塚本晋也の監督作「野火」10年目もアンコール上映 (original) (raw)

塚本晋也が監督・脚本・撮影・編集・製作を担った映画「野火」のアンコール上映が、8月に東京・ユーロスペースほか全国で行われる。

終戦直後の闇市を舞台とした自身の監督作「ほかげ」が2023年に公開され、国内外で数々の賞を受賞した塚本。戦後70年にあたる2015年に封切られた「野火」では、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島で飢えや孤独、恐怖に苛まれながらさまよい歩く兵士・田村の姿を描いた。塚本が田村に扮し、リリー・フランキー中村達也森優作らも出演。製作当初から塚本が抱いていた「『野火』を毎年終戦記念日に上映されるような映画にしたい」という思いに共感した劇場で毎年アンコール上映が行われ、今年で公開から10年となる。

初年度からの劇場・自主上映を含む総観客数は約9万9500人に上り、10万人突破も目前に迫っている本作。今年も現時点で全国30の劇場で上映が決定しており、ユーロスペースで行われるイベントには塚本とリリーが登壇する。さらに福岡・小倉昭和館では野坂昭如の著作「戦争童話集」の絵本を手がけたイラストレーター・黒田征太郎と塚本のクロストークが行われる予定だ。上映スケジュールやイベントの詳細などは各劇場、「野火」の公式サイトおよびSNSで随時発表される。

塚本は「10年も『野火』を上映してくださるなんて、思えば驚くべきことです。この映画を大切に思ってくださった劇場さん、そして観に来てくださったお客さまに心より感謝します」と伝え、「10年経過しましたが、世の中への不安は相変わらず募るばかりです。果たして『戦前』とまで言われ始めた今の状況は、後戻りできるところにいるのでしょうか。そんな中でも、祈りの気持ちは確実に多くのお客さまの心の中に住むことができたと思っております。どうか『野火』に込めたこの祈りが、忘れ去られることのないようにと強く願うばかりです」とつづった。

※塚本晋也の塚は旧字体が正式表記

「野火」 Fires on the Plain 予告編

塚本晋也 コメント

戦後70年から上映を開始した「野火」。毎年30館以上の映画館さんが夏の終戦記念日を中心に上映をし続けてくださっています。1年1年の積み重ねでしたが、こうして振り返ると早10年。10年も「野火」を上映してくださるなんて、思えば驚くべきことです。この映画を大切に思ってくださった劇場さん、そして観に来てくださったお客さまに心より感謝します。
さて、10年経過しましたが、世の中への不安は相変わらず募るばかりです。果たして「戦前」とまで言われ始めた今の状況は、後戻りできるところにいるのでしょうか。そんな中でも、祈りの気持ちは確実に多くのお客さまの心の中に住むことができたと思っております。どうか「野火」に込めたこの祈りが、忘れ去られることのないようにと強く願うばかりです。10年もの間、本当にありがとうございます。

(c)SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER