い監督が育ってきている。ミニシアター系の作品を大切にしていきたいですし、参加したいと思っています」と言及した。
約3カ月に及ぶ岸井のボクシングトレーニングには、三宅も参加したという。その意図を問われた三宅は「ボクシングの経験をせずに、誰がOK・NGを決めるんだというのがありました。それに楽しかったんです。気付いたら一緒にやっていましたね」と明かす。岸井は「トレーニングで監督とコミュニケーションを取ることができたからこそ、共通言語を作ることができた。拳を突き合わせることが、言葉よりも強いコミュニケーションになったなと感じています」と振り返った。
また「夜明けまでバス停で」で日本映画脚本賞に輝いた梶原阿貴は「私を信じてくださったプロデューサー陣、スタッフや俳優部の皆さんの力がなければ、脚本は絵に描いた餅ならぬ紙に書いた文字でしかありません。感謝します」と喜びをあらわに。同作で日本映画監督賞を受賞した高橋伴明は「老い先短い自分にスポットを当てていただいて、本当に感謝しております。また監督やってもいいのかなという気になりました」と述懐する。
そして外国映画監督賞には、同じ日に出産した2人のシングルマザーの数奇な運命を描いたペドロ・アルモドバル監督作「パラレル・マザーズ」が選ばれた。アルモドバルは手紙で「私の映画作りに関わってくれたすべての人々へ感謝します。スペインの歴史的記憶とともに、未来にまなざしを向けて撮り続けていきたい」とコメント。「コーダ あいのうた」で読者選出外国映画監督賞を受賞したシアン・ヘダーも「『コーダ あいのうた』を愛してくれた日本の皆さんに感謝します」と喜びをつづった。
なお特別賞は、喜劇論からエンタテインメント時評までさまざまな映画に関する書籍やコラムを発表し、映画文化全体の発展に功績を残した小説家・小林信彦へ贈られた。「キネマ旬報ベスト・テン」全順位は2月3日発売のキネマ旬報 2023年2月下旬ベスト・テン発表特別号で発表される。
2022年 第96回キネマ旬報ベスト・テン 受賞結果
日本映画ベスト・テン 1位
「ケイコ 目を澄ませて」
外国映画ベスト・テン 1位
「リコリス・ピザ」
文化映画ベスト・テン 1位
個人賞
主演女優賞
岸井ゆきの「ケイコ 目を澄ませて」「神は見返りを求める」「犬も食わねどチャーリーは笑う」「やがて海へと届く」により
主演男優賞
助演女優賞
広末涼子「あちらにいる鬼」「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」「コンフィデンスマンJP 英雄編」により
助演男優賞
三浦友和「ケイコ 目を澄ませて」「線は、僕を描く」「グッバイ・クルエル・ワールド」により
新人女優賞
新人男優賞
日本映画監督賞
高橋伴明「夜明けまでバス停で」により
外国映画監督賞
ペドロ・アルモドバル「パラレル・マザーズ」により
日本映画脚本賞
梶原阿貴「夜明けまでバス停で」により
特別賞
小林信彦 映画文化全体の発展に大きな功績を残されたことに対して
読者選出日本映画監督賞
三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」により
読者選出外国映画監督賞
シアン・ヘダー「コーダ あいのうた」により
読者賞
川本三郎 連載「映画を見ればわかること」により
※記事初出時、内容に一部誤りがありました。お詫びして訂正します
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