映画「男はつらいよ」公開55周年プロジェクトが始動 (original) (raw)

映画「男はつらいよ」公開55周年プロジェクト「Go! Go! 寅さん」が始動

2024年2月28日 7:00 25

映画「男はつらいよ」の公開55周年を記念したプロジェクト「Go! Go! 寅さん」が始動した。

渥美清演じる“寅さん”こと車寅次郎が故郷・柴又へ里帰りをするたびに騒動を起こし、高嶺の花のマドンナに恋をしてはフラれるさまを描いた「男はつらいよ」シリーズ。3月17日にはNHK BSで特別番組「渥美清にあいたい 山田洋次と黒柳徹子が語る(仮題)」が放送される。特番では、渥美と兄妹のように仲が良かった黒柳徹子、「男はつらいよ」シリーズをともに作り上げた山田洋次が「私しか知らない渥美清」を語り合う。また、同局では3月4日より第17作「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」、第22作「男はつらいよ 噂の寅次郎」、第9作「男はつらいよ 柴又慕情」、第7作「男はつらいよ 奮闘篇」が放映される。

2024年内には第1作「男はつらいよ」がシリーズ初の4K UHDで発売。AmazonのMerch on Demandでは「辰年の寅さん」ロゴ入りグッズが販売される。商品ラインナップにはTシャツ、長袖Tシャツ、トレーナー、パーカー、ジップパーカー、スマホケースが並んだ。

このたび、山田が「男はつらいよ」55周年に寄せたコメントが到着。彼は「寅さんは困難な時代でこそ光り輝き、人々を救ってくれるスーパーヒーローだとすれば、暗く、重苦しい今の世の中にこそ逢いたい人物ではないだろうか」「遠い他国を旅している寅さんよ、帰って来てくれ。そして魂が自由であることの喜びを、もう一度味わせてくれ」とつづっている。

なお「Go! Go! 寅さん」は今後も数多くの企画を発信するという。

渥美清にあいたい 山田洋次と黒柳徹子が語る(仮題)

NHK BS 2024年3月17日(日)14:49~15:48

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

NHK BS 2024年3月4日(月)13:00~

男はつらいよ 噂の寅次郎

NHK BS 2024年3月5日(火)13:00~

男はつらいよ 柴又慕情

NHK BS 2024年3月17日(日)13:00~

男はつらいよ 奮闘篇

NHK BS 2024年3月24日(日)12:25~

山田洋次 コメント

「寅さん」こと車寅次郎という人物の魅力とはなんだろうか。誕生から半世紀を超えてもなお、人々がいまでも彼のことを忘れないのは、なぜだろうか。
寅さんは人一倍の深い「情」を持っていて、困っている人々をみると放っておけない。親との関係に悩む娘、恋心を抱きながらも行動に移せない者、大金を騙し取られた芸者、不治の病に侵された貴婦人、大切な家族を亡くした人……。寅さんは彼ら彼女らに寄り添い、共に心を痛め、叱咤激励し、時に自らの空回りが思いがけず功を奏するなどして、周囲の人たちの心を癒し、背中を押して次の一歩を踏み出すきっかけを与える。
しかし、寅さんが持っている価値基準は「情」だけであり、統一した基準を持たない。要するに無茶苦茶なのであり、そこが寅さんの魅力なのだが、私たちは誰もが「寅さんのようには生きていけない」ということを知っている。困っているときには頼りになり必要とされるが、問題が解決すると途端に厄介者になる人物だ。寅さんは困難な時代でこそ光り輝き、人々を救ってくれるスーパーヒーローだとすれば、暗く、重苦しい今の世の中にこそ逢いたい人物ではないだろうか。
弱った人間を励ます時に、寅さんは的確にその人を慰める言葉を持っている。
「おい青年!」「労働者諸君!」と呼びかける時、<日本の未来は君たちにかかっている>という期待を込めて励ましている。その言葉の根底には、<自分はだめな人間だ>という想いがある。「お前は俺と違うんだぞ、立派なんだぞ」と、低い位置から応援している。
そんなだめな男の破天荒な言動に、周囲の人々は「馬鹿だねえ」と笑い、呆れながらも、寅さんを愛していく。「笑い」は人の内側で、心が自由になる感動だ。めちゃくちゃな価値観を許している自分にホッとして、そのひと時解放される。
大人だけではない。寅さんに憧れる子供たちに何人も出会ってきた。きっと彼らも大人と同じように、生きる苦しさを味わっているのだろう。
遠い他国を旅している寅さんよ、帰って来てくれ。そして魂が自由であることの喜びを、もう一度味わせてくれ。