鈴木敏夫「君たちはどう生きるか」アカデミー賞受賞に歓喜 (original) (raw)

鈴木敏夫「君たちはどう生きるか」アカデミー賞受賞を受け「オスカー像を3個注文しました!」

2024年3月11日 11:02 91

第96回アカデミー賞で「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を獲得。結果を受けて本日3月11日にスタジオジブリ内にて記者会見が行われ、プロデューサーの鈴木敏夫が出席した。

吉野源三郎の同名小説からタイトルを借りた「君たちはどう生きるか」は、第2次世界大戦下の日本、母を火事で亡くした少年が不気味な青サギに導かれ、生と死が入り交じる異世界に迷い込むファンタジーだ。会見前にはスタジオジブリのスタッフ一同がそろって授賞式をテレビで視聴。受賞結果が発表されると大きな拍手が巻き起こった。日本からの受賞は同じく宮崎駿が監督を務めた「千と千尋の神隠し」以来、21年ぶり。「ハウルの動く城」「風立ちぬ」に続くノミネートで二度目の栄冠に輝いた。

鈴木は「ありがとうございます。オスカー像はお金を払えば何個も作ってくれるんですよ。なのでさっき3個注文しました!」とユーモアたっぷりに挨拶。そして「こういうものは時の運だと思っていますから、心の底からうれしいですね。スタッフに感謝していますし、皆の力で成し遂げられた」と言葉を紡いだ。

アトリエにいるという宮崎とは電話で話したそうで、鈴木は「宮崎は『日本男児として喜ぶ姿を見せてはいけない』と言ってたんですが、それでもどこかうれしそうで」とほほえむ。そして「自分の気持ちを抑えているような様子だったので、普段は(賞を)欲しがらないのに、やっぱり欲しいんだなと思いました(笑)」と笑顔を見せる。そして鈴木は宮崎に「受賞おめでとうございます」と伝えたが「お互い様です」と返されたことを明かし「一緒にやってきて46年経ちますがこういうときについ彼に対して『ありがとうございます』と言っちゃって、機嫌を悪くしてしまうんですよ(笑)。彼にとっては『一緒にやってきたじゃん』という思いがあるんです」と語る。そして改めて宮崎への印象を問われると「“怖い人”という人もいますが、僕にとっては“一緒にいて楽しい人”です」と言葉に力を込めた。

米アカデミー賞への思いについて問われると、鈴木は「以前から注目してました。作品を選ぶ基準が面白いと思ってましたし、日本の映画賞と比べるとスタッフの受賞者も多い。歴史と伝統は改めてすごいなと思いましたね」としみじみ述べる。そして受賞要因についての考察を求められると、「旧約聖書のような物語ですので、もともとアメリカのお客様のほうが受け入れてくれるのではと思っていました。映画が公開している間は言わないようにしようと思っていたんですけど、“宮崎駿の黙示録”を作ったという意識があった。その点が受け入れられやすかったのでは」と言及する。そして「僕らの若い頃、60年代では聖書をもとにした映画がアメリカでたくさん作られました。この作品も色濃く影響された部分があるんです」と打ち明ける。そして「『千と千尋の神隠し』もそうですが、宮崎は80歳を超えても時代性を大切にしているんです。『君たちはどう生きるか』もそれをやってのけた」と述懐した。

アメリカでは今回の受賞をきっかけに上映館数が増えるという。鈴木は「『風立ちぬ』で最後と思っていたが、最新作が作られた。日本では『10年ぶりだし観てみようかな』と、海外では『どうやら面白い作品があるらしい』というふうに作品が伝わったのでは」とヒットの要因を分析した。

鈴木はスタジオジブリの次回作について問われると、「(『君たちはどう生きるか』の)興行がひと段落しないと次に進むのは難しいですね。一旦、自分が抱えているものをすべて空っぽにしないと」と回答。そして「常に最後の作品のつもりで作っているんです。今回は7年間をかけて『自分たちが作りたいものを作ろう』という思いで、いろいろなことがあって製作された。宮崎も『たくさんの人に観てもらえるか』と今まで以上に心配していたんです。お客様が観に来なくなったときが、彼にとっての引き際ではないか」と丁寧に語る。そして2018年に死去した映画監督の高畑勲について振り返る鈴木は「彼は宮崎にとって先輩であり仕事仲間、そして友達です。この作品を作る途中で高畑は亡くなり、それを引きずりながらこの作品を作っていたと思う」と口にした。

鈴木は今回の受賞が日本のアニメ界に与える影響として「もともとはアカデミー賞ってここまで盛り上がってはいなかった。近年ではいろいろな作品を楽しむ風潮があるので『作るほうも楽しいよ』と言いたいですね」と声を弾ませる。そして「お金や時間をたくさんかけて映画を作ると本当に大変。今回もスタッフが皆疲れてしまって(笑)。2年で準備して2年で作るぐらいがちょうどいいですね」とコメントした。

会見中では「君たちはどう生きるか」英語吹替版の日本語字幕付き上映が3月20日から日本全国で公開されることが発表された。英語版の吹替キャストはクリスチャン・ベール、デイヴ・バウティスタ、ジェンマ・チャン、ウィレム・デフォー、福原かれん、マーク・ハミル、ロバート・パティンソン、フローレンス・ピューらが務める。

※宮崎駿の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記

(c)2023 Studio Ghibli

映画「君たちはどう生きるか」(英題「The Boy and the Heron」)英語版予告

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