東京フィルメックスのラインナップ34本が明らかに (original) (raw)
第24回東京フィルメックスのラインナップ発表記者会見が本日10月4日にオンラインで開催。コンペティション作品を含む計34本の上映が明らかになった。
アジアを中心に、世界各国から新進気鋭の監督たちの作品を集める同映画祭。今年は11月19日から26日にかけて東京・有楽町朝日ホール、ヒューマントラストシネマ有楽町で開催される。就任3年目となるプログラムディレクターの神谷直希は「昨年大きな損失を出してしまい、マイナスからのスタートでした。今年の開催が危ぶまれるような状況でしたので、このように開催に向けた準備ができているのは、当映画祭を支えてくださっている方々のおかげです。厚くお礼を申し上げたいと思います」と挨拶。ビジュアルのデザインはグラフィックデザイナーのIkki Kobayashiが担当した。
コンペティションにはアジアの新進作家が2022年から2023年にかけて手がけた作品から全8本がラインナップ。そのうち5本が長編監督デビュー作にあたる。イラン当局によって監督であるアリ・アフマザデの海外への渡航が禁止される中、2023年のロカルノ国際映画祭で最高賞に輝いた「クリティカル・ゾーン」、第76回カンヌ国際映画祭の批評家週間でグランプリを受賞した「タイガー・ストライプス」、神谷が「上映時間は約3時間だが、その長さを感じさせない」と評した「黄色い繭の殻の中」、本映画祭にとって初となるモンゴル発の映画「冬眠さえできれば」が並んだ。
さらに中国映画からは「雪雲」「川辺の過ち」の2作品が選出されたほか、キム・テヤンの長編デビュー作「ミマン」、橋本愛の主演作「熱のあとに」がスクリーンにかけられる。最優秀作品賞と審査員特別賞を選ぶ国際審査員には、「死霊魂」などで知られる映画監督ワン・ビン、映画プログラマー兼プロデューサーのクオ・ミンジュン、「カム・ヒア」のアノーチャ・スウィチャーゴーンポンが名を連ねた。
映画の最先端を切り拓く著名監督の新作を紹介する特別招待作品は全7本。第76回カンヌ国際映画祭でキャストのメルヴェ・ディズダルが最優秀女優賞を獲得した「About Dry Grasses(英題)」がオープニング作品、ウェイン・ワン監督作「命は安く、トイレットペーパーは高い」のデジタルリマスター版がクロージング作品に選出された。なお今回のデジタル修復版はワン自身による2021年の最終カットに準拠したもので、1996年に香港で撮影された追加映像が組み込まれている。
そのほか、“全編ピンボケ”であることが話題を呼んだホン・サンスによる「水の中で」、濱口竜介の監督作「GIFT」などが上映。「GIFT」は石橋英子が濱口にライブパフォーマンス用の映像の制作を依頼したことから始まった企画で、もともとの石橋の依頼に沿う形で完成した映像だ。同企画の制作過程でいわゆる発声映画として完成に至ったのが「悪は存在しない」にあたる。本映画祭では、石橋によるライブパフォーマンスを伴って「GIFT」の上映が行われることに。神谷は「(『GIFT』は)基本的に石橋さんのライブパフォーマンスを前提とした作品なので、これ以外の機会で上映されることはないと聞いています。貴重な機会ですので、ぜひご覧いただきたいです」と伝える。
日本の新作映画が楽しめるメイド・イン・ジャパンでは、東日本大震災で行方不明になった母の生存を信じる高校生を描く「Last Shadow at First Light(英題)」、第80回ヴェネツィア国際映画祭のクラシック部門でプレミア上映され、最優秀復元映画賞を受賞した相米慎二監督作「お引越し」4Kデジタルリマスター版、広島を舞台にしたオムニバス作品「広島を上演する」、岩崎敢志による初長編監督デビュー作「うってつけの日」がラインナップに並んだ。
なお、本映画祭のプレイベント「Filmmakers' Homecoming」が11月3日から13日まで、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催され、映画人育成事業「タレンツ・トーキョー」に参加経験のある映画作家が制作した12作品が特集上映される。今年の「タレンツ・トーキョー」は「In this world where nothing is as it seems」というテーマのもと11月20日から25日に実施され、一般公開の対象となる公開プレゼンテーションは11月23日に。また、本映画祭の関連企画としてポルトガルの映画作家ジョアン・セーザル・モンテイロの特集上映が、11月17日から18日に東京のアテネ・フランセ文化センターで行われる。
第24回東京フィルメックスのチケットは、11月4日10時に発売。上映スケジュールは後日明かされる。「Filmmakers' Homecoming」はヒューマントラストシネマ渋谷の公式サイトにて、各作品の上映2日前よりチケットが購入可能だ。本映画祭のサポーターズクラブ入会キャンペーンが10月19日まで実施中。また、東京コンテンツインキュベーションセンターとのコラボレーションとして「国際映画プロデューサーの仕事について」と題された関連イベントが開催される。
※岩崎敢志の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
第24回 東京フィルメックス
2023年11月19日(日)~26日(日)東京都 有楽町朝日ホール、ヒューマントラストシネマ有楽町
コンペティション
「クリティカル・ゾーン」
「タイガー・ストライプス」※長編監督デビュー作
「黄色い繭の殻の中」※長編監督デビュー作
「冬眠さえできれば」※長編監督デビュー作
「雪雲」※長編監督デビュー作
「川辺の過ち」
「ミマン」※長編監督デビュー作
「熱のあとに」
特別招待作品
「About Dry Grasses(英題)」※オープニング作品
「命は安く、トイレットペーパーは高い」※クロージング作品
「黒衣人」
「火の娘たち」※「黒衣人」と併映
「短片故事」※「雪雲」と併映
「水の中で」
「GIFT」※石橋英子によるライブパフォーマンスあり
メイド・イン・ジャパン
「Last Shadow at First Light(英題)」
「お引越し」4Kデジタルリマスター版
「広島を上演する」
「うってつけの日」
Filmmakers' Homecoming
「アーノルドは模範生」
「カム・ヒア」
「暗くなるまでには」
「昨夜、あなたが微笑んでいた」
「ホワイト・ビルディング」
「墓場にて唄う」
「アスワン」
「トランジット」
「見えるもの、見えざるもの」
「熱帯雨」
「チャンケ:よそ者」
「レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)」
ジョアン・セーザル・モンテイロ監督特集
「黄色い家の記憶」
「ラスト・ダイビング」
「神の結婚」
Ikki Kobayashi コメント
映画の鑑賞中、わたしたちの表情は物語の進行とともに移ろいます。映画を観終わった後の表情も一人一人違うように、物語をわたしに投影しながら余韻に浸り、明日のことを考える人を描いています。