神保慶政の特集「生活の中の映画」が全国で順次開催 (original) (raw)
「僕はもうすぐ十一歳になる。」で知られる神保慶政の特集上映「生活の中の映画」が、6月28日より東京のシモキタ‐エキマエ‐シネマ「K2」ほか全国で順次開催される。
ニューシネマワークショップで映画制作を学び、初長編の「僕はもうすぐ十一歳になる。」で日本映画監督協会の新人監督賞にノミネートされた神保。同作の劇場公開から10年の節目となる今年、これまでに監督してきた全7作品が、「自分を生きる」「旅を生きる」「子どもを生きる」の3プログラムで一挙上映される。
ラインナップには、韓国で暮らす妊娠7カ月のライターが「釜山に住む人々の最初の記憶」をテーマにした記事を書き進める日韓共同制作の「憧れ」、6歳の少女とムスリムの少年の目を通して戦後70年を迎えた2015年の夏を描いた「せんそうはしらない」、そして、大人たちの矛盾する死生観を知った昆虫好きの少年の日常をつづった「僕はもうすぐ十一歳になる。」などが並んだ。
また、福岡で暮らす2人の女性が幸福についての対話を記録しながら会いたい人に会いに行くドキュメンタリー「冒険-会いたい人に会いにゆく(中編版)」、神保とイランのメールダッド・ガファルザデーが互いにストーリーを知らせぬまま共同制作を進め、言葉を無くした詩人と子供を流産で失った女性を描いた「0ライン-赤道の上で」が劇場初公開となる。
映画が持つ「特別さ」を日常生活に還元しようとする試みから企画されたという今回の特集上映。その試みの一環として、コラボレーション予定の企業や上映館であるK2の周辺コミュニティを紹介する映像も公式サイトで公開されている。
神保が「生活の中の映画」の背景にある考えを「人生に、町に、『上映なき映画』が流れているということを確信しています。つまり、映画というのはいわゆる『映画作品(観る映画)』だけではなく、『見えない映画』というのもあるのだということです」と語ったメッセージの全文は下記の通り。映像作家・文筆家の佐々木美佳、音楽家・映画監督の半野喜弘、建築家の松岡恭子による推薦コメントも掲載している。
「生活の中の映画」は予告編がYouTubeで公開中。夢何生が配給を担当する。
神保慶政監督 特集上映 「生活の中の映画」
プログラム「自分を生きる」“自分らしい豊かな生き方”を見つけるヒントが詰まった作品集
「Workcation」
「冒険―会いたい人に会いにゆく」
「憧れ」
プログラム「旅を生きる」“人生の冒険”を通して、新たな視点で世界を見つめる作品集
「せんそうはしらない」
「0ライン―赤道の上で」
プログラム「子どもを生きる」“素朴な疑問と発見”から、新たなエネルギーに出会う作品集
「えんえんと、えんえんと」
「僕はもうすぐ十一歳になる。」
神保慶政 メッセージ
このプロジェクトが発足したのには様々なきっかけや出会いがありました。ルーツを遡ると、2020年。長女の幼稚園の送り迎えの日々。二人目の子ども(長男)が生まれる前。妻は出産までずっとつわりで体調が優れなかったので、ほぼ毎日送り迎えをしていました。自ずと映画を観る時間はなくなっていきました。コロナ禍中でもありました。
ある日、幼稚園の保護者会や日々の送り迎えでの保護者たちの言動の「背後」「奥底」あるいは「輪郭」に、映画のようなものを感じました。当時は「道端に落ちた映画」「拾える映画」などと言っていました。2021年初頭、ベルリン映画祭が主宰するBerlinaleTalentsの選考チームが僕のこの考え方を評価してくれたことは、大きな自信となりました。
今では、人生に、町に、「上映なき映画」が流れているということを確信しています。つまり、映画というのはいわゆる「映画作品(観る映画)」だけではなく、「見えない映画」というのもあるのだということです。これから僕たちが展開していく上映活動というのは、いわゆる「映画ファン」の方々だけではなく、映画館での映画鑑賞にふだんあまり縁がなかったり、足が遠のいている人を引き寄せることがきるかもしれない。ひょっとしたら、町や人生をより豊かにする繋がりの醸成に寄与したり、何かしらの現象を起こせたりするかもしれない。そんな思いでいます。
佐々木美佳(映像作家、文筆家)コメント
様々な境界線を軽々と超えて人と人を繋げるのに長けている神保さんなら、今回のプロジェクトをきっと成功させてくれるに違いないと思います。
半野喜弘(音楽家、映画監督)コメント
映画体感を解体することで、映画そのものがシステムや慣習から解放され、新たなる未知の輝きを人々と共有できる可能性はあると信じています。
Berlinale Talents コメント
私たちはあなたがドキュメンタリーとフィクションを複雑に組み合わせる技巧にとても関心を持ちましたし、ベルリナーレ・タレンツがあなたのキャリアに大きな影響を与えることをとても誇らしく思います
松岡恭子(建築家)コメント
今回の上映は、流れいく日常という時間の中に、非日常を描くことの多い映画という存在を埋め込んでいく試みだと理解しました。その挑戦に神保さんの映像はとても適しているし、だからこそこういうスタイルでの企画が生まれたのだろうと思います。
神保慶政監督 特集上映 「生活の中の映画」予告編
※動画は現在非公開です。