「関心領域」俳優・音響担当がオンラインでトーク (original) (raw)
「関心領域」は“我々の決断を振り返る架け橋”、クリスティアン・フリーデルらがトーク
2024年6月21日 23:00 6
映画「関心領域」のQ&Aイベントが本日6月21日に東京・新宿ピカデリーで開催。本作で主人公を演じたクリスティアン・フリーデルと、音響担当のジョニー・バーンがオンラインで参加した。
ジョナサン・グレイザーが監督した本作では、アウシュヴィッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む所長ルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘスとその家族の暮らしが描かれる。さっそく観客が「観ていて2つ怖いことがありました。まずは生活音の後ろから聞こえてくる収容所の音、そしてだんだんとその音に慣れていっている自分です。観客が音に慣れることも意図していましたか? 人が慣れてしまわないためにはどうしたらいいのでしょうか」と聞くと、バーンは「実は意図的にデザインしたものではなかったんです。作業しながら我々も“慣れてきている”と気付いたぐらいです。その日の作業を終えて翌朝にデザインを始めると、初めの1時間は収容所の音が騒がしく感じます。でも(1日の中で)だんだん慣れていく。なので(全体の)音の調整が狂わないよう、毎日冒頭から音を聞き直して作業していました。まさに“慣れ”が映画のテーマになっているわけで、慣れないためには?という質問の答えには窮しますが……“無意識に過ごしていると人は慣れてしまう”ということを自覚しているのが大事なのかもしれません」と答えた。
また「アウシュヴィッツ強制収容所に対する思い、考えは?」と質問が飛ぶと、フリーデルは「収容所のすぐ近くのセットで撮影したので、そのときに初めてアウシュヴィッツ収容所を訪れました。いち人間として揺さぶられるものがあり、ここで信じられないような犯罪が繰り広げられたのだとひしと感じました。人間として、役者としてここを訪れることができたのは重要な経験でした」と述懐。MCから重ねて「実際に収容所を訪れたことで音の設計に影響はありましたか?」と振られると、バーンも「あの空間を訪れたことは大事な経験になりました。硬い壁や床から音が反響するので、空間独特の響き方があるんです。それを体感することができました。監督経由で記念館からアーカイブ資料を入手し、あそこでどういうことが行われていたのか、1年間調べていました。どの地点で何が起きたのか、一連の事柄を把握するリサーチは僕の大事な仕事でした」と真摯に言葉を紡ぐ。
観客の「オープニングとエンディングが印象的でした。音圧も高く、人が不快になるような音楽をあえて使っているように感じました。環境音以外を徹底的に排した本編との音の違いをどう意識したんでしょうか?」という問いには、バーンが「あの楽曲はとても特異なものですよね」とうなずき「ミカ・レヴィさんが楽曲を手がけたのですが、ああいう形がふさわしかったのだと思います。起きていることを強調するために、劇中で音楽をことさら使うべきではないという結論に至りました。私・監督・編集者・ミカさんでパズルを解くようにして話し合いながら作っていった映画ですが、最終的には音楽はブックエンド的に使うことにしたんです。冒頭では『これはほかの映画とは違いますよ、日常のことは少し忘れてこの映画と向き合ってください』と言っているつもりなんです。終わりの楽曲も、今までに聴いたことがないすごいものだなと僕は感じました」と説明した。
フリーデルは本作について「監督も『歴史物を撮っているつもりはない』とおっしゃっているようですが、今の我々を描いているものでもあり、心の中で何が繰り広げられているのかを映すものです。私たちは難しい時代を生きていますが、決断はいつも意図的でなければいけない。この作品は今、(世界で)繰り広げられている物語としても観れます。我々の心の中と決断を振り返る、いい架け橋になっていると思います」と語る。そして脚本を読んだときを振り返って「パブで直々に監督から話を聞いて、こんな可能性を秘めた映画になるのかと非常に感心したんです」「ヘスが収容所のあんなに近くに住んでいると知らず驚きましたね。そして、監督がこの作品で何を探求したいのかを発見していきました。脚本の初稿には、観客が目にするのはこういうもの、聞こえてくるのはこういうものといった程度しか書いていませんでした。ただそれがこのストーリーを語るのにふさわしい演出方法だと思いました。撮影セットに複数台のカメラを忍ばせる形で撮影をしたので(役者には)スタッフが目に入らないようになっていたのですが、時には即興したり、状況を掘り下げてゆっくりと演じることができて素晴らしい体験でした」と述べた。
「関心領域」は全国で公開中。
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映画「関心領域」予告編
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