チャン・イーモウ「満江紅」でカメラ約10台同時使用 (original) (raw)
チャン・イーモウによるマスタークラスが本日10月25日に東京・有楽町micro FOOD & IDEA marketで行われた。
国際交流基金(JF)と第36回東京国際映画祭が共催する「交流ラウンジ」の一環として行われた本イベント。第36回東京国際映画祭で特別功労賞を受賞したチャン・イーモウは、「古井戸」での演技が評価され第2回東京国際映画祭にて最優秀男優賞に輝いた過去を持つ。彼は当時のことを振り返り「『紅いコーリャン』の撮影をしているときに、受賞を聞いたんです。この話を知った俳優たちは『監督が最優秀男優賞なら、自分たちは演じなくていいよね!』と撮影を拒否しました(笑)」と懐かしみ、「人生で間違いなく最後の最優秀男優賞だと思います」と笑う。
映画監督になったあと性格が変わったというチャン・イーモウは「監督になる前は寡黙だったんです。でも映画監督は、各方面と関わりを持ち、言わなくてもいいようなことも言わなくてはならない。自分でもくどいなと思って嫌なんですけど」とぼやき、監督作「単騎、千里を走る。」の撮影に触れ「高倉健さんは寡黙な人で、現場ではほとんど話さない。無駄話をしているのは私だけで自己嫌悪に陥りました」と思い返す。また「あの映画は僕が撮った作品で唯一、立ったまま撮影した映画なんです。高倉さんは立ちっぱなしで全然座らず、芝居がないときもほかの役者の芝居を真剣に見ていたんです。世界中の監督が椅子に座って仕事をしていると思いますが、あの現場では、椅子をすべて撤去するように言いました」と裏話を披露した。
イベント中盤には映画の制作過程に話が及ぶ場面も。チャン・イーモウは「これは僕の習慣なんですが、いろんな関係者とディスカッションするのが好きなんです。脚本に関して、役者や関係者と議論していくことは重要なことだと思っています」と語り、「クランクインしてから、現場で役者と議論すると、彼らの言葉にたくさんインスパイアされます。そのアイデアはいいじゃないかと思ったら1、2週間撮影をストップさせて、修正してしまうこともありました。映画でもっとも大事なのは役者。すべての俳優の提案、考え方を聞いて、いいものがあれば採用する。それが僕のやり方です」と言及した。美術などについてはスタッフとディスカッションするのか?という質問が飛ぶと、チャン・イーモウは「スタッフとは撮影前に色彩、メイク、美術などに関して議論するので、現場ではあまり話はしないんです。事前に準備万端にして撮影に臨みます」と答える。
続けてチャン・イーモウは「例えばスタイリッシュな作品を撮るときはまず美術担当と議論します。メインカラー、トーンを決めて、ロケーションはどうすべきか?を考えます。一方で日常生活をテーマにした作品の場合は美術は重要ではありません。8台ぐらいカメラを用意し、それを操作できるようカメラマンが練習します。自然光を使って、照明は最小限。カメラマンが生活そのものをキャッチしていきます」と述懐。第36回東京国際映画祭でジャパンプレミア上映された監督作「満江紅(マンジャンホン)」の撮影を例に挙げ、「撮影には10台ぐらいのカメラを使いました。登場するのはトップクラスの素晴らしい俳優たちなので、彼らの演技、セリフ、アドリブを漏らさずに撮っておきたいんです。1人の役者に対して、1、2台カメラマンが付いていて、10台同時に撮影することもありました」と振り返り、「僕は大きなモニタを毎日ずっと見ていて、マンションのセキュリティかな?と思ったぐらいです(笑)」と述べ、会場を笑わせる。そして「映画監督をやるためには健康と体力が大事。健康な体は映画作りの資本です。2番目に大切なことは、投資してもらうこと。赤字だと投資してくれる人は現れなくなるので、儲かるような映画を撮ることも映画監督として大事なことです。そして3番目に大事なのは脚本ですね」と伝えた。
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