東海テレビによる記録映画公開、救命救急センターに密着 (original) (raw)
東海テレビドキュメンタリー劇場の第15弾となる映画「その鼓動に耳をあてよ」が、1月27日より東京・ポレポレ東中野、2月3日より大阪・第七藝術劇場ほか全国で順次公開される。YouTubeでは予告編が解禁された。
本作は、年間1万台の救急車を受け入れる名古屋掖済会(えきさいかい)病院のER(救命救急センター)に9カ月間密着したドキュメンタリー。“断らない救急”をモットーにした同病院には、身寄りのないお年寄りから生活困窮者まで、24時間365日さまざまな患者が運び込まれる。医師たちはERの仕事を“究極の社会奉仕”と捉え全力を尽くしているが、外科や内科のように大学病院に支えられた医局制度がない救急科を志望する医師は少ないのが現状だ。そして新型コロナウイルスのパンデミックにより、救急車の出動は連日過去最多を更新。ほかの病院に断られた患者が押し寄せ、みるみるベッドが埋まり、ERはかつてない窮地に立たされることになった。
本作が映画初挑戦となる足立拓朗が監督を務め、プロデュースを「ヤクザと憲法」「さよならテレビ」の阿武野勝彦と土方宏史が担った。なお「その鼓動に耳をあてよ」ではナレーションを排している。
森達也は「これは東海テレビの新境地だ。まるで小宇宙のような救命救急センター内を、カメラが縦横無尽に動く」、重松清は「はだかの紆余曲折、はだかのドキュメンタリー。東海テレビドキュメンタリー劇場第十五作──ここまで来たんだね」とコメント。井上咲楽、梶原阿貴、小川紗良、佐野史郎、足立、土方のコメントは下部に記載した。
※土方宏史の土は点付きが正式表記
映画「その鼓動に耳をあてよ」予告編
森達也(映画監督・作家)コメント
これは東海テレビの新境地だ。まるで小宇宙のような救命救急センター内を、カメラが縦横無尽に動く。
ここまで撮れるの? 透けて見えるコロナ禍の日本社会。ずっしりと重い。
重松清(作家)コメント
誰の鼓動なのだろう。誰でもいい。鼓動を聴き取る静寂をつくるために、ナレーションが退いた。
はだかの紆余曲折、はだかのドキュメンタリー。東海テレビドキュメンタリー劇場第十五作──ここまで来たんだね。
※パンフレット原稿より
井上咲楽(タレント)コメント
「何でも診る」の“何でも”には社会的な問題までもが含まれているのか…と驚愕した。
救命救急センターを通して、コロナ禍を含む近年の社会の縮図を一気に見ることのできる、心に残る作品です。
梶原阿貴(脚本家・俳優)コメント
海外ドラマの名作「ER緊急救命室」のような感じだろうと思って見たら、その期待は大いに裏切られた。
救急で運ばれてくる個性豊かな患者たちを通して、現代日本の抱える社会的問題が浮き彫りになってくる。底の抜けかけた社会の底を、ERの医師たちが懸命に支えている。
小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)コメント
命は等しい。しかし現実は厳しい。満員の病床を背に、分刻みで選択を迫られるER。不景気、高齢化、パンデミック…すべてのしわ寄せが来る場所で、命と向き合う人たちが、どうか報われますように。
佐野史郎(俳優)コメント
東海テレビの連続ドラマに出演の折、同社ドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」を観、心奪われた。
その後の「さよならテレビ」も同様に。「なにかおかしいんじゃないか?」…その眼差しは、そのままこちらに問い返されるかのようだった。
救命救急医療の現場を追ったこの作品もまた、コロナ禍以降、殊に浮き彫りになってきた現代社会の歪みをあらわにして、観るものに、あるべきそれぞれの姿を迫る。
なのに、まるで、昭和のヤクザ映画を観る高揚感にも似て涙がにじみもするのだ。
救急医療現場と報道現場は似ていると制作者たちは言う。
ならばこの映画は、魂の救済となるのかもしれない。
足立拓朗 コメント
重傷患者を鮮やかに救う救急のドクター。ドラマの様なシーンが撮れると思っていざ取材に入ると、鼻の中のドングリを取ったり、酔っ払いの相手をしたり、治療費を払わない患者を説得したり…それでも、どんな患者にもプライドを持って向き合う彼らがいました。しかしその姿の多くは知られていません。新型コロナはこの国の医療の弱点を“丸はだか”にしました。作品を通じて、これからの医療に救急がどうあるべきなのか、考えるキッカケとなれば幸いです。
土方宏史 コメント
夜勤にプレッシャーにクレーム対応。
救急の現場はわたしたちの報道フロアと同じ匂いがする
でも彼らは辞めない。なんでだろう?
「断らない」というムチャなお題を掲げた病院の救命救急センターにカメラを入れてみたら、組織にとって大切なもの、世の中から必要な存在でいるために絶対に手放してはいけないものが見えました。
(c)東海テレビ放送