「イノセンツ」を観たヨアキム・トリアー独自の解釈とは (original) (raw)

本日7月28日に公開された北欧発のサイキックスリラー映画「イノセンツ」より、監督を務めたエスキル・フォクトのコメントが到着。親友で「わたしは最悪。」の監督として知られるヨアキム・トリアーの本作に対する解釈を明かした。

ノルウェー郊外の住宅団地を舞台とする本作では、夏休みに友達になった子供たちが隠れた力に目覚めるさまが描かれる。「テルマ」「わたしは最悪。」に共同脚本として参加したフォクトが、あどけない子供たちと超能力を掛け合わせて“無垢なる恐怖”を紡ぎ出す。

「わたしは最悪。」と、フォクトの「イノセンツ」はどちらも2021年に製作された作品。フォクトは「ヨアキムの映画を作るときは、白紙の状態から2人で意見を出し合って、じっくり時間をかけて一緒に脚本を作っていく。今回は僕が先に『イノセンツ』の脚本を書いて、撮影するための資金集めやキャスティングをしていた間に、ヨアキムと『わたしは最悪。』を書いた。彼がその資金集めとキャスティングをしていた間、今度は僕が『イノセンツ』の撮影をしたんだ」と製作過程を明かす。

また「『イノセンツ』のほうは、本来は1年前に公開する予定だったんだけど、コロナの影響で遅らせないといけなくて、結果的に2作を同時期に公開することになった。カンヌ映画祭で2本の作品を上映してもらえたのは素晴らしい経験になったよ」とも語った。

トリアーから「イノセンツ」を観た感想をもらったようで、フォクトは「彼は僕の親友だから、当然『よかった』と言ってくれた(笑)。でも編集に立ち会ってもらうと、すごく口を挟んでくる。いつもそう。みんなヨアキムを編集の立ち合いに呼ぶのを怖がっている。彼は正直で、緻密だから」と述べる。

さらにトリアー独自の解釈があったと言い「彼は『我々が自分と違うものを受け入れない』という作品だと受け止めた。自分の中にも暗部があると自覚していながら、それを目の当たりにしてしまうと、排除したくなる。社会が成り立つためには、抑制しないといけないものがある。受け入れられない感情や行ないがある。もし、それに適合できないなら、殺すしかない。ヨアキムはこの映画に、そんな側面があると感じたみたいだ」と続ける。「登場人物の1人が、社会的によしとされない感情を抱え、それを表に出したことで、最後に殺されてしまう。松明を持った村人に退治されてしまう昔のモンスター映画を思い出したらしい。そこで問わないとけないのが『本当の怪物は誰なのか?』。僕は子供たちを絶対に怪物に仕立てたくないと思って作っていたわけで、彼はそこからさらに突っ込んで『理想的な社会を作るためには、冷酷でなきゃいけない』と受け止めたんだ」と述懐した。

次回作について聞かれると「何をやるかはまだ決めていない」と打ち明けたフォクト。「『イノセンツ』で何が気に入っているかというと、最近失われつつある、ヒッチコック映画のようなサスペンスを感じる部分だ。爆音やカメラを揺らすほどのスペクタクルを観せる代わりに、音楽も止めて、静けさを生かすことで、観ている側も思わず『次に何が起こるのだろう』と、前のめりに見入ってしまう。そういう作品が好きだ。映像で魅せる作品も。これまでもセリフがたくさんある脚本を書いてきたし、セリフが多い映画作品も好きだし、わかりやすさがあっていい。でも、映像だけで魅せていくシーンも大好きなんだ。そういう作品を今後もっと作りたいと思う」と話した。

ただテーマに関しては「老い」という題材に引かれているそうで「子供の映画を作ったから、今度はその真逆に行くんだ。主人公を老人にしてね。身体がだんだん言うことをきかなくなって、頭も昔のように機能しなくなる。誰もがいずれは死ぬんだということを受け入れる、といった楽しいテーマを追求したい」と期待を込めて語った。

(c)Mer Film (c)2021 MER FILM, ZENTROPA SWEDEN, SNOWGLOBE, BUFO, LOGICAL PICTURES

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